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クライブ・エリック・カッスラー(Clive Eric Cussler, 1931年7月15日 - 2020年2月24日)は、アメリカの冒険小説作家、および海洋冒険家。[1]ダーク・ピット・シリーズをはじめとして、多くのベストセラー作品を送り出し、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに20回以上掲載されている。また自作の冒険小説に登場するのと同名のNUMA(National Underwater and Marine Agency)組織を設立し、60隻以上の沈没船と、そのほか多くの行方不明船を発見した[2]。
イリノイ州オーロラ市で、父エリック・エドワード・カッスラー(Eric Edward Cussler)と母エイミー・アデリン(Amy Adeline)の間に誕生し[3]、カリフォルニア州アルハンブラで育った。自伝によれば父エリックは第一次世界大戦でドイツ帝国陸軍に従軍し、また叔父はこの戦争で14機を撃墜したエースであった。[4]
14歳の時にボーイスカウトでイーグルスカウトを授与される。[5]パサデナ・シティ・カレッジに2年間通い[2]、その後朝鮮戦争の時に空軍に入隊[6]。軍曹まで昇進し、航空輸送部門で飛行機のメカニックとフライト技術者として勤務した。[7]
軍を除隊後は、広告代理店で、コピーライター、続いてクリエイティブアドバイザーとして勤務。ラジオやテレビのコマーシャルのプロデュースも行い、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルなどの受賞歴もある。[8]
1965年に妻がカリフォルニア州の警察の夜間勤務に就き、子供を寝かせた後の時間で執筆活動を始めた[9]。1973年に架空の組織国立海中海洋機関(NUMA)をの特殊任務官ダーク・ピットを主人公とする『海中密輸ルートを探れ』で作家デビュー。このデビュー作と第2作『氷山を狙え』は従来型の海洋スリラーだったが、3作目の『タイタニックを引き揚げろ』では、冒険と最先端技術、それに誇大妄想の悪役、失われた船、美女と宝物が絡んでくるという、ダーク・ピット・シリーズのパターンを生み出し、カッスラーの評価を確立した。その後、ニューヨーク・タイムズのフィクションのベストセラーリストに17作連続で掲載される[6]。
1979年にダーク・ピットが所属するのと同じ名前の非営利組織NUMA(the National Underwater and Marine Agency)を設立し、60以上の難破船を発見し、この探索に関するノンフィクションを執筆した。[10]
NUMAによる主な発見として下記がある。
NUMAの活動についてはWebサイトに掲載されていたが、その後削除されている。
1996年に初めてのノンフィクション『沈んだ船を探り出せ』を刊行し、船舶海洋史の知識の普及の功績によりニューヨーク海事大学より博士号(海洋考古学)を授与された[12][13]。2002年には海洋探検の功績に対して、アメリカ海軍記念財団より海軍遺産賞を受賞。またニューヨークの探検クラブ、ロンドンの王立地理学会、そしてアメリカ海洋学協会のメンバーだった。クラシックカーのアメリカ有数の蒐集家としても知られる[13]。
カッスラーは1955年にバーバラ・ナイトと結婚、3人の子供がいた。バーバラは2003年に死去。娘のテリはコロラド州アーバダにカッスラー所有のクラシックカーを展示するカッスラー博物館を設立した。息子のダーク・カッスラーは、カッスラーの共著者として小説を執筆している。その後カッスラーはジャネット・ホルバートと結婚。
2020年2月24日にアリゾナ州スコッツデールの自宅にて死去したことがTwitterにて発表された。88歳没[14][15]。
作品は40以上の言語、100以上の国で翻訳、刊行されている。[16] カッスラーのファンのひとりにトム・クランシーがいる。
カッスラーの作品は、マイケル・クライトンなどの軍事的な要素を含まないテクノスリラーの一種と言える。そして「複雑に組みたてられた自由奔放なプロットだてと、共鳴し合う痛快な語り口の名人」と評されている[13]。 代表作であるダーク・ピットシリーズを筆頭に、作中でダーク・ピットが加齢するに従い結婚や息子・娘の誕生により子息たちの活躍を描いたダーク・ピットシリーズ外伝のようなシリーズも展開している。また前述のハンリー発見の経緯を記したノンフィクションも書いている。
邦訳第一作の『タイタニックを引き上げろ』は、原題""Raise the TITANIC!""を忠実に訳したものだが、以後の作品では原題の忠実な訳よりも、命令形の邦題をつけることを踏襲している。現在のところ、原題が命令文(に限らず文の形式)を取っているのはRaise the TITANIC!のみである。『タイタニック』のみ角川マガジンズから刊行され、のちに新潮文庫に入った。『黒海に消えた金塊』より扶桑社ミステリー刊。訳者は全作中山善之。『極東細菌』より共著者にダーク・カッスラーを迎えた。
NUMAの特命部門リーダーのカート・オースティンの活躍を描く。ダーク・ピットシリーズと共通の登場人物もおり、ビットもいくつかの作品で登場する。
邦訳は新潮文庫刊。ポール・ケンプレコス共著。『コロンブス』のみ中山訳で残りは全作土屋晃訳。『粒子エネルギー』より扶桑社ミステリー刊。
ダーク・ピットシリーズの『暴虐の奔流を止めろ』に登場した、古い貨物船に偽装したハイテク船オレゴンが、CIAなどの依頼を受けて犯罪やテロの防止のために活躍する。
邦訳はソフトバンク文庫刊、黒原敏行訳。『戦慄のウイルス・テロ』より伏見威蕃訳。『謀略のステルス艇』より扶桑社ミステリー刊。
主に20世紀初期を舞台に、ピンカートン探偵社をモデルにした、ヴァンドーン探偵事務所の調査員アイザック・ベルの活躍を描く。アイザック・ベルは自動車好きで射撃の名手でもある。
『大破壊』よりジャスティン・スコット共著。邦訳は扶桑社ミステリー刊、土屋晃訳。
プロのトレジャーハンターであるファーゴ夫妻の、古代遺跡などを舞台にした活躍を描く。
邦訳はソフトバンク文庫刊、棚橋志行訳。『マヤの古代都市』から扶桑社ミステリー。
邦訳は、1977年の『タイタニックを引き揚げろ』(パシフィカ)が早い。 新潮文庫は
の順で刊行されており、『マンハッタン特急を探せ』以降は原書の順番とほぼ重なってはいる。ただし、正確な書下ろし順で言えば『スターバック号を奪回せよ』がダーク・ピットシリーズとしての第一作であり、『海中密輸ルートを探れ』以前に書かれている。出版は『大統領誘拐の謎を追え』の次の昭和62年で、copyrightの記載も1982年となっている(日本で最初に出版された『タイタニックを引き揚げろ』のcopyrightは1976年)。前書きの部分にクライブ・カッスラーが自ら記しているが、彼としてはエリアが限定的だしプロットもほかに比べ単純であることから、出版自体に否定的だったようである。曰く、「この作品は数時間のエンターティメント、それに、ある種の時代的な産物とお考えいただければ結構である。(中山善之訳)」とあり、また友人・家族、読者やファンに勧められて出版することにしたと経緯が記されている。 『海中密輸ルートを探れ』で出てくる「ハワイの近海で喪った女」であるとか「デルフィ事件」という話の源が『スターバック号を奪回せよ』で分かるわけである。したがって、出版順ではなく、厳密に話の展開順に読むのであれば、
となる。ただし、現在はほとんどが絶版である。
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