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アルファプロテオバクテリア綱
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アルファプロテオバクテリア綱(アルファプロテオバクテリアこう、Alphaproteobacteria)は細菌ドメインのPseudomonadota門の綱の一つである[19]。生態は光合成細菌から植物共生菌まで非常に多様である。ミトコンドリアの祖先にあたる生物が属していたグループとしても知られ、アルファプロテオバクテリア綱の進化についての研究は真核生物の起源を探る上で重要である。グラム陰性であるが、細胞内寄生種はペプチドグリカンを持たず、したがってグラム染色試験での結果は陽性になることもある[20]。ベータプロテオバクテリアおよびガンマプロテオバクテリアと近縁である。
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特徴
アルファプロテオバクテリア綱は非常に多様な生物群である。ある属は光栄養細菌であり、その一部はC1化合物を代謝する(例: Methylobacterium spp.)。またある属は植物共生細菌であり(例: Rhizobium spp.)、ある属は節足動物の内生菌であり(Wolbachia属)、ある属は細胞内侵襲性の感染菌である(例: Rickettsia属)。すでに絶滅したが、アルファプロテオバクテリア綱の細菌にはかつて真核生物の細胞に侵入して現在のミトコンドリアとなったプロトミトコンドリアがいた(細胞内共生説)[21]。Rhizobium radiobacter(過去の Agrobacterium tumefaciens)は植物細胞に外来DNAを転移させるために用いられる[22]。Pelagibacter ubiqueといった好気性の非酸素光栄養細菌はアルファプロテオバクテリア綱であり、外洋の微生物コミュニティの10 %以上を構成すると考えられている海中プランクトンである。
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下位分類(目)
要約
視点
アルファプロテオバクテリア綱の系統関係については大まかな合意はあるものの、いくつかの目 (order) については議論が続いている(例えばペラジバクター目、 リケッチア目、ホロスポラ目)[21]。他の細菌や古細菌と同様、その分類や系統関係については現在も絶えず改定が続いている[23][24]。NCBIのデータベースでは現在20の目が設定されている[25]。一方、GTDBでは35の目が設定されている[26]。分子系統解析とアルファプロテオバクテリア綱メンバーのゲノムに特徴的なインデルの分析[27]により、アルファプロテオバクテリア綱の分岐は細菌ドメインの中ではかなり遅く、ベータプロテオバクテリア綱とガンマプロテオバクテリア綱のみがアルファプロテオバクテリア綱より後に分岐したと推定されている[28][29]。
アルファプロテオバクテリア綱のうち、最も早くに分岐したのはマグネトコッカス目 (Magnetococcales) であることはおおむね支持されているが、この目をアルファプロテオバクテリア綱に含めるかについては議論があり、独立した目としてイータプロテオバクテリア綱 (Etaproteobacteria) の設立も提案されている[30][31](ただし、2021年現在も認められていない)。2018年の研究では、ミトコンドリアはマグネトコッカス目を除く全てのアルファプロテオバクテリア綱に対して姉妹群となることが示唆された[32]。これはミトコンドリアにつながる祖先の系統分岐がアルファプロテオバクテリア綱内で非常に早く起こったことを示している。またミトコンドリアの系統が、リケッチア目と近縁ではあるものの、独立した系統群を形成することも示唆している。
以下に2024年9月現在での所属目について記載する[20]。
IJSEMに承認された目
- Caulobacterales カウロバクター目
- Henrici & Johnson 1935[3](IJSEMリストに掲載 1980)[4]
- タイプ属はCaulobacter属(カウロバクター属)である。
- Caulobacteraceae科(カウロバクター科)
- Caulobacter属、Asticcacaulis属(アスティカカウリス属)、Brevundimonas(ブレブンディモナス属)、Phenylobacterium(フェニロバクテリウム属)などを含む。
- Hyphomonadaceae科(ヒフォモナス科)
- Maricaulaceae科(マリカウリス科)
- Caulobacteraceae科(カウロバクター科)
- Emcibacterales
- Futianiales
- Holosporales ホロスポラ目
- Hyphomicrobiales ヒフォミクロビウム目
- Douglas 1957[38](IJSEMリストに掲載 1980)[4]、修正 Hördt et al. 2020[23]
- タイプ属はHyphomicrobium属(ヒフォミクロビウム属)である。
- Hyphomicrobiaceae科(ヒフォミクロビウム科)
- Hyphomicrobium属、Filomicrobium属(フィロミクロビウム属)、Dichotomicrobium属(ジコトミクロビウム属)、Seliberia属(セリベリア属)などを含む。
- Nitrobacteraceae科(ニトロバクター科)
- Nitrobacter属(ニトロバクター属)、Bradyrhizobium属(ブラディリゾビウム属)、Rhodopseudomonas属(ロドシュードモナス属)などを含む。
- Rhizobiaceae科(リゾビウム科)
- Rhizobium属(リゾビウム属)、Agrobacterium(アグロバクテリウム属)、Allorhizobium(アロリゾビウム属)などを含む。
- Kaistiaceae科(カイステア科)
