ヨルダネス
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ヨルダネス(Iordanes[1]、Jordanes、別表記に Jordanis、まれに Jornandes[2]) は、6世紀の東ローマ帝国の官僚であった、ゴート族の血統を引く人物で[3]、後年には歴史家となった。
ローマの歴史を記した『ロマーナ (Romana)』と通称される『De summa temporum vel origine actibusque gentis Romanorum』も著したが[1]、最もよく知られるのは、551年ころに執筆された『ゲチカ (Getica)』と通称される『De origine actibusque Getarum』である[1][4]。ゴート族の初期の歴史を扱った古代の書物で、内容が現存するものは、セビリアのイシドールスによる『ゴート・ヴァンダル・スエウィ王国史 (Historia de regibus Gothorum, Vandalorum et Suevorum)』と、『ゲチカ』しかない。
ヨルダネスは、とある友人から、政治家であったカッシオドルスの12巻に及ぶ大著で、当時は存在していたが今日では失われてしまった『ゴート史 (Historia Gothorum)』の要約版として、『ゲチカ』の執筆を頼まれた。その時点までにヨルダネスは、当時の東ローマ帝国の辺境で、現代のルーマニア南東部からブルガリア北東部にあたる小スキタイ(英語版)にあった衛星国のひとつで、高位の書記官 (notarius) を務めた経験があった[5]。
プロコピオスなど、他の著作家たちも、その後、ゴート族の歴史について記述を残した。その際、『ゲチカ』はゴート族の起源について述べた唯一の典拠として、大いに批判的検討が加えられた。ヨルダネスは、キケロの時代のような古典ラテン語ではなく、後期ラテン語で記述をしている。ヨルダネス自身の記した序文によれば、彼はカッシオドルスの書き記した内容を検討するのに3日間しか使えなかったというが、このことから記述にあたってヨルダネスが、彼自身の知見にも依拠する形で執筆したことが察せられる。