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高杉さん家のおべんとう
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『高杉さん家のおべんとう』(たかすぎさんちのおべんとう)は、柳原望による日本の漫画。『コミックフラッパー』(メディアファクトリー発行)にて、2009年5月号から2015年6月号まで連載された。2021年7月時点で電子版を含めた累計発行部数は130万部を突破している[2]。
とある事情で同居することになった、主人公・高杉温巳と年齢の離れた従妹・久留里が、お弁当作りなどを通して触れ合い、家族となっていく過程を綴った物語である。作中には、地理学に関する話題が取り上げられていて、地理学者からも評価されている[注 1]。本作を通じた地理学の普及・啓発などの貢献により2014年度日本地理学賞(社会貢献部門)が作者に授与されている[3]。
主な舞台は名古屋市であり、柳橋中央市場などが登場する[4]。そのほか、岐阜県恵那市の串原地区などもしばしば舞台となっている[4] 。
作中の時間経過は現実世界のそれとほぼ同じタイミングとなっており、登場人物が誕生日を迎えて年齢を重ね、進級や留年、定年退職をし、それに伴い様々な成長をしていく様子も描写される。
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あらすじ
- 新しい同居人
- 高杉温巳(ハル)は、両親を交通事故で亡くし、実家のマンションに一人暮らしをしている。N大学で地理学の博士号をとったものの、研究職や教職に就けず、風谷教授の研究室に居続けている。シングルマザーであった叔母の美哉が亡くなり、故人の希望で娘・久留里の未成年後見人になる。31歳の温巳と中学1年生の久留里の共同生活は、当初はぎくしゃくするが、久留里が夕食、温巳が残りの食材でお弁当を作る関係が生まれ、久留里は次第に温巳が家族であると感じるようになる。新しい中学校で久留里は浮いた存在となるものの、香山なつ希、丸宮光、園山奏などの友人ができる。
- 助教試験
- 風谷教授から温巳に助教の声がかかり、その試験課題は「久留里を記述すること」であった。温巳は久留里と一緒に、美哉が暮らしていた街と勤めていた出版社を訪ね情報を集める。悩んだ末に温巳は、課題に対して「お弁当」を提出する。風谷教授はお弁当を食べながら説明を聞き、就職試験としてはこれもありかなと語る。温巳は美哉の戸籍謄本を取り、血縁関係がないことを確認する。一方、久留里は学校でメンデルの法則を教えてもらい、おおよそのことを理解する。
- S女子大講師
- 風谷教授や香山玲子に後押しされ、温巳は公募を受け、S女子大の講師の二次審査に進む。ところが、同僚の小坂りいなも同じ審査に進んでいた。朝のジョギングで久留里はりいなと出合い、温巳が落ちたこと、りいなが高杉のことを好きなことを知らされる。
- 教育的指導
- 久留里は高校に進学し、人付き合いが悪いため「氷の美少女」と呼ばれるが、山田旭と知り合いになり、文芸部のマネジャーとなる。風谷研究室の日間賀島研修において、久留里の疑問に温巳は既存の理論だけで答えるのに対して、りいなは「学生をやる気にさせるには、もっと教員自身の思いや情熱が必要だ」と反論する。風谷教授から、「楽しいことを追求すると新しいことが生まれる。研究もそうあってほしいものだ」と教育的指導を受ける。
- りいなの海外派遣
- りいなはドイツに海外派遣されることになり、温巳には好きでしたと過去形で想いを伝え、機内の人となる。温巳は二重の大きな痛手を受けるものの、意外と元気な自分に気付く。りいなは最終報告会の特別枠で発表し、温巳は質疑で市場での販売から入り、地理学は人を見る学問ですからと結ぶ。風谷教授は、温巳に「さきほどの質問はよかったね、育ったねえと思ったよ、あの女の子を引き取ってから特にね」と話す。
- 一枚の写真
- なつ希の父親・ヨシュアが来日早々に警察のやっかいになる。玲子はヨシュアを香山家には入れず、全員が高杉家に集い、マグロパーティとなる。ヨシュアは「家族で囲むテーブルが夢であり、僕の人生にレイコが必要だ」と語り、玲子は乙女モードになる。りいなが養蜂家の鈴木から借りてきた日記に美哉と高遠晶の写っている写真がある。温巳は高遠に会い、久留里の父親であることを確認する。