- Kaistia属(カイステア属)とBauldia属で構成される。
- Xanthobacteraceae科(キサントバクター科)
- Hyphomicrobiaceae科(ヒフォミクロビウム科)
- その他、多数の科で構成される。
- Iodidimonadales
- Kordiimonadales コーディイモナス目
- Magnetococcales マグネトコッカス目
- Mariprofundales マリプロフンドゥス目
- Micropepsales
- Minwuiales
- Rhodobacterales ロドバクター目
- Garrity et al. 2006[48](IJSEMリストに記載 2006)[2]、修正 Hördt et al. 2020[23](IJSEMリストに掲載 2020)[41]
- タイプ属はRhodobacter属(ロドバクター属)である。
- Paracoccaceae科(パラコッカス科)
- Paracoccus属(パラコッカス属)、Rhodobacter属、Pseudorhodobacter属(シュードロドバクター属)などを含む。
- Neomegalonemataceae科
- Neomegalonema属のみを含む。
- Roseobacteraceae科(ロゼオバクター科)
- Roseobacter属(ロゼオバクター属)、Antarctobacter属(アンタルクトバクター属)、Octadecabacter属(オクタデカバクター属)、Roseovarius属(ロゼオバリウス属)、Roseivivax属(ロゼイビバックス属)、Sagittula属(サギッツラ属)、Ruegeria属(ルエゲリア属)などを含む。
- Paracoccaceae科(パラコッカス科)
- その他、多数の科で構成される。
- Rhodospirillales ロドスピリルム目
- Pfennig and Trüper 1971[49](IJSEMリストに掲載 1980)[4]、修正 Hördt et al. 2020[23](IJSEMリストに掲載 2020)[41]
- タイプ属はRhodospirillum属(ロドスピリルム属)である。
- Rhodospirillaceae科(ロドスピリルム科)
- Rhodospirillum属、Magnetospirillum属(マグネトスピリルム属)、Rhodospira属(ロドスピラ属)、Roseospira属(ロセオスピラ属)などを含む。
- Acetobacteraceae科(アセトバクター科)
- Acetobacter属(アセトバクター属)、Gluconacetobacter属(グルコナセトバクター属)、Gluconobacter属(グルコノバクター属)、Acidomonas属(アシドモナス属)などを含む。
- Rhodospirillaceae科(ロドスピリルム科)
- その他、多数の科で構成される。
- Rhodothalassiales ロドタラシウム目
- Rickettsiales リケッチア目
- Sneathiellales スネアチエラ目
- Sphingomonadales スフィンゴモナス目
- Yabuuchi and Kosako 2006[59](IJSEMリストに掲載 2006)[2]、修正 Hördt et al. 2020[23] (IJSEMリストに掲載 2020)[41]
- タイプ属はSphingomonas属(スフィンゴモナス属)である。
- Sphingomonadaceae科(スフィンゴモナス科)
- Sphingobium属、Sphingopyxis属(スフィンゴピクシス属)、Blastomonas属(ブラストモナス属)などを含む。
- Sphingosinicellaceae科(スフィンゴシニセラ科)
- Sphingosinicella属(スフィンゴシニセラ属)などを含む。
- Erythrobacteraceae科(エリスロバクター科)
- Erythrobacter属(エリスロバクター属)、Novosphingobium属(ノボスフィンゴビウム属)などを含む。
- Zymomonadaceae科(ザイモモナス科)
- Zymomonas属(ザイモモナス属)のみで構成される。
- Sphingomonadaceae科(スフィンゴモナス科)
IJSEMに未承認の目
- “Parvularculales” パルブラルキュラ目
- “Candidatus Pelagibacterales” ペラギバクター目
- “Candidatus Puniceispirillales”
- Chuvochina et al. 2023[16]
- “Candidatus Puniceispirillum” 属のみを含む “Candidatus Puniceispirillaceae” 科のみで構成される。
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系統樹
アルファプロテオバクテリア綱の分類体系は “List of Prokaryotic names with Standing in Nomenclature” (LPSN)[20]と米国立生物工学情報センター (NCBI)[25]で公開されている。下記の系統樹は呼吸複合体IのサブユニットNuoLを用いて2022年に作成されたものである[65]。
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自然遺伝子形質転換
アルファプロテオバクテリア綱の自然遺伝子形質転換の過程についてはAgrobacterium tumefaciens[66]、Methylobacterium organophilum[67]、およびBradyrhizobium japonicum[68]で明らかになっている。形質転換はDNAをある細胞から別の細胞に移動させる過程であり、相同組換えによって供給DNAは受容ゲノムに組み込まれる。
脚注
関連項目
外部リンク
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