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近現代ヨーロッパの中等教育機関 ウィキペディアから
ギムナジウム(ドイツ語: Gymnasium)は、ヨーロッパの中等教育機関。標準ドイツ語では、ギュムナーズィウム(ドイツ語発音: [gʏmˈnaːziʊm])の発音がより近い。日米の「単線型」教育制度に対する、主に中央ヨーロッパの「複線型」教育制度のいわば根幹を成す存在ともされる。国によって微妙に名称が異なるが、本稿では一括してギムナジウムとする。
高等教育への進学準備を目指す課程であり、イギリスのグラマースクール、シックスフォームカレッジに相当する。日本でいう中高一貫教育に近い。
例外として、ポーランドにて1999年から2019年の間存在していたギムナジウム(Gimnazjum)は、13-16歳を対象とする3年課程であり義務教育に位置づけられる。
古代ギリシアのギュムナシオン(gymnásion)は、若い男性が身体や知性を磨くための場所であった。体育がとかくその前面に出て強調されるため、屋内体操場などと訳される場合もある。そこでは、もっぱら全裸でトレーニングが行われたため、ギムナジオンという施設の名前は、「裸で体操をする」という意味の"gymnázesthai"から由来したという。その名残として「ギュムナズィウム」とも呼ばれる。
ドイツ語では、体育という言葉も同じ由来のGymnastikを今も使っている。日本のボクシング、レスリングなど体育練習場を指す「ジム」も、同じ由来である。
ドイツにおいては、主に大学への進学を希望する子供たちが進学する8年制(2003年までは9年制)の学校であり、G8「ゲー・アハト」と呼ばれ、日本でいう中高一貫教育にあたる。教育内容は学校ごとにそれぞれ異なり、ギリシア語・ラテン語・ヘブライ語などの古典語や、英語・フランス語などの近代語、理数系の教科に重点を置いたものなど、いくつかのタイプがある。ギムナジウムは大学入学を目指すための学校で、それはつまりアビトゥーア合格を目指すということでもある。旧東ドイツ(DDR)には、ドイツ統一後の1990年までギムナジウムはなく、拡張型上級学校(Erweiterte Oberschule :EOS)がその代替となっていた。
ギムナジウムの教育区分は、前期6年間(うち2年間は観察指導段階)および後期3年間に区分される。特に後期3年間を「ギムナジウム上級段階」という。
ギムナジウムへの進学は、中学入試のような筆記試験が行われるのではなく、教育権者(保護者)との相談の上、基礎学校からの進路に関する所見(ギムナジウムへの進学が適切である旨の所見)に基づいて決定される。ただし、1950年代までのギムナジウム進学については試験授業が行われていた。
ギムナジウムの前期6年間の課程(グレード5-10)では、ドイツ語、数学、第一外国語(一般的には英語)、第二外国語(一般的にはフランス語、またはラテン語、グレード7から開始)、歴史、政治、地理(日本の地学に相当)、物理、化学、生物、音楽、美術、体育、宗教(倫理に代替可能)などの必修科目の授業が圧倒的に多く、選択必修科目はグレード9から開設され、選択必修科目は第三外国語、社会科系の科目、理科系の科目、芸術系の科目が挙げられる。日本の中等教育学校の第1学年-第4学年の授業内容と比較した場合、ギムナジウムでは経済、技術、家庭の授業時間数が少なく、逆に日本の中等教育学校の第1学年-第4学年では第二外国語および第三外国語の授業がほとんど行われていない[1]。
ギムナジウム上級段階(グレード11-13,日本の大学教養課程に相当)では、修了時に一般的大学入学資格であるアビトゥーア(Abitur)が取得できる。この3年間の教育課程は次の通りである。
ギムナジウムの教員は大学において養成され、教員養成期間は8-10学期(4-5年)となっている。なお、ドイツの大学は、日本の旧制大学(現在の学部・大学院修士課程一貫教育)レベルであり、卒業時点の学位がディプローム(Diplom)、またはマギステル(Magister、日本の修士に相当)である。
エーリッヒ・ケストナーの小説にしばしばギムナジウムが登場する。このほか、24年組と呼ばれる漫画家たちによる少女漫画にはギムナジウムを舞台としたものが見られ、ギムナジウムものと呼ばれている[4]。例えば、萩尾望都の代表作である『ポーの一族』中の一篇「小鳥の巣」や『トーマの心臓』、「11月のギムナジウム」において取り上げられている[5]。
オーストリアには、Allgemeinbildende höhere Schulen(AHS, 英語:Academic secondary schools)と呼ばれる大学進学準備校が存在し[6]、ギムナジウムと呼ばれる。AHSはギムナジウム、実科ギムナジウム、経済実科ギムナジウムに大別される。
AHSの教育区分は、グレード5-8(4年間)の下級段階(Unterstufe, 2Aレベル)と、グレード9-12(4年間)の上級段階(Oberstufe, 3Aレベル)に分かれる[6]。
最終学年では卒業試験が行われ、これに合格すると、無試験・無選抜の希望者全入の大学入学資格(Matura)が賦与される。この卒業試験の方式は3つあり、生徒はこれらの3つの中から1つを選択する。
AHSの教員は、修業年限が4年以上である総合大学において養成される。AHS教員養成は2教科について行われる。オーストリアの大学は卒業時点の学位がディプローム(Diplom)、またはマギステル(Magister、日本の修士に相当)である。
スイスには、主にドイツ語圏の州立学校(Kantonsschule = 「カントンスシューレ」)として、いくつかのギムナジウムがある(フランス語圏に関しては後述)。
フランスでは、スイスのフランス語圏も含めて、同等の学校は一般的にリセ(Lycée)と呼ばれる。また、ギムナジウムは、フランス語風のジムナーズ(Gymnase)と呼ばれるか、時にリセとも呼ばれる。
かつてのリセはギムナジウムと同様の体制であったが、日本の小学6年から中学に相当する前期中等教育機関のコレージュ創設後は、3年制の後期中等教育期間となっている。
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