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1974年のアメリカのホラー映画 ウィキペディアから
『悪魔のいけにえ』(あくまのいけにえ、原題: The Texas Chain Saw Massacre)は、1974年のアメリカのホラー映画。
悪魔のいけにえ | |
---|---|
The Texas Chain Saw Massacre | |
監督 | トビー・フーパー |
脚本 |
キム・ヘンケル トビー・フーパー |
製作 |
トビー・フーパー ルー・ペレイノ |
製作総指揮 | ジェイ・パースレイ |
出演者 |
マリリン・バーンズ アレン・ダンジガー ポール・A・パーテイン ウィリアム・ヴェイル テリー・マクミン エドウィン・ニール ジム・シードウ ガンナー・ハンセン ジョン・ドゥガン |
音楽 |
ウェイン・ベル トビー・フーパー |
撮影 | ダニエル・パール |
編集 |
ラリー・キャロル サリー・リチャードソン |
配給 |
ブライアンストン・ピクチャーズ 日本ヘラルド映画 |
公開 |
1974年10月1日 1975年2月1日[注釈 1] |
上映時間 | 83分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $83,000 |
興行収入 | $30,859,000[1] |
次作 |
悪魔のいけにえ2 飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲 |
トビー・フーパーが監督、製作、キム・ヘンケルと共に脚本を務めた。出演はマリリン・バーンズ、ポール・A・パーテイン、エドウィン・ニール、ジム・シードー、ガンナー・ハンセン。
フーパーはこの映画を14万ドル以下(インフレーション調整後70万ドル)で製作[2]し、撮影地であるテキサス州中部を中心に、比較的無名の俳優を起用した。限られた予算の中で、できるだけ早く撮影を終え、機材のレンタル費用を抑えるために、フーパーは週7日、長時間の撮影を余儀なくされた。
暴力的な内容のため、フーパーは配給会社を探すのに苦労したが、最終的にはブライアンストン配給会社のルイ・ペラーノがこの作品を手に入れた。フーパーはPGレーティングを得るために画面上の流血の量を制限したが、アメリカ映画協会(MPAA)はRレーティングを付けた。
いくつかの国では上映が禁止され、その暴力性に対する苦情を受けて多数の映画館が上映を中止した。当初、批評家からは賛否両論の評価を受けたが、収益性は高く、米国内興行収入は3,000万ドル以上、2019年現在でおよそ1億5,080万ドル以上に相当し、1974年には1,650万枚以上のチケットを販売した。
電動工具を凶器として使用すること、犯人を顔のない大きな人物として描くこと、犠牲者を殺害することなど、スラッシャーというジャンルに共通するいくつかの要素を生み出した作品として知られている。この作品は、続編、前作、リメイク版、コミック、ビデオゲームなど、レザーフェイスとその家族の物語を続けるフランチャイズにつながった。
1973年8月、テキサス州では墓荒らしや異常な殺人事件が多発していた。そんな中、サリー・ハーデスティとその兄フランクリンを含む5人の男女は、帰郷がてら墓の無事を確かめるためにテキサス州を訪れる。
一行はその道中で一人のヒッチハイカーを拾うが彼はナイフで自傷行為に及び、またフランクリンに切りかかるなどの異常な行動を起こした。ヒッチハイカーを車から追い出して、ガソリンスタンドに辿り着いたもののガソリンは売っておらず、一行は帰りの燃料に不安を抱えた状態でハーデスティ家の実家跡に辿り着く。
一行から別れて川遊びに向かったカークとパムのカップルは、近くに自家発電装置を使う屋敷を発見。カークは屋敷の主にガソリンを分けてもらおうと考えたが、屋敷の奥から人面皮を被った怪人・レザーフェイスが現れて彼をハンマーで撲殺。カークの後を追って屋敷に入ったパムは、レザーフェイスの手でミートフックへ吊るされてカークの死体が切り刻まれるところを見せつけられる。さらには、二人を探しに来たサリーの恋人ジェリーも、冷凍庫へ閉じ込められ瀕死状態のパムを見つけた途端に撲殺される。
