Appleのマーケティング

Appleのマーケティング（アップルのマーケティング）は、同社の広告、流通、ブランディングを包含する。スティーブ・ジョブズが1997年にAppleに復帰した後、彼はインダストリアルデザインを同社のブランディング戦略の重要な要素とした。Appleの公共イメージは、『1984』や『Get a Mac』を含む、TBWA\Chiat\Dayと提携して制作されたいくつかの高く評価された広告によって形成されてきた。Appleの製品発表の多くは、Appleスペシャルイベントや同社のWorldwide Developers Conferenceにおいて年に数回行われる基調講演で発表され、Appleのブランドを強化している。

広告

→詳細は「Appleの広告」を参照

• 1984 (広告)
• Think different
• Switch (広告キャンペーン)
• Get a Mac

ブランド提携

• Nike+iPod
• Apple Watch、エルメス

ブランディング

スティーブ・ジョブズによると、同社の名前は彼が果実食主義の食事療法をしていた時に訪れたリンゴ農園に着想を得たという。彼は「Apple」という名前を「楽しく、生き生きしていて、威圧的でない」と考えた^[1]。スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックはビートルズのファンであった^[2]。しかしAppleは、1968年にビートルズが設立したマルチメディア企業であるApple Corps Ltd.と名称およびロゴの商標問題を抱えていた。このことはApple Corps対Apple Computerにおける一連の訴訟と両社間の緊張につながった。こうした問題は2007年に訴訟が和解したことで終結した^[3]。

ロゴ

→「Appleのタイポグラフィ（英語版）」も参照

最初のAppleのロゴ
（1976年-1977年）^[4]

最初の公式ロゴ
（1977年-1999年）^[4]

現行のロゴ
（1998年-）^[4]

Appleの最初のロゴは共同創業者のロナルド・ウェインによってデザインされ、アイザック・ニュートンがリンゴの木の下に座っている様子を描いていた。これはすぐにRob Janoffによる虹色のAppleに置き換えられた。これは現在でも馴染み深い、かじられたリンゴの虹色のシルエットであった。Janoffはジョブズに「かじられた」ロゴのいくつかのモノクロ版を提示し、ジョブズはすぐに気に入った。しかしジョブズは会社を人間味のあるものにするため、ロゴをカラー化するよう強く求めた^[5]。ロゴにかじり跡があるのは、サクランボと混同されないようにするためであった^[6]。虹色のストライプはロゴをより親しみやすくし、Apple IIのカラーグラフィックスを表現するために考案された^[6]。このロゴは誤ってアラン・チューリングへのオマージュとされることがあり、かじり跡は彼の自殺方法への言及だとされてきた^[7]。しかしジャノフとAppleは、ロゴのデザインにチューリングへの敬意が込められているという説を否定している^[6][8]。 1999年8月27日（iMac G3の導入の翌年） ^[9]、Appleは正式に虹色の配色を廃止し、以前の虹色バージョンと形状がほとんど同じ単色ロゴの使用を開始した。Aquaをテーマにした単色ロゴは1998年から2003年まで使用され、ガラスをテーマにしたバージョンは2007年から2013年まで使用された^[10]。

ブランド・ロイヤルティ

The scenes I witnessed at the opening of the new Apple store in London's Covent Garden were more like an evangelical prayer meeting than a chance to buy a phone or a laptop.

—アレックス・ライリー、BBCの記者^[11]

Appleの顧客は同社の歴史初期から献身と忠誠で知られる評判を得た。1984年に『バイト』は次のように述べた^[12]。

There are two kinds of people in the world: people who say Apple isn't just a company, it's a cause; and people who say Apple isn't a cause, it's just a company. Both groups are right. Nature has suspended the principle of noncontradiction where Apple is concerned. Apple is more than just a company because its founding has some of the qualities of myth ... Apple is two guys in a garage undertaking the mission of bringing computing power, once reserved for big corporations, to ordinary individuals with ordinary budgets. The company's growth from two guys to a billion-dollar corporation exemplifies the American Dream. Even as a large corporation, Apple plays David to IBM's Goliath, and thus has the sympathetic role in that myth.

