KK園区
ミャンマー・カイン州の詐欺拠点 ウィキペディアから
ミャンマー・カイン州の詐欺拠点 ウィキペディアから
中国語ではKK园区と呼ばれている。英語ではKK ParkないしKK Gardenと翻訳されており、タイ語やビルマ語のメディアではそのままKK Parkと呼称されている。
なお、KK園区をAA園区と同一視する記述がネット上には存在するが、AA園区は同じくミャワディ近郊の詐欺団地である環亜園区第1期を指すため、異なるものである[1]。
2022年8月以降、多数の台湾人および香港人がKK園区に騙されて送り込まれ、犯罪行為に従事させられていることが明らかとなり、中国語圏ではセンセーショナルな報道が過熱した。使えなくなると臓器を取り出して捨てられているという噂も相まって、一度行ったら死ぬまで出られない「豚の煉獄(猪仔炼狱)」として中国語圏の人々を震撼させた。
KK園区には1期から4期まで4つのエリアが存在している[2] 。KK園区に監禁された人の証言によると、人口は8000人程度であるとされる[3]。
KK園区はタイ・ミャンマー国境地域に位置しており、国境をなすモエイ川に隣接している。
この地域にはカレン族が居住しており、ドーナ山脈以東はカレン民族同盟の支配地域であった。しかし、1994年12月、カレン民族同盟 (KNU)内部の対立から民主カレン仏教徒軍が離反し、1995年にKNUは全ての国境拠点を失った。その後、KNUは拠点をタイ側に移し、ドーナ山脈以東は民主カレン仏教徒軍が支配的となった[4]。ドーナ山脈以東の民主カレン仏教徒軍の活動は非合法なものも含めて、国軍に黙認されている[4]。民主カレン仏教徒軍の大部分は国軍傘下の国境警備隊 (BGF)に転換しているが、BGF体制下でも依然としてシュエコッコなどの非合法カジノの運営が黙認されている状態にある [4]。
2019年にカンボジアでオンラインギャンブルが取り締まられた後[5]、オンラインギャンブルの拠点はミャワディに移動した。その後、COVID-19の流行を受けてオンラインギャンブルが衰退した代わりに、ミャワディ一帯でこの技術やインフラを利用して詐欺拠点が作られることとなった[6]。
衛星画像によると、KK園区第1期が建設されたとされたのは2019年末から2022年の半ばにかけてである[7]。
カレン系国境警備隊(BGF)はKK園区に類似した施設であるシュエコッコを運営している[8][9]。KK園区に監禁されていた人の証言によると、KK園区の兵士は国境警備隊の腕章を付けている[10]。
タイの治安当局関係者によると、KK園区はBGF副司令官のティンウィン少佐の勢力圏に位置している[11]。KK園区周辺の地域は2018年7月にタイからの電力を購入する契約がなされたが、この契約は県電力局とティンウィン少佐の所有するShwe Myint Thaung Yinn Industry & Manufacturing Company Limited(SMTY社)との間で行われたものである[12]。
また、メートータレー村の住人は、2018年にBGFと亜太グループ(後述)の代表者がKK園区の用地を低価格で買収しに来たと証言している[13]。
カレン系BGFは軍事政権と関係を断ち、カレン民族軍に改名されたが、引き続きシュエコッコおよびKK園区における詐欺活動の保護を行っている[14][15]。
KK園区はカレン民族同盟 (KNU) 第6旅団の管理地域にあり[16]、 KNUの影響下にあると見られている[17]。
KNUは、中央執行委員会の委員であるロジャー・キンがKK園区に類似した施設である環亜園区の起工式に出席したことから、一部の幹部が違法な事業に関与しているという疑いがかけられている[18][19]。2023年2月にはカレンコミュニティの団体がKNU中央執行委員会の総辞職を要求した[20][21]。同年4月下旬にはロジャー・キンや元第7旅団長ポードーなどKNUの一部の幹部が違法な事業に関与していると第5旅団が訴えた内部文書がリークされた[13]。
これを受けてKNUは、汚職疑惑はKNU自体とは無関係であるという声明を出した。同年5月、KNUは幹部の汚職疑惑についての調査チームを設立すると発表したが[22]、現在に至るまで調査結果は公表されていない。
2024年1月、軍事政権の報道官は「KK園区はKNUと企業が合同で設立したものである」と述べ、KNUの関与を明言した[23]。
KK園区で実行された詐欺により得られた金銭は、タイ・アジア経済交流協会の副会長であった王益承の暗号通貨ウォレットに入金されている[24]。タイ・アジア経済交流協会はバンコクの海外洪門文化交流センターと同じ建物内にあり、同センターは14Kの元幹部であった尹国駒が会長を務める世界洪門歴史文化協会と関係が深いという[10]。
米国平和研究所の報告書によると、尹国駒の東美グループは、KK園区に類似した施設である賽西港園区 (東美園区) に投資している[18][25]。
