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おと☆娘

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おと☆娘』(おとにゃん[1])は、2010年10月から2013年5月までの間、ミリオン出版が発行していた日本の季刊雑誌。最終号では『おと☆娘Ω』(おとにゃん オメガ)と誌名を変えた。「男の娘」を題材とした漫画作品を掲載していたほか、プロによる女装の実践講座などのコーナーがあった。

概要 おと☆娘, ジャンル ...

長期連載された代表的な作品には、立花瑛『先生あのね。』や、ひな姫『あまはら君+』などがある。ミリオン出版はまた2011年7月から2013年4月まで、本誌と並行し、巻ごとに異なるテーマの「男の娘」作品を収録したアンソロジーコミックオトコの娘コミックアンソロジー』を刊行した。本誌はブルマースクール水着などの男性が実際に身につけることを想定した付録が話題を呼び、刊行期間中、主に同ジャンルの『わぁい!』(一迅社)と発行部数を競った。

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内容

本誌は季刊誌であり[2]、全11号が発売された。全年齢向けのエロティックな「男の娘」漫画を主なコンテンツとしており[3]、そのほかには特集記事[4][5][6]、漫画家などへのインタビュー、「男の娘」が登場するアニメ・ゲーム・ライトノベル作品のレビュー[7][8]、「男の娘」イラストギャラリー[9]などがあった。

女装のノウハウ(「美寿羽楓の初めてのオトコの娘講座」)など三次元にも配慮した構成となっていて[10]、各号はしばしば男性読者が実際に身につけることを想定した女性用衣装を付録につけた(ブルマー[10]、スクール水着[2][10]ミニスカート[9][11]スポーツブラ縞パン[12]など)。広報担当によれば、それらは読者にとって「男の娘」ファンタジーをよりリアルに感じさせるものであり、掲載作品のキャラクターがしばしば着用するものが選ばれている[13]

ドラマCD(シチュエーションCD)を付録にした号が3つあり、内訳は声優のかわしまりの一色ヒカルが声を担当したキャラクターが視点男性(=聴取者)に催眠術をかけて女装させるという内容のものがそれぞれ1つ[4][14][15]有栖川みや美が声を担当した「男の娘」キャラクターが視点男性に耳かきするという内容のものが1つであった[16]

また、新人募集企画として「おと☆娘コミック大賞」があった。1回かぎり開催され、大賞・入賞は該当作なし。佳作としてあいち志保「コクハク」が選出され、本誌10号に掲載されている[17]

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創刊の経緯

要約
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概要 刊行期間前後の状況, 2010年4月24日 ...
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本誌と同様の内容で先発していた『わぁい!』(一迅社)のロゴ。

ミリオン出版を含む大洋グループ実話実録系を得意としており、本誌創刊編集長の頭根宏和も以前は実話漫画誌『漫画実話ナックルズ』(とその姉妹誌)を担当していた。2010年に次の企画を考える段になり、頭根は若い男性たちの「男の娘」ブームに着目した。三次元の女装ブームに関してはそれまでに実話誌の誌面でも数度取り上げていた経緯があった。頭根は今度は二次元のアキバ系ジャンルに手を出してみるのはどうかと考えた。すでに一迅社が同年4月に『わぁい!』で先行していたが、そちらは王道的なつくりであったため、競争の余地があるのではないかと考えたのである。頭根は『わぁい!』創刊号が数日で完売したという情報を掴んでいた[1]

『わぁい!』との差別化をどのようにはかるかということは課題のひとつであった。マニアではなく全年齢層向けの商品となるため、完全なエロ本にするわけにはいかなかったが、自主規制の範囲内で可能な限りのことをするようにした。『わぁい!』は男と男のカップリング(男×男)が多いが、本誌創刊号は男×女の組み合わせが多い。男×男はコアな読者層に支持される一方、ライトな層にとっては抵抗感が強いため、頭根が避けたのである[1]

全年齢向けの『ストップ!! ひばりくん』〔ママ〕にはじまって『バーコードファイター』に衝撃を受けた、トラウマになったって人がかなりいるはずなんですよ。あれはなんだったんだって。そういうのを考えてると、すごくニッチなジャンルだとは実は考えてなくて。逆にもっと間口を拡げることができたらなって思ってるんですよ。本誌編集長・頭根宏和[1]

創刊号掲載の時点では漫画は読み切りの形をとったが、連載に切り替える方針であった。季刊誌で漫画を連載するということには、間が開きすぎて読者が前回の話を忘れてしまうという問題があったが、単行本化することにより本誌の売上を補える面を頭根は重視した。実際問題としては、毎号カラーページで「男の娘」アニメ・ゲームの特集を組もうとすると、季刊ペースでもいずれネタがなくなることが予想されていたくらいであった[1]

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2010年夏のコミックマーケット。

大洋グループのメインの販路はコンビニエンスストアであった。広告といえるようなものは店頭での露出がほぼすべてであり、「弁当を買うついでに」衝動買いするような本がグループの主力であった。オタクのような決め買いする消費者をいかに惹きつけるか、その点も重要な課題となった。頭根は発売に先立つ8月のコミックマーケットにミリオン出版の企業ブースを出し、チラシ4,000枚を配布した。さらに公式サイト「おと☆娘Jp」とTwitter(X)アカウントを立ち上げ、認知度を徐々に上げていった[1]

創刊号には催眠CDを付録につけた。頭根は「女の子の気持ちになりきるっていう意味で雑誌のカラーというかコンセプトを実現する手段として有効なんじゃないかと。二次元の紙だけじゃなくって音声からも、この世界にはまって欲しいなと。」と考えたと語っている[1]。そして、2010年10月25日に創刊号の発売を迎えた[4]。発売に際しニュースサイト「ナタリー」は、「ますます盛り上がりを見せるオトコの娘シーンから目が離せない」と書いた[23]

