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韓国のモノレール ウィキペディアから
月尾海列車(ウォルミうみれっしゃ、ウォルミバダれっしゃ、朝鮮語: 월미바다열차、英語: Wolmi Sea Train)は、大韓民国仁川広域市の月尾海駅と月尾島を結ぶ観光用モノレール路線。
計画段階では月尾銀河レール(ウォルミウナレール)という名称であった。韓国で初めてのモノレール路線として、2009年ごろに設備はほぼ完成し試運転もされたものの、安全上の問題により事業が2度白紙化された後、車両や設備を変更したうえで、仁川交通公社による小型モノレール路線「月尾軌道車両(ウォルミきどうしゃりょう、월미궤도차량)」として2019年10月8日に開通した[1][2][3][4]。
京仁線仁川駅に隣接する月尾海駅を起点に、月尾島を一周する6.1キロメートルのラケット型ループ線として建設された。沿線に4つの駅を設置し、1周35分(平均時速14.4キロメートル)、10分間隔で運行[5](当初計画は最高時速50キロメートル、平均時速25キロメートル、所要時間30分での無人運転であった[6])。計画では、第2期として仁川駅からタプトン交差点を経由し東仁川駅まで、第3期として東仁川駅から自由公園を経て仁川駅までの路線があった[7]。
軌条は、アーバノート (Urbanaut Technology) を採用。列車はY字型のガイドレールに跨座し、ガイドレール付属の給電レールから集電、ゴムタイヤ車輪で路盤を走行する。制御方式はSPARCSと呼ばれる無線通信による列車制御システムで、日本信号が受注している[8]。
列車は2両1編成で運行され、乗車定員は1両あたり立席21人座席14人の合計35人、1編成に70人となっている[9]。 一連の不祥事、不具合により88億ウォン[10]を投じた5編成10両は全て撤去のうえ、金属部分はスクラップに、FRP素材は廃棄物処理法に基づいて処理される[11]。
伽藍新交通システム技術研究所が開発中の試作車両「KUM08A」シリーズ。1両の定員は8名で3両連結での走行も可能。最高時速15キロメートル。安全性を高めるため、3点支持法を採用している。バッテリー式の無人自律走行が可能。なお、レールが左右2本になっているが、同社ではモノレールとしている。
釜山を拠点に小型モノレール製造を手がけ、巨済島の巨済捕虜収容所(英語版)遺跡公園内の「巨済観光モノレール[14]」(6人乗り)などの納入実績をもつ大林モノレール(テリムモノレール、대림모노레일)社による3本レール(底面1ヶ所と両側面2ヶ所の3点支持式)の車両。バッテリー駆動での数十人規模のモノレールは前例がなく、新たに開発に着手すると大林モノレール社自身も表明していた[15]。車載バッテリーによる駆動の2両編成で各車両23人、編成定員は46人の中型車両。5編成が発注され、1周35分(平均時速14.4キロメートル)、10分間隔で運行。[16]
広域電鉄・高速鉄道に適用される鉄道事業法・鉄道輸送法、都市鉄道に適用される都市鉄道法などが適用されず、観光路線扱いとなるため、首都圏電鉄における首都圏統合料金制は適用されず、付加価値税の課税対象となる。
当初発表された利用料金は、片道大人が7,000ウォン・子供6,000ウォン。2回乗車券も用意され、料金は大人8,000ウォン・子供は6,000ウォンとされるが、値下げ要求などもあり確定していなかった[17]。最終的に、料金は大人8,000ウォン、学生・高齢者6,000ウォン、未就学生5,000ウォン、障がい者4,000ウォン。2019年末までは開通プロモーションとして、大人6,000ウォン、学生・高齢者6,000ウォン、未就学生4,000ウォン、障がい者3,000ウォンで利用できる[18]。最大3回まで乗車可能。
駅は次のとおり。これは、2009年5月26日に開かれた"月尾銀河レールの駅の名称選定、最終審議委員会"で2009年2月1日から2月20日まで仁川市民を対象とした公募により募集した駅名の中で審査を経て選定されたが[19]、事業者変遷を経て再度見直された[20][2]。
仕様が繰り返し変更されているため、仕様ごとに分割して記述する。第1~3期という表記は本欄における便宜的なもので路線の延伸構想とは無関係。
本路線は2008年7月に着工、2009仁川世界都市祝典の旅客需要を賄うため、祝典開催前の2009年8月を目標に第1次開業工事が進められたが、安全上の理由から、2010年3月26日に開業は延期された[21] 。
