意思決定支援法制
ウィキペディア フリーな encyclopedia
意思決定支援法制(いしけっていしえんほうせい)とは、法令に基づく制度であって、未成熟又は疾病等の理由で判断能力が不十分な者の意思決定を支援することを目的とするものをいう。意思決定支援法制の例として、成年後見(日本)、成年後見(大韓民国)、意思決定支援(イギリス)、世話(ドイツ)などがある。なお、上述の定義には親権、監護権の制度も含まれ得るが、これらの制度の説明は別記事に譲り、本記事では、血縁関係を前提としない本人支援法制のみを説明する。
判断能力が不十分な者の意思決定を代行・支援する制度自体は、世界中で時代を問わず様々な社会階層にある[1]。子や女性には責任を伴う意思決定ができないとみなし、又は彼らには責任を伴う意思決定をさせるべきでないとの価値観に基づいて家父長の意思決定を優先する制度、つまり家父長制が、その代表例である。王侯貴族や商人については、摂政や後見人が置かれることがある。近代的私法制度の下でも、禁治産制度(きんちさんせいど。判断能力が不十分な者が財産的に重要な契約をしたときは、これを無効とするか、これを取り消すことができるものとする制度)を設けていた法域は多い。
しかし、これらの制度の主目的は(少なくとも本来の制度趣旨は)、本人の不合理な意思決定による家産の散逸や、本人を頂点とする組織の動揺を回避することにある[2]。「意思決定支援法制」という言葉は、このような「本人の周囲のための制度」ではなく、本人のより良い人生を支援するという「本人自身のための制度」であることを明確にしようという意図で用いられる。各法域で、理想と現実との格差を認識し、その格差を埋める努力が続けられている。