上海のApple Storeで新製品を待ちながら並ぶAppleの顧客

Appleエバンジェリストはある時期に同社によって積極的に起用されたが、それはこの現象がすでに確立された後であった。Appleのエバンジェリズム・マーケティングに携わったガイ・カワサキは、このブランドの熱狂性を「偶然に見つけたもの」と呼んだ^[13]。またジョナサン・アイブは2014年に「人々はAppleの製品と驚くほど個人的な関係を持っている」と説明した^[14]。Apple Storeの開店や新製品の発表には数百人規模の群衆が集まり、開店の前日から並ぶ者もいる^{[15][16][17][18]}。2006年に開店したニューヨークのApple Fifth Avenue店には非常に多くの来訪者が集まり、ヨーロッパから飛行機で訪れた者もいた^[19]。2017年6月には、シンガポールのオーチャードロードに新たに開店したApple Storeの中で、新婚のカップルが結婚写真を撮影した^[20][21]。この高レベルなブランド・ロイヤルティは批判や嘲笑の対象となり、「Appleのファンボーイ」という蔑称や、製品発売前の長蛇の列を揶揄する声も生まれている^[22]。2015年に流出した社内メモは、同社が長蛇の列を抑制し、顧客を公式ウェブサイトでの購入に誘導する計画を立てていたことを示唆している^[23]。

『フォーチュン』誌は2008年にAppleをアメリカで最も称賛される企業とし、2008年から2012年にかけて世界で最も称賛される企業とした^[24]。2013年9月30日、Appleはオムニコム・グループの「Best Global Brands」レポートでコカ・コーラを抜いて世界で最も価値のあるブランドとなった^[25]。ボストン・コンサルティング・グループは2005年以来毎年Appleを世界で最も革新的なブランドとしてランク付けしている^[26]。

『ニューヨーク・タイムズ』は1985年に「Appleは何よりもまずマーケティング会社である」と述べた^[27]。ジョン・スカリーも同意し、1997年に『ガーディアン』紙に対して「人々はテクノロジーについて語るが、Appleはマーケティング会社だった。Appleはその10年で最も優れたマーケティング会社だった」と語った^[28]。2002年にNetRatingsが行った調査によると、Appleの平均的な消費者は他のPC企業の消費者よりも裕福で高学歴である傾向にあった。この調査は、この相関関係が平均してApple製品が他のPC製品よりも高価であるという事実に由来している可能性があると示した^[29]。

Appleの忠実な顧客の献身についての質問に対して、ジョナサン・アイブは次のように述べている。

What people are responding to is much bigger than the object. They are responding to something rare—a group of people who do more than simply make something work, they make the very best products they possibly can. It's a demonstration against thoughtlessness and carelessness.^[14]

流通

Apple Store

→詳細は「Apple Store」を参照

Apple Fifth Avenueはニューヨークにある旗艦店

ワシントンD.C.カーネギー図書館にあるApple Storeは建物の歴史的外装を保持している

Appleは2001年5月19日にバージニア州マクリーンとカリフォルニア州グレンデールに最初の2つのApple Storeを開店し、その後数百の店舗へと拡大した。これらの店舗は当時のCEOであったスティーブ・ジョブズの主導で作られ、消費者がApple製品やインターネットにより親しむための場を提供するものであった。標準的な小売に加え、Apple Storeはジーニアスバーを通じて技術的支援を提供し、Apple製品を紹介するデモンストレーションを行っている^[30]。Apple Storeの創設は、長年試みては失敗してきたストア・ウィズイン・ストアの取り組みの後に実現した^[31]。製品の小売展示の改善の必要性を見たジョブズは1997年に小売プログラムの刷新に乗り出し、2000年にロン・ジョンソンを採用した^[31]。メディアは当初Appleが失敗すると予想していた^[32]が、同社の店舗は非常に成功し、近隣の競合店舗の売上を上回り、3年以内に年間売上10億ドルに到達し、当時としては史上最速の小売業者となった^[32]。その後、Appleは小売店の数と地理的範囲を拡大し、2017年12月時点で22か国に499店舗を展開した^[33]。堅調な製品売上によりAppleは2011年に世界で160億ドル以上の売上を記録し、小売上位に位置した^[34]。

2016年5月、当時Appleの小売担当上級副社長であったアンジェラ・アーレンツはサンフランシスコ・ユニオンスクエアで大幅に刷新されたApple Storeを公開した。この店舗は大型ガラス扉の入口、開放的な空間、再ブランド化された部屋を特徴とする。消費者は製品購入だけでなく、クリエイティブ分野に特化した知識を持つ「クリエイティブ・プロ」から助言を受けたり、木々に囲まれたジーニアス・グローブで製品サポートを受けたり、セッションや会議、地域イベントに参加できる^[35]。アーレンツは「Apple Storeをタウンスクエアのような、人々が自然に集い時間を過ごす場所にすることが目標だ」とコメントした^[36]。この新デザインは世界中のApple Storeに適用される予定であり^[37]、一部の店舗は一時移転や閉店を余儀なくされている^[38][39]。

