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コヒーシン

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コヒーシン(こひーしん:cohesin)は、姉妹染色分体の接着(複製された染色体を娘細胞に均等に分離するために必須な過程; sister chromatid cohesion)に中心的な役割を果たすタンパク質複合体である[1][2]

サブユニット構成

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コヒーシン複合体のサブユニット構成

コヒーシン複合体は4つのサブユニットから構成される。そのコアとなる2つのサブユニット(SMC1とSMC3)はSMCタンパク質と総称されるATPアーゼファミリーに属する[3][4]。残りの2つはkleisinサブユニット[5]HEATリピートサブユニットである[6][7]。それぞれの因子は、酵母遺伝学によって接着に関与する遺伝子産物として見いだされ[8][9][10]カエル卵抽出液を用いた生化学的解析によってひとつの複合体のサブユニットであることが証明された[11][12]。その構造と機能は、酵母からヒトまで広く保存されている。減数分裂期では、一部の制御サブユニットが置き換わり、減数分裂期に特有のコヒーシン複合体が構築される[13][14][15][16]

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分子構造

コヒーシン複合体のコアとして働くSMC2量体は、極めて特徴的なV字構造を形成する(SMCタンパク質の項を参照)。ここに制御サブユニットが結合するとリング状の形態をとることが電子顕微鏡によって捉えられている[17]。Scc1のC末端はwinged helix構造をとりSMC1のヘッドドメインと結合する一方[18]、Scc1のN末端はSMC3のコイルドコイル領域に結合する[19]。また、SA2-Scc1サブ複合体の結晶構造も解かれている[20]

制御因子

コヒーシンの動態を制御する複数の因子が同定されている。例えば、染色体への結合を促進するNIPBL/Scc2[10]DNA複製にカップルして姉妹染色分体接着の確立に関わるアセチルトランスフェラーゼESCO/Eco1[10][21]細胞周期を通じてコヒーシンの動態を制御するWAPL-PDS5[22][23][24]などがある。また、セントロメア付近のコヒーシンの解離を抑制するシュゴシン/Mei-S332 (Shugoshin/Mei-S332)[25][26] 、分裂後期にkleisinサブユニットを切断するセパレース (separase)[27]およびその制御因子セキュリン (securin) [28]が知られている。

さらに見る 分類, モチーフ ...

分裂期における機能

体細胞分裂

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体細胞分裂における染色体サイクル

体細胞分裂の過程では、コヒーシンはS期に複製された染色体(姉妹染色分体)が直ちに離れないようつなぎ止める(接着)。M期(分裂期)にはいると、まず前期から前中期にかけての染色体凝縮と同期して、染色体腕部に局在する大部分のコヒーシンが解離する。この過程には、2つのコヒーシン結合タンパク質(WAPL と PDS5)に加え、2つのタンパク質キナーゼポロオーロラB)が関与している。コヒーシンの解離に伴って染色体腕部の接着が部分的に解除されるとともに、コンデンシンとII 型トポイソメラーゼが働くことにより、中期までには2本の姉妹染色分体が識別可能になる(この過程を染色分体の分割 [sister chromatid resolution] と呼ぶ)。この際セントロメア領域に局在するコヒーシンはシュゴシンの働きによって解離を免れ、セントロメアにおける強固な接着は中期まで保存される。後期にはいると、コヒーシンの制御サブユニットのひとつがセパレースと呼ばれるプロテアーゼによって切断され、染色分体の最終的かつ不可逆的な分離 (sister chromatid separation) が促進される[27]。セパレースの活性化には、 APC/Cと呼ばれるユビキチンリガーゼが関与している。

減数分裂

減数分裂期では、減数分裂期特有のサブユニットを含む複数のコヒーシン複合体が働く。減数第一分裂ではまず腕部のコヒーシンが切断され相同染色体の分離(還元分裂)を促し、減数第二分裂ではセントロメア領域に残ったコヒーシンが切断され姉妹染色分体の分離(均等分裂)を引き起こす。

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分裂期以外での機能

最近の研究によれば、コヒーシンは細胞分裂期以外の時期においても、 相同組み換えによるDNA修復や遺伝子発現[29]の調節等、多彩な機能を持つ。

遺伝疾患

最近の研究によれば、コヒーシンやその制御因子をコードする遺伝子の変異がヒトの遺伝疾患を引き起こすことが明らかになりつつある。これまでに、コーネリア・デ・ランゲ症候群Cornelia de Lange syndrome)とロバーツ症候群Roberts syndrome)の2例が報告されている。コーネリア・デ・ランゲ症候群の原因タンパク質として、初めて同定されたのはコヒーシンをクロマチンに結合させるNIPBLである[30][31]。その後、コヒーシン・サブユニットの変異[32]やコヒーシンの再利用を促進する脱アセチル化酵素HDAC8の変異[33]がコーネリア・デ・ランゲ症候群を引き起こすことが報告された。ロバーツ症候群の原因タンパク質としては、コヒーシンのアセチル化酵素ESCO2が同定されている[34]。コヒーシンの制御異常によって引き起こされるこれらの疾患は、コヒーシン病cohesinopathy)と総称される。

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関連項目

引用文献

参考図書

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