日没後、車に残っていたハーデスティ兄妹は仲間たちを探しに向かうが、闇の中からチェーンソーを構えたレザーフェイスが現れ、フランクリンが惨殺される。サリーは森やレザーフェイスの屋敷を潜り抜けながら必死に逃げ惑った末にガソリンスタンドへ駆け込むが、店主の老人は彼女を助けるどころか袋詰めにしてレザーフェイスの屋敷へ連行した。一連の墓荒らしと殺人事件はレザーフェイス、老人、そしてヒッチハイカーらソーヤー一家の仕業だったのだ。
サリーはソーヤー一家の異常な食卓に連れていかれ、ミイラのような姿で生き永らえる一家の長・グランパの手で撲殺されそうになるが、一瞬の隙を突いて脱出する。ヒッチハイカーとレザーフェイスが追撃してきたものの、ヒッチハイカーはサリーともみ合っている最中に通りかかったトラックに轢かれて絶命。
さらにサリーは、その場を通りかかった別の車の荷台へ乗り込むことに成功する。かろうじて生き延びたサリーは狂ったようにレザーフェイスを嘲け笑い、彼女を取り逃したレザーフェイスは朝焼けの中でチェーンソーを振り回す。
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
---|---|---|---|
東京12ch版 | BD版 | ||
サリー・ハーデスティ | マリリン・バーンズ | 泉晶子 | 坂井恭子 |
ジェリー | アレン・ダンジガー | 石丸博也 | 中林俊史 |
フランクリン | ポール・A・パーテイン | 秋元羊介 | 駒谷昌男 |
カーク | ウィリアム・ヴェイル | 田中秀幸 | 小松史法 |
パム | テリー・マクミン | 高橋ひろ子 | 森夏姫 |
ヒッチハイカー[注釈 3] | エドウィン・ニール | 青野武 | 青山穣 |
老人(コック)[注釈 4] | ジム・シードウ | 坂口芳貞 | 池田ヒトシ |
レザーフェイス | ガンナー・ハンセン | 福士秀樹 | 中林俊史 |
グランパ(じい様) | ジョン・ドゥガン | 小野丈夫 | 越後屋コースケ |
カウボーイ[注釈 5] | ジェリー・グリーン | 郷里大輔 | |
アナウンサー | 蟹江栄司 | ||
ナレーター | ジョン・ラロケット | 青山穣 | |
トラックの運転手 | エド・グイン | ||
その他 | 関雄 森永麻衣子 | ||
演出 | 松川陸 | 伊達康将 | |
翻訳 | 大野隆一 | 下大澤百合子 | |
制作 | ザック・プロモーション | 東北新社 | |
初回放送 | 1979年7月24日 『火曜洋画劇場』 |
監督・脚本・制作のトビー・フーパーはこの作品により全米及び英国への進出を果たす。
製作費は約4000万円。公開後から2006年9月現在まで、世界中で総額60億円以上の配給収入を上げている。なお配給元のブライアンストン社はこのフィルムと上映権利を約1億円で購入した[注釈 6]。
この作品は、1957年にウィスコンシン州プレインフィールドで実際に発生したエド・ゲインによる猟奇殺人事件をモデル[注釈 7]にしたということが通説になっているが、フーパー本人はこの事件についてはドキュメンタリー映画アメリカンナイトメアのインタビューにて「人間の皮でランプシェードを作った男」の怪奇譚を「子供の頃に叔父から何度も聞かされ強く印象に残っていた」程度であり本作との直接的な影響は無かったが、ある評論家がエド・ゲイン事件に似通っている部分があると評したのがこのような説の流れた端緒で、後々に事件の存在を知ったとされる。映画冒頭部分のテロップ「これは真実の物語である」は少しでも観客の恐怖を煽ろうと後づけで追加した演出であり、上記事件との関連はなかったが、別段否定もせず傍観していたところ、通説のほうが流布してしまい以降その通説が定着することになったという[3]。
主な撮影は、テキサス州ラウンドロック近郊のクイック・ヒル・ロード(Quick Hill Road)に位置する、1900年代初頭に建てられた農家の建物で行われた[4]。
作品の山場でもあるソーヤー家の晩餐場面は、ほぼ撮影最終日にあたり、演者・スタッフ総出で連続撮影時間が丸一日超にも及ぶ撮影となった。外気温は40度近くに迫り、締め切った屋内でテーブル上の料理は照明の熱で見る間に腐敗臭を放ち、さらに撮影進行上、衣装も洗濯できなかったため室内は悪臭たちこめる最悪の状況だったとされる。
作品独特の粗い画像が物語全体の雰囲気を醸し出しているが、これは演出効果や技術的なものではなく、製作予算が低かったために[注釈 8]通常の映画撮影に使われる35mmフィルムではなく、購入も現像も安価で済むサイズが一回り小さい16mmフィルムで撮影したものをスクリーンに合わせて映像のサイズを拡大したためであった。