多くのApple Storeはショッピングモール内にあるが、Appleはいくつかの目立つ場所に独立した「旗艦」店を建設している^[31]。同社は店舗のデザインや建設に関して、特にガラスの階段やキューブの使用に関してデザイン特許を取得し、建築賞を受賞している^[40]。Apple Storeの成功は他の家電小売店に大きな影響を与え、Apple Storeにおけるより高品質のサービスと製品が評価され、他の小売業者は顧客数、影響力、利益を失った^[41]。消費者の間でのAppleのブランド・ロイヤルティは、新規Apple Storeの開店や新製品発表の際に数百人規模の行列を生んでいる^{[15][16][17][18]}。ブランドの人気の高さからAppleには多数の求職応募が寄せられ、その多くは若い労働者である^[34]。Apple Store従業員は平均以上の賃金を得ており、教育や健康管理に対する補助金、製品割引を受けることができるが^[34]、キャリアアップの道は限られている^[34]。

ウェブサイト

Appleは1997年11月10日にバーチャルストアを開設し、Appleが運営する最初の小売流通プラットフォームとした。以前はApple製品は主にチェーン店によって販売されていたが、比較的低い手数料のためにMacの販売を渋ることもあった。バーチャルApple Storeが開設されると、既に成功していたバーチャルストアを運営していたデルの主要な競合相手となった。運営開始から最初の30日間で、バーチャルApple Storeは1200万ドルの収益を上げた。新製品を発表する際には、話題性を高めるためにリリース直前の数時間バーチャルストアを閉鎖することがあった^[42]。

Appleは2003年4月28日にiTunes Storeをリリースし、Apple製品向けに音楽を購入できるようにすることでバーチャル小売における役割を拡大した^[43]。

小売提携

市場での位置付け

App Storeのアプリ審査

Adobe Flash

→詳細は「AppleとAdobe Flashの論争」を参照

iOS 4.0 SDKのリリースに伴い、Appleは開発者規約を変更し、Appleが承認していない言語で元々書かれたプログラムがiPhoneで使用されることを禁止した。これは反競争的であると批判され^[44]、iPhoneアプリを作成するためのAdobe Animate（旧: Adobe Flash Professional）や他のIDEの使用が認められなくなった^[45][46][47]。『ニューヨーク・タイムズ』は、この方針が反競争的であるとするAdobeの社員の発言を引用した^[45][48]。2010年5月3日、『Ars Technica』、『ニューヨーク・ポスト』は、アメリカ連邦取引委員会（FTC）とアメリカ合衆国司法省（DOJ）がこの問題についてどちらの機関が反トラスト調査を開始するかを検討していると報じた^[49][50]。スティーブ・ジョブズは「Thoughts on Flash」と題する反論を投稿した^[51]が、AdobeのFlashプラットフォーム以外のサードパーティ開発ツールについては直接言及しなかった。

著作権侵害

2012年、中国国営メディアによると、複数の中国人作家グループが、自らの書籍の無許諾版を含むアプリをAppleが配信していたとして、20万ドル以上の賠償金をAppleから受け取った^[52][53][54]。

Google Voice

AppleはiPhoneユーザーがGoogle Voiceのアプリケーションを使用するのを妨げようとし、それをiPhone上で無効化したとして批判を受けた。AppleはこのGoogleアプリを承認せず、その理由としてアプリケーションがiPhone本来の機能を変更すると主張した。例えばGoogle Voiceをインストールすると、留守番電話がiPhoneの標準アプリケーションであるビジュアルボイスメールではなくGoogleのアプリケーションを通じて処理されるようになり、これがiPhoneのユーザーエクスペリエンスを「台無しにする」とされた。この決定はiPhoneの開発者やユーザーの間で物議を醸し、連邦通信委員会（FCC）は、AppleがユーザーにGoogle Voiceをインストールする能力を拒否した積極的な決定について調査を開始した。これはiPhoneのアプリをダウンロード・インストールする唯一の公式手段であるAppleのオンラインストアからの提供を拒否したためである^[55]。2010年11月時点で、Google VoiceはiPhoneで利用可能となった^[56]。