- コビー先生との共同研究
- 風谷教授が共同研究を進めようとしているコビー先生が飯田市遠山郷に来ており、温巳たちが訪問する。昼食を通してコビー先生は温巳の人柄を知り、4年間フランスで一緒に研究することを提案する。久留里は、N大学地理学科に合格する。温巳は久留里に父親について話し、高遠夫妻と合わせる。久留里は、自分を引き取るという高遠夫妻に「このままでいいんです」とはっきり答える。
- 新しい門出
- 風谷ゼミでは「フランスご栄転」パーティが開催され、公募落選を重ねながら、久留里とともに成長していく温巳が映し出される。久留里から「あたしは、ハルが好きです」と告白され、温巳は動転し、ごまかしの言葉しか出てこない。みんなに見送られ、手荷物検査場で温巳は、「僕もだ、僕もなんだっ」と叫び、「それはどういうことかというと、今後の課題とさせてもらいます」と言い残す。久留里の反応は「ハルのバカーーっっ」である。
- 4年後
- 温巳はバスク地方の牧畜調査で、弁当持参でついて回り、それが地元のテレビ局で取り上げられる。複数の論文も専門誌に掲載され、広島のH大学で準教授職が決まる。しかし、空港に久留里の姿はない。久留里から送られたお弁当レシピ画像から御在所岳に直行する。ケーブルカーを降り、温巳は革靴で残雪を踏みしめ、たどりつき、「久留里さん、僕とつきあって下さい」と言い、久留里は笑顔で応える。
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主要登場人物
- 高杉 温巳(たかすぎ はるみ)
- 本作の主人公。地理学の博士号を修得したが、大学教員や研究機関の公募に受からず、N大の風谷教授の研究室に居続けている。鈍感で心理的洞察力およびその学習能力に乏しく、何事にも懸命だがやることが裏目に出て空回りすることが多い。18歳の時に両親を交通事故で亡くし、同居していた叔母の美哉は家を出て消息不明となる。シングルマザーとなった美哉が亡くなり、彼女の指名により久留里の未成年後見人となる。
- フランスの共同研究から凱旋帰国して3年後に久留里と結婚しており、単身赴任者として、普段は広島、週末は名古屋に帰る生活を送っている[6]。
- 高杉 久留里(たかすぎ くるり)
- 温巳の従妹。シングルマザーの美哉と2人暮らしをしており、保育園や小学校が終わった後、美哉のオフィスの片隅で過ごしていた。美哉が亡くなったため、中学1年生から温巳と同居するようになり、次第にそこが自分の居場所と思うようになる。無駄遣いを嫌い、節約に努めることが好きで、スーパーなどの特売のチラシをチェックすることが趣味。温巳と同じN大学に進学し、在学中に気象予報士の資格を取得して、卒業後は名古屋のテレビ局のアナウンサーになる。
- 高杉 美哉(たかすぎ みや)
- 久留里の母親。温巳の叔母で高杉家に同居しており、温巳の初恋の人。温巳の両親が亡くなった後、失踪する。シングルマザーとして小さな出版社で働きながら久留里を育てる。万一の場合に備え、久留里の未成年後見人として温巳を指名する。
- 小坂 りいな(こさか りいな)
- 北海道H大学からの特別研究員としてN大学の風谷の研究室におり、養蜂をメインに研究している。温巳に好意を抱いている。妄想が行き過ぎて、頭がぐるぐるしてしまう描写が多い。酒が入ると強気になる[7]。ドイツ留学が決まった際に温巳に別れを告げる。その後、丸宮元と付き合い、温巳の渡仏中に結婚する。
- 香山 玲子(かやま れいこ)
- 温巳の同期。S女学園大学の准教授を務めており、自身も所属していた風谷研究室に出入りしている。夫・ヨシュアとは別居中。家事・子育ては母・節子にほとんど全て任せている。ぶっきらぼうだが他人との関係をとりもつなど、意識せずとも結果的に周囲の人間関係を良好にする。
- 香山 なつ希(かやま なつき)
- 中学時代の久留里の同級生で、玲子の娘。クラスの女子のリーダー的存在。小動物を愛でるように久留里と接するが、久留里からは辟易されている。周囲の人の想いを敏感に察知する能力をもつ。
- 丸宮 光(まるみや みつる)
- 中学時代の久留里の同級生で、実家はスーパーまるまる。物怖じしない性格のためクラスのムードメーカー的存在で、女子からの人気も高い。久留里に好意を抱いている。中学卒業後は就職を希望し父に直訴するが、周囲の勧めもありZ高定時制に進学し、日中はスーパーまるまるで働く。
