二塩化硫黄

二塩化硫黄（にえんかいおう）とは、硫黄と塩素からなる。塩化硫黄(II)とも呼ばれる。Cl-S-Cl の構造を持つ分子で、硫黄上の結合角は 109.3 °。外見は赤色の液体である。

二塩化硫黄
IUPAC名 Dichlorosulfane Sulfur dichloride Sulfur(II) chloride
別称 Chloro thiohypochlorite Dichloro sulfide Sulphur chloride
識別情報
CAS登録番号	10545-99-0
3D model (JSmol)	Interactive image
ChemSpider	23682
ECHA InfoCard	100.031.014
EC番号	234-129-0
PubChem CID	25353
RTECS number	WS4500000
UNII	8Q6684WQ9H
国連/北米番号	1828
CompTox Dashboard (EPA)	DTXSID4051538
InChI InChI=1S/Cl2S/c1-3-2 Key: FWMUJAIKEJWSSY-UHFFFAOYSA-N InChI=1/Cl2S/c1-3-2 Key: FWMUJAIKEJWSSY-UHFFFAOYAS
SMILES ClSCl
特性
化学式	Cl2S
モル質量	102.97 g mol−1
外観	赤色の液体
匂い	刺激臭
密度	1.621 g/cm3
融点	−121.0 °C, 152 K, -186 °F
沸点	59 °C, 332 K, 138 °F (分解)
水への溶解度	溶けない、ゆっくりと反応する
磁化率	−49.4·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD)	1.5570
構造
配位構造	C2v
分子形状	折れ線
危険性
GHS表示:
絵表示
重要な用語	Danger
危険性報告	H314, H335, H400
予防報告	P260, P261, P264, P271, P273, P280, P301+P330+P331, P303+P361+P353, P304+P340, P305+P351+P338, P310, P312, P321, P363, P391, P403+P233, P405, P501
NFPA 704（ファイア・ダイアモンド）	3 1 1
発火点	234 °C (453 °F; 507 K)
安全データシート (SDS)	ICSC 1661
関連する物質
関連する	二塩化二硫黄 塩化チオニル 塩化スルフリル
関連物質	二フッ化硫黄 四フッ化硫黄 六フッ化硫黄 二臭化二硫黄
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

合成

一塩化硫黄に塩素を作用させると、二塩化硫黄に変わる。

${\displaystyle {\ce {S2Cl2 + Cl2 -> 2SCl2}}}$

この反応は塩化鉄(III)などのルイス酸に触媒される。また、平衡反応であるため、二塩化硫黄を放置すると、塩素を放出して一塩化硫黄に戻ってしまう。そのため、純度の高い二塩化硫黄を合成するときは、五塩化リンなどを安定剤として蒸留を行う。

反応

元素状や水素化物の硫黄と反応して、ポリスルフィド結合を持つ塩化物を作る。この反応は、ゴムの加硫に利用される。

${\displaystyle {\ce {{SCl2}+{\mathit {n}}S->Cl-S_{{\mathit {n}}+1}-Cl}}}$

${\displaystyle {\ce {2SCl2 + H2S4 -> Cl-S6-Cl + 2 HCl}}}$

−80 ℃ にて塩素を作用させると、四塩化硫黄を生じる。この化合物は、−31 ℃ 以上で逆反応を起こして分解する。

${\displaystyle {\ce {SCl2 + Cl2 -> SCl4}}}$

三酸化硫黄と反応させると、塩化チオニルを与える。これは、塩化チオニルの工業的な合成法である。

${\displaystyle {\ce {SCl2 + SO3 -> SOCl2 + SO2}}}$

水とは、塩化水素を出しながら激しく反応する。