競合アプリの取り下げ

2015年11月、睡眠パターンに影響を与える可能性のあるブルーライトを除去するために夜間のディスプレイの色を調整する人気ソフトウェアのf.luxが、iOSデバイス向けに「サイドロード」を通じて提供された^[57]。これはXcode（Mac向け開発環境）をインストールし、ユーザーが手動でアプリをiOSデバイスに導入するもので、App Storeや公式の配布経路を経由せずに、f.luxが動作するために必要な権限を回避する方法であった^[58]。翌日、f.luxの開発者はAppleから「このような手法はDeveloper Program Agreementに違反する」との連絡を受け、サイドロード版アプリを利用不可とした^[59]。2016年3月、iOSのアップデートによってApple独自の「Night Shift」機能が実装され^[60]、2017年3月にはmacOSにも同機能が拡大された^[61]。iOSでの提供開始後、f.lux開発者は公式声明を発表し、Appleの取り組みを「大きなコミットメントであり重要な第一歩」と評価しつつも、自らを「この分野の最初の革新者でありリーダー」と強調した。また、Appleに対しf.luxをApp Storeで提供できるようにすることを求め、「睡眠と時間生物学に関する研究をさらに進めるという使命」を支援するよう呼びかけた^[62][63]。macOS版の提供後、2017年3月にはf.luxの開発者がフォーラム投稿で、AppleのmacOS「Night Shift」は実際には青色光を十分に減少させず、効果が限定的であると指摘した。これは、大幅に色を抑制するf.luxアプリとは対照的であった^[64]。

同様の批判は2019年にも現れた。この年、Appleがペアレンタルコントロールや端末利用追跡に関するアプリに対して変更要求や削除を迫ったと報じられた。後者はiOS 12で「スクリーンタイム」として導入されていた機能である。ニューヨーク・タイムズは、Appleが「最も多くダウンロードされたスクリーンタイム関連・ペアレンタルコントロールアプリの11本から17本を削除した」と報じた^[65]。Appleはこうした要求を正当化し、これらのアプリがモバイルデバイス管理機能を使用してシステムレベルのアクセスを取得していたことを問題視した。これは企業環境以外では不適切であり、特に子供が利用するデバイスにとってはプライバシー上の重大なリスクだと主張した^[66][67]。

App Storeの手数料

iOS向けアプリケーションのうち、機能や会員制利用に対して支払いが必要なものは、App Storeを通じてAppleのiTunes決済システムを利用しなければならず、そのすべての取引に対してAppleは30%の手数料を得る^[68][69]。この方針は、各取引ごとに過剰な額を徴収しているとして批判されており、典型的にクレジットカード会社が要求する1%から5％の手数料^[70]や、オンライン市場で要求される1%から10％の手数料と比較されている^[71]。一部の専門家は、App Storeの手数料をレントシーキング（利益の独占的取得目的の行為）に例えている。

Spotify

2015年7月、音楽ストリーミングサービスのSpotifyはiOS加入者に対し、App Storeの課金によるサブスクリプションを解約して有効期限が切れるのを待った後、Spotifyのウェブサイト経由で有料会員に入会するようメールで促した。これはApp Storeの30%取引手数料を回避し、サービスをより安価に提供するためであった^[72]。約1年後、『Recode』によればSpotifyの法務責任者ホラシオ・グティエレスは当時のApple法務責任者ブルース・スーウェルに対し「AppleがSpotifyとその顧客に甚大な損害を与えている」と書簡を送ったと報じられた。これはAppleが「新規ユーザーの獲得やサブスクリプション販売をアプリ上で行う場合、iTunes決済を利用する必要がある」という「ビジネスモデル規則」を理由に、Spotifyアプリの新バージョンを承認しなかったためである。グティエレスは一連の出来事を厳しく批判し、「今回の件はアメリカとEU競争法の観点から深刻な懸念を引き起こす」「AppleはSpotifyをiOS上で、そしてApple Musicの競合として排除・弱体化させようとする懸念すべき行動パターンを続けている」と述べ、App Storeの承認プロセスを「競合を害するための武器」と表現した^[73]。これに対し『バズフィード』が報じたスーウェルの反論では、「全ての開発者に適用している規則の例外を求め、我々のサービスについて憶測や半ば真実の情報を公にしているのは遺憾だ」と述べ、「我々のガイドラインは、ゲーム開発者、電子書籍販売者、動画配信サービス、デジタル音楽配信業者といった競合関係にあるか否かを問わず全てのアプリ開発者に平等に適用される」と付け加えた。さらに「Apple Musicを導入する際に、我々の行動や規則は変えておらず、反競争的行為を裏づけるものは何もない」と主張した^[74]。『BGR』のザック・エプスタインは、Spotifyが怒っているのは「Spotifyが非営利団体ではなく、他社のサービス上で自由にアプリを扱えるわけではないからだ」と論じ、「Appleが数千万人規模の潜在加入者へのアクセスをSpotifyに提供していることに対して報酬を受けるべきではない、というのはおかしい」と結んだ^[75]。 2016年8月、SpotifyはApple Musicの独占配信を行ったアーティストを「処罰」し、サービス上での露出を減らし、プロモーション機会を減じた^[76][77]。2017年5月、『フィナンシャル・タイムズ』は、Spotifyを含む複数の企業が欧州連合に書簡を提出し、一部のOS、アプリストア、検索エンジンが「ゲートウェイ」から「ゲートキーパー」になり、その「特権的地位」を乱用していると非難したと報じた^[78]。数日後、ロイターは欧州連合が大企業と中小企業間の対立に対処するため、新たな法律や規制を準備していると報じた。特に「不公正な取引慣行」に関してである^[79][80]。さらに2017年12月には再び書簡が送付され、Appleが「定期的に」その地位を乱用していると非難し、規制当局に「公平な競争環境」を保証するよう要請した^[81][82]。

