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音高(おんこう)、音の高さ(おとのたかさ)[1]、またはピッチ(英語: pitch[2])は、音楽や音響学において、ヒトの聴覚が感じる音の高低を示す心理量である[3][4]。 ラウドネス(音の大きさ)、音色と合わせて、音の知覚的属性である「音の3属性」を構成する[5]。
「音高」は音楽用語であり、音楽辞典[6][7]や音楽書籍には見られるが、音響学の辞典には見られない[注釈 1]。音響学ではもっぱら「音の高さ」の語が用いられる[1]。
ヒトは音に対して高低を感じる。これが音高(音の高さ)である。感覚量(心理量)である「音の高さ」の単位にはメル(mel)がしばしば用いられる[9]。周波数1kHz・音圧レベル40 dBの純音をヒトが聴いた際に感じる音の高さが1,000melと定義される[10]。メルは比率尺度であり、ヒトの感じる音の高さが2倍になれば2,000mel、半分になれば500melと表される[11]。
音高(音の高さ)は音波がもつ物理量である基本周波数と深い関係を持つ[12]。基本的に周波数が高いほど音は高く聞こえる。しかし基本周波数以外の様々な要素が実際の音の高さ(音高)には関与している。例えば音の高さ(音高)は音の長さにも左右される。たとえ1周期が含まれていたとしても、数ミリ秒の短い音声からは明確なピッチが知覚できない[13]。
また音高(音の高さ)と同時に、ヒトは音に対して循環性を感じる(いわゆるオクターヴ感覚)[14]。これはトーンクロマあるいはトーンクラスと呼ばれる[15](音高と合わせ音楽的ピッチあるいは旋律的ピッチとも[16])。
音の高さの丁度可知差異 (jnd; Just noticeable difference) は約5セント(半音の5/100)である。しかし、この値は音域によって異なり、音を同時に鳴らした場合にはより精密となる。人が感じる音高(音の高さ)は音の大きさや音域そして音色に影響されるといわれる。周波数成分が複数ある音(自然界や楽器の音は全てそうである)から、人間がどのようにして音高(音の高さ)を捉えているのかは、はっきりとは分かっていない。人間におけるその他の刺激と同様に、音高(音の高さ)の知覚についても、ヴェーバー‐フェヒナーの法則によって説明することができる。可聴周波数の下限に近い音は高め、上限に近い音は低めに聴こえる。一般に大きい音ほど(僅かだが)高めに聴こえ、低音域では音の振幅が大きくなるほど、音高(音の高さ)は低く知覚される。また、倍音の多い(強い)音ほど高めに聴こえる。
他の人間の感覚と同様に、聴覚にも錯覚(錯聴)が存在し、それにより、音高(音の高さ)の相対的な知覚が惑わされる場合がある。これには、「三全音パラドックス」などいくつかの例があるが、最も特筆すべきなのは「無限音階(シェパード・トーン)」である。これは、連続の、あるいは不連続の特別な音のスケールが、無限に上昇または下降し続けるように知覚される現象である。
中央の1点ハ音(ド・C4・c')の上の1点イ音(ラ・A4・a')は、1939年にロンドンで行われた国際会議で440 Hzとされた(通常 "A = 440 Hz" か "A440" と記される)。しかしベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団では A = 444〜445 Hzが基準とされている[17]。日本では、戦後の1948年に9年遅れでA = 440 Hzを導入したが、以前は、1859年のパリでの会議、1885年のウィーンでの会議で定められたA = 435 Hzを標準としていた。現在の日本ではオーケストラや演奏会用のピアノは A = 442〜443 Hzとなる場合が多い。
上述のようにヒトは音に対して循環性を感じ、この心理的特性はトーンクロマあるいはトーンクラスと呼ばれる。トーンクロマは音波の物理的性質である調波構造(倍音)と深い関係をもつ。例えば100Hzの音と200Hzの音は、異なる音高(音の高さ)を持ちつつ同じトーンクラスに属する音として知覚される[18]。
ヒトの可聴周波数は20~20kHzである一方、トーンクロマは30~4,000Hz(約7オクターブ)という限られた範囲でのみ成立する[19]。音楽的にもこの範囲に音域を限定した楽器が多い(c.f. 88鍵のピアノの音域外の音)。
トーンクロマの実在は絶対音感に関する実験から実証されている。被験者へ音を提示し、そのオクターブとトーンクラス(例: 2オクターブ目のド)を回答させる。トーンクラスが実在しない場合は1次元のピッチ(ハイト)のみで判定が行われるため、誤答は各トーンクラスに散在するはずである。しかしいわゆる絶対音感を持つ被験者では誤答のほとんどが1オクターブ上か下の同じトーンクラスに集まる事が知られている(オクターブエラー)[20][21]。これはオクターブ単位で繰り返す感覚、すなわちトーンクラスが存在することを示唆する(存在≠生得的、に注意されたし)。
オクターブ感覚は1オクターブの上下に対して感じる、元の音に戻る感覚である[22]。すなわちヒトがトーンクロマに対して感じる感覚である。
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