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DNMT3A
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DNMT3A(DNA (cytosine-5)-methyltransferase 3 alpha)は、DNA中の特定のCpG配列のシトシンに対するメチル基の転移を触媒する酵素であり、ヒトではDNMT3A遺伝子にコードされる[5][6]。この過程はDNAメチル化と呼ばれる。
DNMT3AはDNAメチルトランスフェラーゼファミリーのメンバーであり、他の主要なメンバーにはDNMT1、DNMT3Bがある[5][6]。
この酵素はde novo DNAメチル化を担い、エピジェネティックなメチル化パターンを正確に複製する維持DNAメチル化(maintenance DNA methylation)とは区別される。de novo DNAメチル化は両親から子孫へ受け継がれるメチル化パターンに変更を加えるもので、細胞分化や胚発生、転写調節、ヘテロクロマチン形成、X染色体不活性化、ゲノムインプリンティング、ゲノム安定化などの過程に必要不可欠な修飾である[7]。
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遺伝子
ヒトのDNMT3A遺伝子は2番染色体の2p23に位置し、23個のエクソンから構成され、約130kDaのタンパク質をコードする[8]。ヒトとマウスホモログ間ではアミノ酸配列の98%が同一である[6]。
マウスではスプライシングによって、Dnmt3a1とDnmt3a2という2つの主要なアイソフォームが生じる。これらのアイソフォームは異なる細胞種に存在している[9]。
タンパク質構造
DNMT3Aは、Pro-Trp-Trp-Pro(PWWP)ドメイン、ATRX-DNMT3-DNMT3L(ADD)ドメイン、そして触媒を行うメチルトランスフェラーゼドメイン、という3つの主要なタンパク質ドメインから構成される。ADDドメインはメチルトランスフェラーゼドメインの阻害因子として機能し、ヒストン H3のメチル化されていないリジン4番残基(H3K4me0)へ結合することで阻害が解除される[9]。このように、このタンパク質にはヒストンを標的としたメチル化制御機構が存在するようである。メチルトランスフェラーゼドメインは高度に保存されており、原核生物との間でさえも保存性がみられる[10]。
機能
DNMT1はDNAの維持メチル化を行うのに対し、DNMT3AとDNMT3Bは維持メチル化(DNMT1の誤りの修正)とde novoメチル化の双方を行う。DNMT1をノックアウトしたヒトのがん細胞でも、DNAのメチル化パターンは遺伝し維持される[11]。DNMT3はメチル化されていないDNA基質とヘミメチル化(一方の鎖のみのメチル化)基質に対し同等の親和性を示すが[11]、DNMT1はヘミメチル化DNAに対して10–40倍の選択性がみられる[12][13]。これらのことからDNMT3は非メチル化DNAとヘミメチル化DNAの双方に結合し、維持メチル化とde novoメチル化をどちらも行っていると考えられる。
de novoメチル化はDNMT3Aの主要な活性であり、導入部で述べたさまざまな過程に必須である。ゲノムインプリンティングは哺乳類で単為生殖を防ぐ役割があり[14]、有性生殖を強制するとともに遺伝や系統発生にも複数の影響を与える。DNMT3Aはゲノムインプリンティングに必要不可欠である[15]。
動物研究
Dnmt3aの発現は老齢マウスで低下しており、長期記憶形成の低下を引き起こす[16]。
Dnmt3aをノックアウトしたマウスでは、造血幹細胞の自己複製に関係する多くの遺伝子が発現上昇しており、その一部では分化過程での適切な抑制がみられなくなる[17]。このことは、造血幹細胞の分化が抑制され、代わりに自己複製的な細胞分裂が増加していることを示唆している。事実、Dnmt3aをノックアウトした造血幹細胞の分化は、自己複製に関与するβ-カテニンをコードするCtnb1をさらにノックダウンすることによって部分的にレスキューされることが判明している[9]。
臨床的意義
この遺伝子はがんで頻繁に変異しており、がんゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas)プロジェクトで特定された127の高頻度変異遺伝子の中に含まれている[18]。DNMT3Aの変異は急性骨髄性白血病(AML)で最も多くみられ、シーケンシングが行われた症例の25%以上で変異が生じている。最も高頻度で変異が生じているのはアルギニン882番残基で、この変異によってDNMT3Aは機能を喪失する[19]。DNMT3Aの変異は全生存率の低さと関係しており、AML細胞が致死的な疾患を引き起こす能力に重要な影響を与えていることが示唆される[20]。DNMT3Aに変異を有する細胞株ではトランスクリプトームに不安定性が生じ、変異を持たない同じ細胞株と比較してスプライシングのエラーがかなり多く生じている[21]。この遺伝子の変異は、過成長を呈する疾患であるTatton-Brown-Rahman症候群とも関係している。
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相互作用
DNMT3Aは次に挙げる因子と相互作用することが示されている。
モデル生物
DNMT3Aの機能の研究にはモデル生物が利用されている。Dnmt3atm1a(KOMP)Wtsiと呼ばれるコンディショナルノックアウトマウス系統がWellcome Trust Sanger Instituteで作出されている[28]。オスとメスのマウスに対し規格化された表現型スクリーニングが行われ[29]、欠失の影響が決定されている[30][31][32][33]。また、詳細な免疫学的な表現型決定も行われている[34]。
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出典
関連文献
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