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慣性モーメント
角運動量と角速度の関係を示す量 ウィキペディアから
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慣性モーメント(かんせいモーメント、英: moment of inertia[1])あるいは慣性能率(かんせいのうりつ)、イナーシャ[2] I とは、物体の角運動量 L と角速度 ω との間の関係を示す量である。
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概要
軸のまわりを回転する物体の慣性の大きさを表す量で、回転を変えようとするときに、それに抗(あらが)う性質の大小を表わす[3]。例えば、傘を持ち手の周りで回転させたり止めたりするときの手ごたえは、傘を開いているときと畳んでいるときとで異なる。開いている時のほうが回転させたり止めたりするのに大きな力が必要になる。この時の回転させたり止めたりする時の手ごたえの大小、回転運動に対する抵抗の大小を表わす量が慣性モーメントである。慣性モーメントが大きいものほど回転の状態[4]を変化させるのに大きな力を必要とする[5]。慣性モーメントの値は、物体の各部分の質量と、回転軸からその部分までの距離の二乗との積で表現される[6]。
剛体が特定の軸を中心に回転する際の角速度の変化に対する慣性(変化のしにくさ、抵抗)。トルクを角加速度で割った値、角運動量を角速度で割った値。慣性モーメントは力と加速度(あるいは運動量と速度)の関係において、質量と同じ役割を果たしており慣性モーメントが大きいほど増減させにくい関係にある。古い文献では「回転質量」[7]と記述されており、この物理量が最初に登場したのは1749年のレオンハルト・オイラー『海軍科学』である[8]。
慣性モーメントのSI単位はkg·m2
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定義
要約
視点
質点系がある回転軸まわりに一様な角速度ベクトル ω で回転するとき、質点系の持つ角運動量ベクトル L は次のように書ける。
ここでmi は i 番目の質点の質量、ri は回転軸上の原点との相対座標でありriはその大きさである。この式からわかるように、L は ω と向きは必ずしも一致しないが、ω を線形変換したものになっている。つまり、その線形変換をIとすると、
と表せる。この変換 I は2階のテンソルであり、LとIの各成分は
という形に表される[10]。ここに δjk はクロネッカーのデルタ、ri, j はベクトル ri の j 成分である。I を行列表示すると
となる。この定義から I は対称テンソルである。この2階のテンソル I を慣性モーメントテンソル、または簡単に慣性テンソルと呼ぶ[10]。また、慣性テンソルの対角成分 Ixx、Iyy、Izz を(それぞれ x、 y、 z 軸に関する)慣性モーメント係数(英: moment of inertia coefficient)と呼び、 Ixy、Iyz、Izx は 慣性乗積(英: products of inertia)と呼ぶ[11]。
なお、質量分布が連続的に広がっている場合には、その物体の慣性テンソルは密度 ρ を用いて
となる[12]。
ある軸まわりの慣性モーメント
物体をある回転軸まわりに回転させたとき、ωと同じ向きをもつ単位ベクトルnをもちいると、回転軸にそった角運動量成分は次のように与えられる。
ここで、ω = |ω|は角速度の大きさである。
慣性主軸と主慣性モーメント
慣性テンソル行列は実対称行列なので、適当な直交座標系 { e1, e2, e3 } を選ぶことで対角化(すなわち Ixy = Iyz = Izx = 0 と)することができ、そのときの座標軸を慣性主軸、慣性モーメント { I1, I2, I3 } を主慣性モーメントと呼ぶ[14]。慣性主軸座標系では角運動量は
と単純に表すことができる。
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計算例
要約
視点
棒の両端の質量
重さの無視できる長さ L の棒の両端に、質量 m 、M の物体がくっついたものを考える。棒の適当な位置に回転の中心となる点を定め、そこから両端までの腕の長さをそれぞれ a、L - a とする。このとき、中心に対する慣性モーメント I は、
と、計算される。この式から分かるように、慣性モーメントは、中心(回転軸)のとり方によってその値が変わる。中心として系の重心をとったとき、慣性モーメントは最小となる。すなわちもっとも回しやすい。
円板
半径 a 、全質量 M の、一様な密度 ρ = M / πa2 をもつ円板の、中心軸まわりの慣性モーメントは
となる。
これは中心から半径 r 、幅 dr << r のリングの質量 dM を考えると
より、このリングの慣性モーメント dI が
だから
より求めることができる。
リング状円板
円板外半径 a 、くり抜き内半径 b 、全質量 M のリング状円板では、前出の dI を用いて
となる。
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性質
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一般に、剛体の慣性モーメントは、剛体の質量に比例し、質量が軸から遠くに分布しているほど大きくなる。
また、回転軸が重心を通るとき慣性モーメントは最小値 IG をとり、軸が重心から距離 h だけ離れている場合、その軸の周りの慣性モーメント Ih は
となる[15]。
→詳細は「平行軸の定理」を参照
慣性テンソル I の物体が角速度 ω で回転しているとき、その回転に伴う運動エネルギー T は
と表示できる[16]。
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関連する物理量
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応用
工学での応用として、回転軸に慣性モーメントの大きい回転体を取り付けた装置をフライホイール(はずみ車)という。これは、回転速度の急激な変化を抑止したり、回転によるエネルギーを保存する目的で使用される。
脚注
参考文献
関連項目
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