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トラスツズマブ デルクステカン
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トラスツズマブ デルクステカン(Trastuzumab deruxtecan;T-DXd)は、ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブとトポイソメラーゼI阻害剤であるデルクステカン(エキサテカンの誘導体)を共有結合させた抗体薬物複合体である[5][6]。乳癌、胃癌、胃食道腺癌の治療薬として認可されている[6][7]。トラスツズマブは上皮成長因子受容体2(HER2/neu)に結合し、それに依存する癌のシグナル伝達を阻害する。さらにこの抗体は細胞内に取り込まれ、結合しているデルクステカンがDNAの複製を阻害することで細胞の増殖を妨げる[6]。
2019年12月に米国で[6]、2020年3月に日本で[8]、2021年1月に欧州連合で[3][4]、2021年10月にオーストラリアで[1]医療用医薬品として承認された。
日本では2020年3月に「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準治療が困難な場合に限る)」を適応として、国内製造販売承認を取得。2020年5月25日に第一三共から「エンハーツ」として発売され、2021年度には、第一三共の売上高1兆円のうち、約800億円を売り上げる主力製品となった[9][10][11]。
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効能・効果
日本
- 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)
- がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌
米国
抗HER2抗体主体の療法を2種類以上受けた切除不能または転移性のHER2陽性乳癌、およびトラスツズマブ主体の療法を以前に受けたHER2陽性の局所進行または転移性の胃または食道胃接合部 (GEJ) 腺癌の成人患者に適応を有している[6][7]。
欧州
2種類以上のHER2標的治療を受けている切除不能または転移性乳癌の治療に使用される[3]。
警告
間質性肺疾患が現れ、死亡に至った症例が報告されている[12]旨並びに間質性肺疾患の検出、治療に関する事項が赤枠警告で示されている。
副作用
重大な副作用とされているものは[12]、
- 間質性肺疾患(8.7%)
- 骨髄抑制(59.2%)
- 好中球数減少(43.0%)、貧血(29.4%)、白血球数減少(26.9%)、血小板数減少(25.6%)、リンパ球数減少(15.2%)、発熱性好中球減少症(2.9%)等
- 注入時反応(2.6%)
である。
主な副作用は、嘔気、倦怠感、嘔吐、脱毛症、便秘、食欲不振、貧血(血中ヘモグロビン減少)、好中球数減少、下痢、白血球減少、咳嗽、血小板数減少などがある[6]。
化学的特徴
抗HER2モノクローナル抗体のCys残基に、平均8個のデルクステカン(カンプトテシン誘導体であるエキサテカンにリンカーが結合した化合物)が結合した抗体薬物複合体である[13]:4。
承認
2019年12月、米国食品医薬品局(FDA)に承認された[6][14]。申請には迅速承認、優先審査、画期的医薬品指定が付与された[6]。
2020年3月25日、日本の厚生労働省は、「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の治療薬として製造販売を承認した[15]。2020年9月25日には「癌化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃癌」治療薬として先駆け審査指定制度に則って承認した[16]。
2020年12月10日、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)は、転移性HER2陽性乳癌の治療を目的とした医薬品「エンハーツ」について、条件付き販売承認の付与を推奨する、肯定的意見を採択した。EMAの加速評価プログラムに基づいて審査され、2021年1月に欧州連合で医療用医薬品として承認された[3][4]。
2021年1月、米国FDAはトラスツズマブ主体の療法を以前に受けたHER2陽性の局所進行または転移性の胃またはGEJ腺癌の成人の治療として加速承認を付与した[7][17]。
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臨床試験
FDAが承認の根拠としたのは、2種類以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の切除不能または転移性乳癌の女性患者184人を登録した臨床試験の結果だった。これらの患者は転移性乳がんに対する2-17種類の治療歴があった。本試験では、T-DXdを3週間毎に投与し、6週間毎に腫瘍画像を撮影した。全奏効率(一定の腫瘍縮小が認められた患者の割合)は60.3%で、奏効期間の中央値は14.8カ月であった[6]。
多施設共同非盲検無作為化試験(DESTINY-Gastric01、NCT03329690)において、トラスツズマブ、フルオロピリミジン、白金製剤を含む少なくとも2種類の治療歴のあるHER2陽性の局所進行または転移性の胃またはGEJ腺癌患者への有効性が評価された。188名の参加者が、T-DXd 6.4 mg/kgを3週間毎に静脈内投与する群と、医師が選択したイリノテカンまたはパクリタキセル単独療法に2対1で無作為に割り付けられた[7]。
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参考資料
関連文献
外部リンク
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