結果的にこれがフーパーの手法と相まってプラスに働き印象に残る映像となる。ただ本人にとっては本意ではなかったようで、撮影に映画用のフィルムが使えなかったことに加え、マスターフィルムの形式から(コメント当時は)高画質版のリリースが物理的に不可能な点を残念がっていた。
公開当初はその残酷性の高さゆえに「決して観てはいけない」と学校などで告知される事態が発生し、全米各州で上映禁止処分が下った。さらに、ドイツなど一部の国では殺人・喰人シーンなど残酷な場面をカットしたバージョンしか鑑賞が許されなかった時期があった。
日本では1998年中期から2007年初頭までの間、権利問題によりソフト化は叶わず、それ以前に発売されたDVD(1997年、ビームエンタテインメント(現:ハピネット)より発売)にプレミア価値が付けられた。
2004年9月にワーナー・ブラザースがDVDを再発売させようとしたが権利の取得に失敗し断念。しかしデックスエンタテインメントから2007年6月8日に再発売が決定。通常盤のDVDは予定通り発売されたが、テレビ放送時の音源を用いた短縮日本語吹替版の収録に関し制作のキム・ヘンケルから異議が唱えられるトラブルがあったために、当該吹替版を収録する予定であった豪華盤「コレクターズBOX」の発売は7月13日に遅れることとなった。なお当該「コレクターズBOX」においては短縮版ではなく音声の一部に吹替音源を充てた劇場公開版が収録された。
なお、DVDの再発を記念し、渋谷の映画館シアターN.渋谷[5]にて2007年3月17日から4週間、本作がレイトショーにて再公開された。
2008年8月22日にはコレクターズBOXに以前カプコンからセットで販売されたドキュメンタリー『ファミリー・ポートレイト』と『ショッキング・トゥルース』が収録された「プレミアム・コレクションDVD-BOX」が発売。ポストカードや復刻版のパンフレットが封入された。
2009年には日本版BDが発売された。
公開から40周年にあたる2014年、4Kリマスターが施された『40周年記念版』が制作され、2015年には日本でもBDが発売されるとともにリバイバル上映が行われた。
続編として『悪魔のいけにえ2』(The Texas Chainsaw Massacre 2、1986年)、『悪魔のいけにえ3 レザーフェイス逆襲』(Leatherface: Texas Chainsaw Massacre III、1990年)、『悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス』(The Return of the Texas Chainsaw Massacre、1994年)が製作された。さらに2004年に製作30周年を記念して『The Texas Chainsaw Massacre 5』と名付けられた5作目の製作がトビー・フーパー監督、製作総指揮の下でスタートされたが、脚本が完成した時点で資金面の理由により断念された。
2013年には『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』(Texas Chainsaw 3D)のタイトルで新作が公開された。
2018年、ジュリアン・モーリー及びアレクサンドル・バスティロ監督による前日譚『レザーフェイス -悪魔のいけにえ』(Leatherface)が5月12日より日本で公開された。奇しくも本作がトビー・フーパー最後のプロデュース作品となった。
2022年には『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』(Texas Chainsaw Massacre)が、Netflixで独占配信された。
マイケル・ベイの製作会社であるプラチナム・デューンズがリメイク権を獲得し、マーカス・ニスペル監督で『テキサス・チェーンソー』(The Texas Chainsaw Massacre)が2003年に公開された。さらに2006年にはジョナサン・リーベスマン監督による前日譚『テキサス・チェーンソー ビギニング』(The Texas Chainsaw Massacre: The Beginning)が公開された。
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