尹国駒本人は否定しているものの、三立新聞台やタイPBSは尹国駒がKK園区のボスであるとしており[26][11] 、東森新聞は14Kと福建系マフィアがミャワディの詐欺拠点のバックにあるとしている[27]。
ラジオ・フリー・アジアは5人の福建人がKK園区のボスであるとしている[28]。
台湾の黒社会、竹聯幇は「佘董」[注釈 1]「駒董」[注釈 2]を上回る投資をKK園区に対して行っていると報道されている[29]。また、謝玲 (2021)はミャワディの詐欺グループは台湾系であるとしている[30]。
シュエコッコを運営している亜太グループ(中国語: 亚太集团、Yatai Group)はKK園区への関与を否定している[8]。2023年5月、亜太グループはバンコク・ポスト紙にKK園区との関連を否定する声明を掲載した[31]。
しかし、亜太グループのトップである佘倫凱を「KK園区のオーナー」だとする報道も複数存在している[32][33] 。2023年12月に英国政府は佘倫凱を、「KK園区のオーナー」として制裁リストに加えている[34]。
ラオスのゴールデン・トライアングル経済特別区を支配するDok Ngiew Kham Compmay(別名:Kings Romans Group)の経営者、趙偉はKK園区への関連が疑われている。彼の所有しているDok Ngiew Kham CompanyはKK園区に投資していると報道されているが、同社はこの疑いを否定している[35]。
ミャワディ周辺における詐欺の高まりを受けて、タイ政府はミャンマー側への電波を断つとしたが[36]、2023年12月にKK園区周辺部で行われたモバイルスピードテストでは、周辺地域よりも10倍速い130mbpsのアップロード速度を記録した[37]。
また、タイの地元住民は国境を跨いだ違法な移動が取締られないのは、タイ当局が賄賂を受け取っているからであると示唆している[38]。
KK園区は、人身売買、臓器売買、および特殊詐欺の終着点、すなわち入ったら二度と出られない場所であると言われている[39][40][41]。
ブローカーは被害者をここに直接送るわけではなく、まず別の場所に誘い出し、そこから送る。コロナ禍の以前は中国人を騙して連れて来て詐欺行為に従事させていたが、コロナ禍の後は中国のゼロコロナ政策によって中国からの渡航が難しくなったため、台湾人を騙して連れてくることになったとされる。
犯罪集団の蛇頭は、タイ、フィリピン、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどで求職者を騙して誘って人身売買を行っている。そのネットワークはドバイにまでも至り、欲しい臓器を取り出した後、遺体を海に捨てるという[42]。園区内にはスーパーマーケット、病院、レストラン、ホテル、売春場などの施設があり、特に独自の臓器売買産業チェーンを持っている。KK園区のスタッフは、まず被害者に無料で薬物を提供し、強制的に服用させて中毒にさせる。被害者は薬物中毒になった後、高額な薬物代を払えなくなり、詐欺集団に従い続けることになる。詐欺行為で業績を挙げない場合は内臓を取られて捨てられるが、詐欺行為で業績を上げた場合はKK園区で飲食、娯楽、ドラッグが自由にできるため、もし救出が来たとしてもKK園区から出たがらない場合もある[43]。
KK園区では、ポルノ、ギャンブル、ドラッグが蔓延しており、被害者は強制的に特殊詐欺に従事させられている[44]。誘拐を実行するため、観光、就職、台湾ビジネスマンの紹介、ハイテク産業交流、ビジネス実績など、さまざまな名目でおびき寄せが行われている[45][46][47]。
KK園区で行われる詐欺では、暗号通貨Tether が使用されており、園区に監禁されている人の身代金支払いにも使われている[48]。
ミャンマー北部・中緬国境地域においては、2022年頃より中国国内で相次ぐ特殊詐欺被害を問題視した中国公安部がミャンマー軍事政権や少数民族武装組織と協同して詐欺集団の撲滅に乗り出しており[49]、2022年8月には亜太グループトップの佘倫凱がタイ・バンコクで逮捕されている。また詐欺集団や詐欺のための渡航者も摘発されている。これを受け、KK園区がミャワディからヤンゴンに拠点を移したという報道もある[50]。
中国はこれまでミャンマー軍事政権と近い関係にあったが、詐欺集団を事実上野放しにしているミャンマー軍事政権に対して不満を募らせているとされる。三兄弟同盟は1027作戦において国軍とその傘下にある武装勢力が実効支配する地域の犯罪集団の拠点を陥落させたが、この背景には中国の支援があったとされている[51]。
2024年3月4日、園区内に監禁されていた150人が軍事政権およびBGFによってタイ政府に引き渡された[52]。
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