- 園山 奏(そのやま かなで)
- 中学時代の久留里の同級生で、水泳部キャプテン。両親と兄がおり、全員体育会系でさっぱりとした性格。
- 風谷 久郎(ふうや くろう)
- N大学の教授。温巳、玲子、りいなたちの所属した研究室の指導教官であり、温巳の上司にあたる。いつもニコニコしているが、時に意地悪な質問をするなど、つかみどころの無い人物。N大学に進学した久留里の指導も担当する。
- 御手洗 百合子(みたらい ゆりこ)
- 市立東山中学校の教師。温巳の中学時代の担任で、美哉の担任もしていた。教師歴30年以上のベテランで、久留里の卒業と共に定年退職する。弁当のおかずは買い置きしてあるふりかけで、弁当のおかずが少ない生徒に分けてあげている。
- 丸宮 元(まるみや はじめ)
- 光の兄。スーパーまるまるの跡取り息子。N大学の学生で、風谷ゼミに入る。りいなに好意をもち、温巳をライバル視している。正直な性格で、その場の状況を考えずに思ったことをそのまま口にしてしまうことが多い。久留里の心の内を見抜くような発言が多く、最大限に警戒されている。
- 丸宮 麻子(まるみや あさこ)
- 光の弟である志大(しひろ)の実母。元はスーパーまるまるの従業員で、光の初恋の人。
- 香山 節子(かやま せつこ)
- 玲子の母親で専業主婦歴30年。久留里が家事の師匠として仰いでおり、なつ希の家に遊びに行った際には、節子から料理を習うのが常となっている[8]。旧姓は大林(おおばやし)であり、御手洗とは旧知の間柄。
- 山田 旭(やまだ あさひ)
- 久留里の進学先であるZ高の文芸部部員。久留里の1年先輩。
- 白瀬 健康(しらせ けんこう)
- 山田旭の同級生、文芸部部員。俳句に秀でる。車酔いしやすく、食品添加物アレルギーがある。
- 丸宮 史(まるみや ふみ)、丸宮 蕗(まるみや ふき)
- 光の姉。久留里の2年先輩で、Z高文芸部の部長と副部長。
- 佐竹 吾助(さたけ)
- 弁護士。美哉の死後、様々な手続きを代行した。万一の場合に備え、未成年後見人の指名や遺言書の作成を勧める。
- 永井 英子(ながい えいこ)
- 美哉が勤めていた「こども出版」の編集長。
- ヨシュア・マルティネス
- 香山玲子の夫。地理学者にして写真家。国際エッセイストとして受賞歴があり、写真集や著書も多数出版している。温巳の論文集を翻訳して渡仏のきっかけを作る。香山家には入れないため、日本に来た際には高杉家に居候しているが、温巳の渡仏を契機に高杉家の上の階の部屋に入ることになる。
- コビー・オテイザ
- バスク地方出身のフランス人研究者。ヨシュアの翻訳した温巳の論文を読み、興味を持ち、4年間のフランスでの共同研究に誘った。
- 高遠 晶(たかとお あきら)
- 長野の養蜂家。美哉の中学時代の同級生であり、久留里の実の父親。
- まるいち
- 作者の別作品『まるいち的風景』に登場するロボット。本作には背景の一部(料理番組のマスコットや防犯ポスターの図案、久留里が着用するエプロンの柄など)としてしばしば登場する。カメオ出演であり、ストーリーへ直接的に関わることはない[注 2]。
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書誌情報
単行本
- 柳原望 『高杉さん家のおべんとう』 メディアファクトリー→KADOKAWA〈MFコミックス フラッパーシリーズ〉、全10巻
- 2010年1月31日初版第一刷発行(1月23日発売[9])、ISBN 978-4-8401-2966-4
- 2010年6月30日初版第一刷発行(6月23日発売[10])、ISBN 978-4-8401-3333-3
- 2011年1月31日初版第一刷発行(1月22日発売[11])、ISBN 978-4-8401-3744-7
- 2011年9月30日初版第一刷発行(9月22日発売[12])、ISBN 978-4-8401-4040-9
- 2012年3月31日初版第一刷発行(3月23日発売[13])、ISBN 978-4-8401-4443-8
- 2012年10月31日初版第一刷発行(10月23日発売[14])、ISBN 978-4-8401-4742-2
