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遠くからの声 (松本清張)
松本清張の短編小説 ウィキペディアから
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『遠くからの声』(とおくからのこえ)は、松本清張の短編小説。『新女苑』1957年5月号に掲載され、1959年9月に短編集『紙の牙』収録の1編として、東都書房より刊行された。
1966年にテレビドラマ化されている。
あらすじ
民子は津谷敏夫と結婚した。交際期間の間、民子の妹の啓子は、ときどき姉に利用された。啓子は女子大を卒業する前の年であった。民子は敏夫と式をすませると、日光の中禅寺湖畔に行った。すると三日目の昼過ぎに、啓子が宿にはいってきた。民子は妹の闖入にきっとなったが、啓子は平気なものだった。
夜になって、三人で湖畔を散歩した。霧が一面に立って湖を匿していた。啓子は、一人で先にずんずん歩いていった。やがて見えぬ向こうから大きな声が聞こえた。「おにいーさまあ」。民子は、妹がこんな場所にまで割りこんでくるのが、平静な気持ちで受けとれなかった。
敏夫と民子は、東京に家をもった。啓子が、さぞたびたび、遊びにくるだろうと思ったが、ついぞ一度も覗きにこなかった。まったく手の裏を返したようであった。翌年、啓子に十五年上の中年男との結婚の話が出て、その男と結婚できなければ死ぬと言って騒いだというのであった。啓子は父母の反対を押しきって結婚式をあげるが、それから二か月も経たないうちに、啓子が駆落ちをしたという知らせが入る。啓子は九州の炭鉱の事務員と同棲していることがわかった。
半年ばかり経って、敏夫は福岡に出張し、啓子を訪ねてみる気が起こった。筑豊炭田の真ん中の、幸袋駅を出たときに、敏夫は、「お兄さま」と横から呼びかけられた。啓子の声であった。
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エピソード
- 著者は本作についてのちに「『遠くからの声』は、『新女苑』という今は無くなっている女性雑誌に書いた。女性が恋愛を諦めて身をひく場合、どうしても諦められないときは、自分で外的の条件をつくることもあるのではなかろうか。自分の意志を自ら封鎖する絶対の環境を設定することである。意志だけではいつ崩れるかわからない。そこで、ふたたび相手に達することのできない檻に自分を閉じこめる女性を考えてみた。この小説の舞台になっているところは、今から七八年前たまたま遊びに行って、そのときの印象で書いている」と記している[1]。
- 推理作家の北村薫は、本作には木々高太郎の短編小説「永遠の女囚」へのリスペクトを感じると述べている[2]。
- 北九州市立松本清張記念館学芸担当主任の中川里志は、作中(五節)の幸袋の風景の描写が『半生の記』で使われていることを指摘している[3]。
- エッセイストの酒井順子は、本作を「清張の転落ものの種子のような作品」と位置付け、「恋愛に対する憧れを誰もが持ちつつも、誰もが恋愛には不慣れだったのであり、「遠くからの声」は、そんな時代の不器用な恋心を描いている」と述べている[4]。
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テレビドラマ
![]() | この節の加筆が望まれています。 |
1966年1月18日、関西テレビ制作・フジテレビ系列(FNS)の「松本清張シリーズ」枠(21:00-21:30)にて放映。
- キャスト
- スタッフ
脚注
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