フォートナイト

→詳細は「Epic Games対Apple訴訟」を参照

2020年8月13日、Epic GamesはフォートナイトにAppleのApp Store手数料を回避するための直接支払いシステムを追加した。これに対しAppleは同ゲームをApp Storeから削除し、新規プレイヤーがダウンロードできないようにした^[83]。同日、Epic GamesはAppleを批判する動画『Nineteen-Eighty-Fortnite』を公開した^[84]。これはAppleの広告『1984』と類似した内容であった。同時にEpicはAppleに対して差止命令を求める訴状を提出した^[85]。2020年9月、Epic Gamesと他13社はアプリの公正連合を立ち上げ、アプリストアにおけるアプリの取り扱い条件を改善することを目指した^[86]。

iTunes

→詳細は「iTunes」を参照

Appleは、音楽のオンライン販売をめぐって欧州連合で論争となった。単一市場であるEUでは、顧客は任意の加盟国から商品やサービスを自由に購入できる。しかしiTunes Storeは、顧客の支払い情報が発行された国にコンテンツ購入を制限することで消費者や音楽購入者をiTunes専用のサイトに誘導し、その結果一部の国のユーザーはより高い価格を支払わざるを得なかった。2004年12月3日、イギリスの公正取引庁はiTunes Music StoreをEU自由貿易法違反として欧州委員会に付託した。AppleはEU法に違反しているとは考えていないとコメントしたが、音楽レーベルや出版社から与えられた権利に法的な制限があったと主張した。『PC World』は、「欧州委員会の主な標的はAppleではなく、各国単位で活動し、Appleに国ごとのストアを提供させる以外の選択肢をほとんど与えない音楽会社や音楽権利機関であるように思われる」と評した^[87]。

レコード会社との共謀疑惑

2015年5月、アメリカ司法省と連邦取引委員会（FTC）が、Appleが主要なレコード会社と共謀して、ユーザーが無料広告付きの音楽ストリーミングを利用しにくくするよう働きかけているとして調査を開始したと報じられた。これはユーザーをサブスクリプション制のBeats Musicサービス再開へと誘導する目的があるとされる。特に、Appleが競合サービスであるSpotifyの無料プランからレコード会社に楽曲を撤回するよう圧力をかけ、ユニバーサル・ミュージック・グループにはYouTubeのライセンス料に相当する金額を支払う代わりにSpotifyから楽曲を引き揚げさせたとの疑惑があった^[88][89]。

メディア対応

Appleは自社の製品や実務に関して秘密主義を保ち、製品発表に関する情報を厳格に管理している。また、情報漏洩者を突き止めるため、あるいはメディアにAppleの現在の動向を不確かにさせるために、意図的に誤情報を流すこともある^[90]。同社は開発中の製品へのアクセスや作業の流れを厳しく管理し、漏洩が起きないように必要な情報のみを社員に提供している^[91]。Appleの秘密主義はスティーブ・ジョブズの孤高な性格に由来するとされ、「彼は常に事柄を胸の内に秘め...ごく少数の人にしか打ち明けなかった」と言われている^[90]。

Appleは最も重要な製品や節目に関してのみ広報活動を行い、記者にはAppleが強調したい変化に焦点を当てさせるため、完成した製品についての情報が提供される^[92]。

→「Stevenote」も参照