- 2013年6月30日初版第一刷発行(6月22日発売[15])、ISBN 978-4-8401-5074-3
- 2014年4月30日初版第一刷発行(4月23日発売[16])、ISBN 978-4-04-066544-3
- 2014年10月31日初版第一刷発行(10月23日発売[17])、ISBN 978-4-04-066879-6
- 2015年7月31日初版第一刷発行(7月23日発売[18])、ISBN 978-4-04-067556-5
コンビニ版
- 柳原望 『高杉さん家のおべんとう』 KADOKAWA〈MFコミックス MFR〉、全2巻
- 「素材新鮮中学1年生編」2016年6月3日発売[19]、ISBN 978-4-04-068274-7
- 「冷めてもおいしい中学2年生編」2016年7月2日発売[20]、ISBN 978-4-04-068275-4
関連書籍
- 『高杉さん家のおべんとう もふーっ となるHappyレシピ』 2012年10月19日発売[21]、ISBN 978-4-391-14250-1
- 作中に出てきた料理のレシピを、完成品の写真とともに紹介した本。
- 『高杉さん家のおべんとう メモリアル』 2015年7月23日発売[22]、ISBN 978-4-04-067728-6
天気予報
2016年4月より、岐阜県にある民放テレビ局「岐阜放送」で、主要キャラクターが登場する天気予報が放送されている。 約30秒の短いものと、約1分半の長いものがあり、前後に流れる「岐阜新聞中学3年学力テスト」のCMにも、天気予報で使われているものと同じイラストが使用されている。 合計6枚のイラストが確認でき、イラスト内にキャラクターがテキストを持って勉強する姿や、学力テストを受けているシーンがある。スポンサーは「岐阜新聞中学3年学力テスト」[注 3]。2017年6月21日に放送終了[23]。
テレビドラマ
要約
視点
同名のタイトルで、2024年10月3日(2日深夜)から12月5日(4日深夜)まで日本テレビ系「水曜プラチナイト」枠第2部で放送された[5]。主演は今作が連続ドラマ初主演となる小山慶一郎[5]。
また本作は、中京テレビが製作を担当する水曜プラチナイトとしては初めての連続ドラマ枠となる[25]。
プラチナイト枠では、火曜第2部に日本テレビ発のドラマDEEP、木曜(1時間通し)に読売テレビ発大阪製作の木曜ドラマがあり、火曜から木曜までドラマ枠が連続配置されることになる。
キャスト
→詳細は「§ 主要登場人物」を参照
スタッフ
- 原作 - 柳原望『高杉さん家のおべんとう』(MFコミックスフラッパーシリーズ / KADOKAWA刊)
- 監督 - 二宮崇、佐藤リョウ[5]
- 脚本 - 川邊優子[5]
- 音楽 - 鈴木ヤスヨシ
- 主題歌 - NEWS「あっちむいてほい」(ELOV-Label)[26]
- 挿入歌 - 栞寧「今日も」(ドリーミュージック)[26]
- 撮影 - 中島敬
- 照明 - 塙秀彦
- 音声 - 関川力央
- 美術 - 遠藤信弥
- フードコーディネーター - 松岡ゆり子、高橋ゆい、片山愛沙子
- 編集 - 山田典久
- 本編集 - 石井康裕
- 編成 - 辻村享、安藤愛優美(中京テレビ)
- 広報 - 中島彩花、小澤昌史、石川佳奈、渡辺尊俊(中京テレビ)
- ホームページ - 霜圭太郎、竹内千尋(中京テレビ)、舛岡葵
- 制作応援 - 中澤晋(オフィスクレッシェンド)
- プロデューサー - 池田京平、美輪善徳(CTV MID ENJIN)、木野雅世、市山竜次(オフィスクレッシェンド)
- チーフプロデューサー - 浅田大道、奥谷莉里花(中京テレビ)
- 制作プロダクション - CTV MID ENJIN
- 制作協力 - オフィスクレッシェンド[5]
- 製作著作 - 中京テレビ[5]
放送日程
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関連作品
- 『かりん歩』 - 『高杉さん家のおべんとう』完結から3年後が舞台。本作のキャラクターが登場するほか、描き下ろしで本作のその後も掲載される。
脚注
外部リンク
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