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SNAI2
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SNAI2(snail family transcriptional repressor 2)またはSLUGは、ヒトではSNAI2遺伝子によってコードされている転写因子である。SNAI2は上皮間葉転換、細胞分化(原腸形成時など)、細胞遊走を促進する[5][6][7]。
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機能
SNAI2遺伝子にコードされているSNAI2タンパク質は、Snailスーパーファミリーに属するC2H2ジンクフィンガー型転写因子である。SNAI2はEボックスモチーフに結合する転写リプレッサーとして機能し、乳がんにおいてE-カドヘリンの転写を抑制している可能性が高い。このタンパク質は上皮間葉転換に関与しており、また抗アポトーシス活性を有する。胚発生時には、他の因子(FOXD3、SOX9、SOX10、BMPなど)とともに神経堤細胞の分化と遊走を調節している。この遺伝子の変異は孤発性の神経管欠陥症例と関連している可能性がある[7][8]。
SNAI2は線虫Caenorhabditis elegansの抗アポトーシスタンパク質Ces-1と構造的に類似しており、発生中の胚や成体において細胞死の負の調節因子として機能している[9][10]。
SNAI2は移動前の神経堤細胞においてE-カドヘリンの発現をダウンレギュレーションしている。SNAI2は間葉系表現型を誘導し、発生中の胚における中胚葉の原腸形成を可能にしている[9][11]。
神経堤細胞の形成と遊走の調節において、SNAI2はPRC2とともに機能している。神経堤細胞は、顔面の構造、神経、色素細胞の形成に寄与する細胞集団である。PRC2はEZH2、EED、SUZ12からなるタンパク質複合体であり、ヒストンに抑制性修飾(H3K27me3)を付加することでクロマチン修飾による遺伝子サイレンシングを行う。これらの構成要素は神経や神経堤組織で活発に発現しており、これらの領域の正常な発生に必要不可欠である[12]。EZH2の喪失によって、SNAI2、SOX9、SOX10など重要な神経堤遺伝子の発現が低下し、細胞遊走は損なわれ、頭蓋顔面の欠陥が引き起こされる。SNAI2はEZH2と物理的に相互作用していることが示されており、PRC2を特定の標的遺伝子へガイドしている[12]。そうした重要な標的の1つがE-カドヘリン遺伝子であり、神経堤細胞が上皮間葉転換を行い遊走するためにはE-カドヘリンの抑制が必要である。SNAI2とEZH2はE-カドヘリン遺伝子のプロモーターに共結合することが示されており、EZH2が存在しない場合にはSNAI2は遺伝子を効果的にサイレンシングすることができない。その結果、上皮間葉転換は行われず、細胞の移動が低下する[12]。
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臨床的意義
SNAI2はヒトの組織で幅広く発現しているが、末梢血白血球、成体の肝臓、胎児と成体の脳組織では発現していない[10]。SNAI2は乳がんや白血病においてE-カドヘリンのダウンレギュレーションに関与しており、カドヘリンの発現プロファイルを変化させることで間葉系表現型を支えている[10][13]。がん細胞ではSNAI2は浸潤性とは無関係に発現しているが、間葉系表現型の維持によって腫瘍細胞の転移を可能にしている[9][11][10]。ニワトリ胚を用いたSNAI2ノックアウトマウスモデルでは中胚葉や神経堤の剥離の阻害が示され、機能獲得変異では神経堤形成が増大するようである[9]。一部の動物では、SNAI2の変異は原腸形成段階での致死と関連している[9]。
相互作用
出典
関連文献
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