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ディフィートデバイス
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ディフィートデバイス(英語: Defeat device)とは、内燃機関を有する乗り物や内燃力発電所や火力発電所において、排出ガス検査の時だけ有害な排出物質を減らす装置を指す。日本では2013年(平成25年)より、車両総重量3.5トン以上のディーゼル自動車の搭載に対して違法となり[1] [2] [3]、2017年(平成29年)9月1日より、アメリカ合衆国および欧州連合と同様に、条件無しで全て違法となった[4] [5] [6] [7] [8]。
製品にあらかじめ搭載される装置以外に、有害な排出物質を増やす後付け装置もまた、ディフィートデバイスと呼ばれる。また、対象は必ずしもハードウェアによるものとは限らず、ソフトウェアによって同種の制御を行うものも含まれる[9]。
概要
多くの場合、内燃機関から排出される有害物質の量は、燃費、出力、排出抑制装置(後処理装置)の寿命などとのトレードオフの関係にある。特にディーゼル自動車においては、酸素過多の状態(リーンバーン)で動作する特質上、未対策だと光化学スモッグなど健康被害につながる窒素酸化物(NOx)の排出が多くなるという本質的な問題がある。
この問題を解決するため、様々な浄化装置(EGR、DPF、NOx吸蔵還元触媒など)が車両に備えられる。しかし、浄化装置には燃費の悪化や寿命の短縮などの背反が生じる。したがって、排出ガス試験の時だけ浄化装置をフル稼働させることで、通常使用時には有害物質排出量以外の特性を向上させることができる。
多くの国家では、有害物質規制のため車種ごとに試験が課されている。長年にわたり複数車種を同一条件で公正に試験する必要上、自動車の場合、室内でシャシダイナモに載せて一定走行条件で試験することが一般的である。また、自動車に搭載して実走行時の排出ガスを測定できるポータブル測定装置の未熟により、実走行時の試験は限定的であった。
ディフィートデバイスは、室温、湿度、気圧、走行パターン、振動加速度などから各種センサーが台上試験状態であることを検知し、自動的に燃料噴射量を抑えつつ浄化装置をフル稼働させることで環境基準を達成する。試験以外の通常走行では、浄化装置を部分的な稼働に留めることで、環境基準には違反しながらも燃費特性が改善されるため、ビジネスにとっては都合が良い。しかし、ディフィートデバイスは、公害を防止するための環境基準を無効化する脱法行為とみなされ、多くの国で利用が禁止されている。
機械式噴射ポンプが採用されているトラックやSUVでは、メーカー出荷段階で調整されている噴射量調整ネジの封印を破る、プランジャー用カムをプロフィールの異なる社外品に替える[注釈 1]など、意図的に噴射量を増大して出力を向上させる違法改造がユーザーレベルで行われていたことがあった。この手法は出力の向上と引き換えに黒煙が増えるため、市中の交通取締に於いても摘発の対象となっていたが、自動車NOx・PM法やディーゼル車規制条例の施行により、日本国内向けのトラック・バス用ディーゼルエンジンが違法な調整や改造に向かないクリーンディーゼルに置き換わったこと、同様に日本国内向けディーゼル乗用車やSUVが相次いで廃止されたこと、景気低迷によるRVブームの終焉と、チューニングやカスタムを好む若者の車離れから改造自体が廃れていった。
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事例
いすゞ自動車
2011年(平成23年)に東京都庁が、日本の主だったディーゼルトラックの排出ガスについて実態調査を行っていたところ、いすゞ自動車の「フォワード」4車種について「ディフィートデバイスを使用している可能性が高い」ことが判明したため、同社にリコールを求めた[9]。同社は「規制逃れの意図はない」と反論したものの、最終的にリコールに同意し、886台について改修を行っている[9]。
この当時、日本においてディフィートデバイスの使用は禁止されていなかったが、この一件が契機となり、同年9月に日本自動車工業会が自主規制として「ディフィートデバイス禁止の設計ガイドライン」を制定したほか[10]、2012年(平成24年)3月には国土交通省・環境省の合同検討会でディフィートデバイスを法的に禁止する方針が出された[10] [注釈 2]。
同年5月に行われた、環境省の自動車排出ガス専門委員会でも、フォーワードの件がディフィートデバイスの事例として取り上げられ[11]、最終的に2013年(平成25年)に「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」が改正されたことで、大型自動車についてディフィートデバイスの使用禁止が明示された[12]。
フォルクスワーゲン
2015年9月、フォルクスワーゲンが販売した全世界1,100万台に及ぶディーゼル車に「ディフィートデバイス」が搭載され、実走行時の有害排出物質は、アメリカ合衆国環境保護庁における環境基準の40倍にも及んでいたことが明らかになった(フォルクスワーゲン#排出ガス規制不正問題)。この不祥事は、史上最大のディフィートデバイス関連事件となった。
日本でもこれを受け、2017年(平成29年)9月20日、国土交通省は「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」を再度改正、2015年(平成27年)11月20日に遡り、乗用車については、燃油の種別や積載量・排気量を問わず、全ての車種でディフィートデバイスの使用は禁止(保安基準不適合)となった[8]。
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脚注
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