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古物諮詢委員会
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古物諮詢委員会(こぶつしじゅんいいんかい、中国語: 古物諮詢委員會、英語: Antiquities Advisory Board、略称:古諮會[1]、AAB)は、香港の法定機構であり、文化財および史跡に関する事項について、古物事務監督たる発展局局長に対して助言を行う組織である。香港法例第53章「古物及古蹟条例」により1976年に設置され、委員は行政長官によって任命される。古諮会は文化財保護について発展局へ助言を行い、発展局傘下の古物古蹟弁事処が行政支援を行う[2]。


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組織
要約
視点
立法局は1971年に古物及古蹟条例を成立させ、同条例第17条に基づき香港総督に古諮会委員を任命するよう要求した。しかし香港政庁はこれを即時実施せず、委員会の設置は1977年2月までずれ込んだ[3]。
古物及古蹟条例第17条によれば、古諮会委員は行政長官(植民地時代は総督)により任命され、そのうち一名が主席となる。条例には委員の人数や資格についての規定は存在せず[4]、歴代委員はその多くが建築家、学者、商人及元官僚などの出身であり、考古学や歴史学分野の背景を持たない[5]。
現在の委員
現在の古諮会は20名の委員からなり、任期は2023年1月1日から2024年12月31日までである[6]。
成員名稱 | 職業 |
蘇彰徳(主席) | 弁護士[7] |
葉頌文 | 建築家[8] |
符展成 | 建築家[9] |
何鉅業 | 測量師[10] |
楊詠珊 | 都市計画家[11] |
阮肇斌 | 公認会計士[12] |
葉嘉明 | 公認会計士[13] |
沈豪傑 | 弁護士、元朗区議会主席[14] |
張添琳 | 南豊発展有限公司董事総経理[15] |
史秀美 | 香港経済日報集団執行董事[16] |
曾昭唐 | 初創公司創業者[17][出典無効] |
陳鎮洪 | 新盟資本高級董事総経理[18] |
楊偉誠博士 | 友邦保健資深区域総監[19] |
李正儀博士 | 団結香港基金総裁[20] |
蘇祐安 | 東華三院執行総監[21] |
李志苗教授 | 香港大学地理系客席教授[22] |
張瑞威教授 | 香港中文大学歴史系教授[23] |
林永昌教授 | 香港中文大学歴史系および人類学系助理教授[24] |
朱海山教授 | 珠海学院建築学系系主任および教授[25] |
陳蒨教授 | 香港樹仁大学社会学教授[26] |
歴代主席
- 何承天(2003年4月1日-2008年12月31日)
- 陳智思(2009年1月1日-2012年12月31日)
- 林筱魯(2013年1月1日-2018年12月31日)
- 蘇彰徳(2019年1月1日-現在)
歴代委員
出典:[27]
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権能
古物諮詢委員会は法定組織であり、古物事務監督(英語: Antiquities Authority。2007年以降は発展局局長)に対して法定古蹟の宣布および歴史建築の等級評価、歴史遺跡の保護や調査、文化財保護に対する認識や関心の向上について助言を行う。ただし、古諮会の意見はあくまで古物事務監督の参考に留まるため、政府所有物件の古蹟ないし暫定古蹟指定に関する同会の意見が香港政府の立場と食い違うこともある[3]。また、同会が私有財産を古蹟または暫定古蹟に指定するよう助言した際に、その所有者が財産権の侵害として反発することもある[28]。さらに、歴史建築の評価プロセスには透明性が欠けているとの批判や、助言が法的効力を持たないことについても批判がある[29][30]。
政府部門との関係
古物古蹟弁事処および康楽及文化事務署
古物古蹟弁事処(古蹟弁)は、古諮会に対して秘書業務および行政支援を提供している。また、古蹟弁は特に歴史建築の等級評価など、古諮會が古物事務監督に提出する助言の実施を担当する。古蹟弁は康楽及文化事務署(康文署)と連携し、古蹟および文物の保存と研究、考古学的価値を持つ場所の調査・発掘の統括を行う[31]。また、古蹟弁と康文署の代表者は古諮會の会議に出席し、文化財の保護に関する専門的意見を提供する[32]。
発展局および古物事務監督
文化財保護を主管しているのは発展局である[33]。「古物及古蹟条例」第2条により、発展局局長が2007年より古物事務監督を兼任する[34]。
同条例第18条に基づき、古物諮詢委員会は、暫定古蹟または古蹟の宣布に関して古物事務監督に意見を提供する。古諮会はまた、暫定古蹟または古蹟に対して本条例が課す制限の免除についても、古物事務監督に意見を提供するものとする。制限には、当該物件の上または内部における発掘、建築または工事の実施、樹木の植樹および伐採、土砂またはゴミの堆積、または暫定古蹟もしくは古蹟の解体、移動、封鎖、損傷、または干渉が含まれる[35]。上記の意見は行政長官の承認を経た後、古物事務監督の名前で官報にて公告される。
行政長官
「古物及古蹟条例」第17条は、古物諮詢委員会の委員および主席は行政長官によって任命されると規定している。古諮会が暫定古蹟または古蹟に関して古物事務監督に提供する意見は、行政長官の承認を経た後、古物事務監督が官報にて公告して宣布する[36]。
問題点
要約
視点
委員構成