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アンソロジーの刊行

頭根は、前述のカップリングなどの試行錯誤においては作品の幅を広げたい目的もあった。幅広いレパートリーの中から単行本や特化した増刊などに誘導することを計画していた。『おと☆娘』本誌はそれらの「母艦」的位置づけである[1]。2011年7月から2013年4月にかけ、編集部は「男の娘」のアンソロジーコミックである『オトコの娘コミックアンソロジー』を刊行していった[20]

この領域ではすでにスクウェア・エニックスが『女装少年アンソロジー』(2009年)で先行を果たしており、そこへ一迅社の『女装少年アンソロジーコミック』(2010年)や、エンターブレインの『スーパー男の娘タイム、はじまるよっ★』(2010年)などが続々と参入していた[24]。(女性向けのものとしては光彩書房の『女装の王子様』(2009年)など[24]。)

後発となったミリオン出版のアンソロジーは、どの巻も特定のテーマに沿った作品のみを収録していた点で他社のそれらと異なるものであった[24]。例えばその第1巻では、他者から強制されて女装している(いわゆる強制系)「男の娘」がテーマとなっていた[25]

以降、一迅社とミリオン出版からは「男の娘」漫画のアンソロジー・単行本が大量に刊行されていった[3]

休刊へ

要約
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図1:男の娘/女装とショタ系コミック刊行点数の推移
(調査:吉本たいまつ[3]

創刊号の初動は「ネット書店は好調です。アニメイトはソコソコ。」(頭根)といったところであった[1]。付録の催眠CDについても編集部には好意的な感想が寄せられたという[1]。大衆文化ニュースサイトの「アキバBlog」は創刊号の発売翌日、本誌は『わぁい!』と比較すると若干エロティシズムが強く、異性愛の比率が高いようだというユーザーの感想を紹介した[6]。2013年になって「松本ミトヒ。」の本誌掲載の短編集をレビューしたアメリカのニュースサイト「Bleeding Cool英語版」は、「bulge(ふくらみ)、ソフトな緊縛、女装した男同士のキス」が好きな読者にこれらの作品を勧めたいとし、特に「獅子座のボクと夏の夜空」を肯定的に評価している[5]

概要 画像外部リンク ...

本誌はその付録の珍しさから注目を浴び[26]、同様にブルマーやスクール水着[10]、化粧ポーチなどを付録につけていた『わぁい!』と競争を繰り広げた[27][14]。ライターの川本直は、本誌の付録は二次元の「男の娘」愛好と三次元の女装のクロスオーバーを加速させたと分析している[11](女装を実践する層が漫画作品を読み、その逆もあったということ)。一迅社なども含め、全年齢向けの「男の娘」関係書籍の発行ラッシュは2010年から2013年にかけて続き、2012年にピークを迎えた(オタク文化史研究者・吉本たいまつ調べ。図1。)[3]

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最終号では『おと☆娘Ω』と改題した。

創刊号の時点では207ページのボリューム[28]で1,050円の価格[1]だったが、2012年8月の第8号でいくつかの連載作品が追加され、100ページ超の増量がおこなわれ323ページとなり、デザインの変更と値下げもおこなわれた[21][29]。2013年5月25日、第11号は『おと☆娘Ω』と誌名を変更して発売されたが、同時に休刊が告知された。編集部は今後何らかの形で復活させたいとコメントを出し[26]、読者に対しては公式ウェブサイトやTwitterの更新をフォローしておくよう呼びかけた[30]

本誌休刊の9か月後、2014年2月には『わぁい!』も休刊を表明した[31][32]。サブカルチャー研究者の椿かすみは2誌の休刊について、少ないパイをおそらく『わぁい!』と本誌とで奪い合ってしまった結果[32]、売り上げが低迷したことが大きな原因とみている[33]。編集者の井戸隆明は2誌から「これ!という作品が生まれなかった」ためだと述べている[34]。椿はまた、特に本誌の失敗について以下のように分析している。

『おと☆娘』は『わぁい!』に比べ〔……〕男性的性嗜好に訴求していたように思う。しかし結局のところ、脱がない《男の娘》は〔……〕男性の所有物でなく女性の道具であり、そこに強引に性的描写を貼りつけた歪さが、寿命を縮める結果になってしまったのではないだろうか。《男の娘》ブームの牽引役となった『おとボク[注 1]について、ヒットの主因として、女装男子や同性愛への欲求というより、今野緒雪マリア様がみてる』の男性人気があったという二〇〇五年当時の指摘も、思い出しておく必要があるだろう。

椿 2015, pp. 197–198、傍点・補足の括弧は省略

マイウェイ出版から刊行されていたマニア向けの専門誌『オトコノコ時代』には、インタビュアーが漫画家・魔北葵に「色々なところから出ている男の娘アンソロジーなどを見ていたら、話がパターン化されててつまらないと思うんですよね」と問いかける記事が掲載されている(2011年。魔北は「ああいうのはやっぱりコードがありますから」と返している。)[35]。本誌の休刊にともない『オトコの娘コミックアンソロジー』も終了し、一迅社の側も同じ措置をとったため、全年齢向けの「男の娘」漫画は2014年に急激に減少した(図1)[36]

2015年現在、「男の娘」ブームは全体として収束状態にある[37][34]

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掲載作品・記事

漫画作品

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その他

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既刊一覧

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本誌

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アンソロジー

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関連商品として『お姉さんとオトコの娘コミックアンソロジー』(2012年9月14日、ISBN 978-4813053736)がある。

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脚注

参照資料

外部リンク

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