2010年6月開業を目標に点検は続けられたが、4月30日には試験運転をしていた列車が、停車していたレール点検車両に追突する事故が発生[22]、開業は7月に延期された。
また6月末には、仁川交通公社が2015年には86億ウォンに達する累積赤字が発生する分析が公表される[23]と共に、宋永吉仁川広域市長が候補時代に告発した仁川広域市の負債7兆ウォンのほか、2010年7月には追加で2兆ウォンの赤字が示されるなど、仁川広域市の財政構造が非常に深刻なことが白日の下に晒された[24]。
その後、開業時期は9月に再度延期[25]されたが、2011年1月、仁川交通公社が事実上事業放棄を宣言[26]するなど、明確な開業見通しが立たない状態が続いていた。2012年、KRRI(韓国鉄道技術研究院。日本の鉄道総合技術研究所に相当する機関)や、市の調査特別委員会を交えた試運転[27]で安全性の検証を行なっているが、営業運転可能な安全性確立に手間取っている。
2013年7月9日、月尾銀河レールを管理している仁川交通公社社長は記者会見を開き、「KRRIによる安全性検証の結果、全体的な不良・問題点が見つかり運行困難。これ以上韓信工営に月尾銀河レールを任せておくことは出来ない。代わりとなる事業を進めていく。」と発表。手抜き工事の責任を問い、韓信工営アン・ヒョンフェ元社長を告発するとともに、関連業務を担当したとされる仁川市の職員など14人について、同市に処分を求める方針を示した[28]。刑事訴訟では韓信工営と監理業者には無罪判決が下された[29]。
その後、2013年末には月尾銀河レールの設備をレールバイクに転用する案が示されたが、年間予想利用者数などのデータが過大ではないかという指摘もあった[30]。
車両や軌道の撤去費用不払いによる韓信工営と交通公社の民事訴訟は、一審が交通公社の補修費用損失を認めて施工社側に54億ウォンの支払を命じる原告勝訴で、2018年1月の二審も46億ウォンに減額されたものの、施工社側敗訴となっている[31]。その翌月に韓信工営は上告している[32]。
新市長就任後の2015年2月、民間のガラムスペース(Garam Space、가람스페이스)社と仁川交通公社の間で契約締結がなされ、同年8月10日に同社がプロジェクト法人「仁川モノレール株式会社」を設立し、2016年8月の商業運営開始を目指し改善事業を着手した。施工に190億ウォンと毎年8億ウォンの使用料で20年間の運営権を獲得した[33]。
レールバイク案ではなく、車体が8人乗り[34]の小型モノレールを採用し、1周47分、1分間隔での運行を予定しており、同年12月30日にはY字型レールの撤去作業を開始した。[35]
2016年7月12日に軌道上にあるすべての初代車両の撤去を開始。軌道も長年の放置で風雨に曝され、小型化した車両といえど橋脚などの補強が必要とされるため、同年8月の開業予定も翌年に先送りとなった[36][37][38]。
その後、安全基準厳格化によりレール撤去後の施設補強費がかさんだため、ガラムスペース社の資金調達が難航、開業予定の2017年になっても5月までの量産車生産に着手できず8月開業が絶望的なため、2017年3月17日に契約を解除[39]。以降は仁川広域市の直轄事業として進められている。
2社目のガラムスペース社選定段階で不正入札疑惑が浮上し、2018年1月に検察は交通公社と仁川市庁に対して家宅捜索を行ったが[40]、3月に嫌疑不十分として不起訴処分を下している[41]。
2017年10月19日、仁川広域市の財政事業として再始動した事業での事業者公募入札には、中国の深圳市歓楽幹線向けの商用モノレールなどで納入実績があるスイスの遊具メーカーであるインタミン社が単独応札したが、競争入札とはならずに3回目の入札に先延ばしされた[42]。12月15日、大林モノレール社と「月尾軌道車両(월미궤도차량)」運行システムに関する総額約180億ウォンの調達、敷設契約を締結[43]。軌道は小型モノレールのものを撤去し中型車両用のレールを再敷設するものの、橋桁や橋脚は建設済みのものを活用する[44]。
2018年8月13日に仁川広域市は交通公社へ、工事完了日を2019年6月末とする事業実施計画の認可を通知した[45]。
2019年10月8日、オープン[3]。開通後の20日間の1日あたりの乗車人数は1467人に上った。定員は46人しかないので、毎日多くの人が乗車を待ちに行列に並ぶことになった[46]。
本事業を巡っては、限られた納期に対して横行した不正不良施工とずさんな工事、それに伴う事故が多発している。
以下の写真は2013年10月現在。
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