古物諮詢委員会の委員は、その多くが建築家、学者、実業家および元官僚であり、考古学や歴史学の背景を持たない[37]。政府が2006年に愛丁堡広場渡輪碼頭の取り壊しを行った際、文化財保護の関係者は、古諮会が当該ターミナルの保存案について徹底的な議論を行ったことがないと批判した[38]。その後、民政事務局は文化財建築の保護政策を見直し、委員数を28名に増やすことを決定した。政府はまた、社会の各分野および各業界の人士を任命することで、委員構成をより多様かつバランスの取れたものとすることを約束した[39]。
社会からはまた、古諮会の決定が政府の立場に偏っているとの批判もある。古諮会は2012年、政府山にある旧中区政府合署西座の保存をめぐり、建築物評価について当時の古諮会主席であった陳智思が決定票を投じたことで、古諮会は1票差で西座を暫定的に二級歴史建築に指定することを可決した[40]。その投票姿勢は、西座の解体を進めようとする政府の立場に偏っていると指摘され、陳は最終的に古諮会の信頼性を守ることを理由に主席を辞任した[40]。当時発展局局長であった林鄭月娥は、一部の社会人士による古諮会主席や委員に対する批判を不合理であると反論した[41]。政府の交代後、梁振英行政長官によって任命された古諮会の委員についても引き続き批判があった。環境保護団体は、一部の委員が梁の支持者と見なされていることについて、潜在的な利益相反に懸念を表明した[42]。
社会はまた、古諮会が関連する専門知識を欠いていることにも懸念を示している。元古諮会委員の何佩然教授は、一部の委員が史跡・文化財保全とほとんど関係がなく、また特定の政治的立場から、経済的価値に基づいて歴史的建造物の評価を行っていると指摘した[43]。元委員の高添強も、古諮会が軍事遺構を無視し、評価の際にはしばしば建物の外観を考慮するだけで、建物の歴史的用途を無視していると指摘している[44]。政府が2020年末に旧深水埗配水庫の解体工事を一時停止した際、社会からは政府の歴史的文物保全制度がすでに機能していないのではないかとの疑問が投げかけられた。この際古諮会主席の蘇彰徳は、政府は古諮会委員の任命メカニズムを見直してもよいのではと提案した[45]。
評価基準
古諮会および古蹟弁は、歴史的建造物の保護について以下の行政指針を採用している[46]:
- 一級歴史建築:「特別に重要な価値を有し、可能な限りあらゆる努力を尽くして保存されるべき建築物(中国語: 具特別重要價值而可能的話須盡一切努力予以保存的建築物)」
- 二級歴史建築:「特別な価値を有し、選択的に保存されるべき建築物(中国語: 具特別價值而須有選擇性地予以保存的建築物)」
- 三級歴史建築:「ある程度の価値を有し、何らかの形で保存するのが望ましい建築物;保存が実現不可能な場合には他の方法も考慮できる(中国語: 具若干價值,並宜於以某種形式予以保存的建築物;如保存並不可行則可以考慮其他方法)」
この評価基準には法的拘束力がなく、また透明性も不足しているとの批判も存在する。
法的拘束力の欠如
古諮会は実質的な権限を欠いていると指摘されており、その機能は文化財の識別、記録および研究に限られている[47]。「古物及古蹟条例」は古物事務監督が古諮会の意見を諮問しなければならないと定めているのみであり、行政長官は法定古蹟または暫定古蹟の宣告を批准しない権限を有している。歴史建築を法定古蹟とするか否かについて、古諮会の意見は古物事務監督および行政長官の参考に供されるにすぎず、法的効力を有しない。政府は古諮会の意見を否決することも可能であり、政府部門は古諮会の意見を無視して歴史建築の解体を決定することができる[48][49]。
皇后碼頭の事例では、古諮会が皇后碼頭を一級歴史建築としたものの、政府は経済・都市開発・市民の反対といった理由により、皇后碼頭を法定古蹟とすることを拒否し[49]、さらには古諮会による評価はその解体決定に影響を与えないと明言した[50]。政府はその後、中区填海計劃第3期を進めるために2007年4月26日に皇后碼頭を閉鎖し、2008年2月に解体した。
透明性の欠如
古諮会および古蹟弁は、歴史的価値(historical interest)・建築的価値(architectural merit)・集団的価値(group value)・社会的価値および地域的価値(social value and local interest)・真正性(authenticity)・希少性(rarity)の六つの基準に基づいて歴史的建造物の評価を行う[51]。ただし、古諮会は評価の理由を公開しておらず、市民は古諮会のメンバーが上記六項目の基準をどのように評価しているかを知るすべがない。
例えば古諮会が皇都戯院を評価した際、古蹟弁の歴史建築評審小組のメンバーは、それぞれ異なる方法で基準を解釈していた。歴史的価値について、歴史学者の蕭国健は李鄭屋漢墓などの史跡と皇都戯院を比較し、その歴史的価値に疑問を呈した。蕭はまた、皇都戯院で映画を観た人は50年前にしかいないという理由から、その社会的価値も疑問視した。建築家の羅慶鴻は現代の若者が鄧麗君を知らないという例を挙げ、皇都戯院の集団的価値は高くないと主張した。羅はさらに、古蹟弁が各建築物に対して行った研究資料を重視しないとも述べた。これを受けて、一部の文化財保護団体は、専門家による建築物の歴史的価値評価の能力に疑問を呈した[52]。
古諮会は歴史的建造物の暫定的な等級評価を行った後、関連資料を公開し、一般からの意見を募る。古諮会は公衆諮問期間中に寄せられたすべての意見や資料を考慮した上で、建築物の等級を最終的に確定するとしているが[53]、保護団体は、古諮会および古蹟弁が等級の再評価や歴史建築評審小組との面会の要請に対して官僚的な言い回しで応じるだけで、いかなる提案も採用しようとしないと批判している[52]。
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脚注
関連項目
外部リンク
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