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トロペオグナトゥス
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トロペオグナトゥス (Tropeognathus ) は、南アメリカの下部白亜系産の大型翼竜の属。竜骨状突起を吻部に持つことで知られるオルニトケイルス科(またはアンハングエラ科)に属し、アンハングエラ属に近縁と考えられている。模式種であり唯一の種はTropeognathus mesembrinus であり、第2の種であったTropeognathus robustus は現在ではアンハングエラに属すると考えられている。
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発見と命名
要約
視点
1980年代、ドイツのミュンヘンにあるバイエルン国立古生物学地質学博物館(Bayerische Staatssammlung für Paläontologie und Geologie)は、ブラジルの化石商からセアラ州アラリペ台地より発見されたと思われる翼竜の頭骨化石を購入した。その化石は1987年にペーター・ヴェルンホファーによってTropeognathus mesembrinus の模式標本として記載・命名された。属名はギリシア語のτρόπις/tropis「竜骨」・γνάθος/gnathos「顎」に由来する。種小名 mesembrinos はコイネーで「正午の」「南の」を表す言葉で、その化石の出所が南半球であったことから来ている[1]。
模式標本 BSP 1987 I 46 はサンタナ累層のロムアルド部層から発見され、アプチアン期からアルビアン期に推定されている。標本は頭蓋骨と下顎骨からなる。2番目の標本 SMNS 56994 は部分的な下顎から成り、2002年に André Jacques Veldmeijer によって同定された[2]。2013年にアレクサンダー・ケルナーが第3の標本を報告し、その標本 MN 6594-V は大型で、下腿部と尾を除く各部位の体骨格と頭骨からなっていた[3]。
ヴェルンホファーによって1987年にTropeognathus mesembrinus が名付けられた後[4]、他の研究者はその標本はそれぞれが別の属に属すると考えるようになり、大きな分類上の混乱を引き起こしている[3]。アレクサンダー・ケルナーは1989年にその標本がアンハングエラ属のものでありAnhanguera mesembrinus であるとし、Veldmeijer は1998年に Coloborhynchus mesembrinus と分類し、Michael Fastnacht は2001年に Criorhynchus mesembrinus であると主張した。2001年デイヴィッド・アンウィンはトロペオグナトゥス標本をOrnithocheirus simus と同じものであると同定し、Tropeognathus mesembrinus を新参異名の無効名であるとしたが[5]、2003年にOrnithocheirus mesembrinus として復活させた[6]。2003年Veldmeijer はTropeognathus とOrnithocheirus が同属であるとの説に同意したが、O. simus がオルニトケイルス属の模式種であることは認めず、O. compressirostris(アンウィンがロンコデクテスLonchodectes と名付けた標本)を模式種として指定し、Criorhynchus simus 並びにCriorhynchus mesembrinus という名称を使用した[7]。2000年、ケルナーはヴェルンホファーによる原記載の名称Tropeognathus mesembrinus を再び使い始めた。2013年、Taissa Rodrigues とケルナーはトロペオグナトゥスが有効名であり、T. mesembrinus の1種のみを含むと結論づけた[3]。
1987年にヴェルンホファーは、よりがっしりした下顎である BSP 1987 I 47 をもとにして第2の種Tropeognathus robustus を命名した[1]。今日ではこの標本はもはやTropeognathus mesembrinus と同属であるとは考えられていない[3]。
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記載

Tropeognathus mesembrinus は標本 MN 6594-V の大きさから推測できる限りでは翼開長は8.2 m に達したと思われる[8]。T. mesembrinus はその吻部と下顎の下面に特徴的に突出した"竜骨状の"隆起を備えていた[9]。上顎の隆起は吻端から始まり、頭蓋骨に開いた大きな開口部である鼻前眼窩窓まで背面を広がっている。さらにより小さい隆起が下顎骨の下顎結合のあたり("おとがい"周辺)から下方に突き出している[10]。多くのオルニトケイルス科翼竜は頭骨上面から突出した丸い骨質の隆起をもっているが、これは特にトロペオグナトゥスで良く発達して大型化している[7]。標本 MN 6594-V において、胴椎は12個あり、そのうち第1-第5胴椎は癒合して背心骨になっている。その中では第4胴椎が最も長く、肩甲骨との関節面を持っている。5個の仙椎はすべて癒合して複合仙骨となり腸骨とも癒合している。第3・第4仙椎にはその腹側に竜骨状突起があるが、これは他の翼竜標本では観察されたことがない。腸骨前縁は大きく上方へ曲がっている。肩甲骨と烏口骨は癒合して肩甲烏口骨を構成する。胸骨は比較的大きく、太くて短い胸骨棘を持つ。肩甲烏口骨は胸骨に左右対称に関節する[8]。
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分類
要約
視点

1987年、ヴェルンホファーはトロペオグナトゥスをトロペオグナトゥス科とした[1]。この考えは他の研究者たちには採用されず、Tropeognathus mesembrinus をブラジルの研究者はアンハングエラ科に、ヨーロッパの研究者はオルニトケイルス科に分類する傾向がある。
以下のクラドグラムはこの属のPteranodontia内での系統樹を示しており、Andres and Myers (2013)[11]に従っている。
Pteranodontia |
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大衆文化

Tropeognathus mesembrinus は受賞もしたBBCのテレビ番組『ウォーキング with ダイナソー』のエピソードの一つで主役として扱われている。ただし番組中ではこの種はオルニトケイルス属の一種とされており、Ornithocheirus mesembrinus として登場する[10]。その番組の関連書籍である "Walking with Dinosaurs: A Natural History" では、ブラジルのサンタナ累層から発見されたいくつかの巨大な骨の一部から、O. mesembrinus は翼開長がおよそ12 m 、体重は100 kg に達する最大級の翼竜の一つであることが示される、と主張されていた[13]。しかしながら、当時記載されていてO. mesembrinus であることが確実な標本の中で最大のものは翼開長が6 m であった[4]。番組の制作者がそのような巨大な推定値を採用した元となった標本は2012年に記載され、番組制作側の一員であるDave Martill とデイヴィッド・アンウィンによって研究が進められた。その大型化石への最終的な結論は、翼開長の推定値は8.26 m 最大でも8.70 m と言うものだった[8]。アンウィンは、彼自身はBBCが採用した大きな推定値に妥当性があるとは考えていないと主張し、番組制作者はより「劇的」であるからという理由で提示された推定値の中で最大のものを選ぶのだろう、と述べた[14]。いずれにせよ、2013年に記載された標本番号 MN 6594-V は、ある程度完全に骨格が残っている翼竜の中では今までで最大の個体である[8]。
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出典
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