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西方ギリシア文字

初期ギリシア文字群のうち西方地域に分布したアルファベットの総称 ウィキペディアから

西方ギリシア文字
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西方ギリシア文字(せいほうギリシアもじ、Western Greek alphabet)とは、初期ギリシア文字群のうち(紀元前8世紀から紀元前5世紀頃まで)、西方地域に分布したギリシア文字(および字形)の総称。後にギリシアでは標準となった東方の字形(東方ギリシア文字)とは差があり区別される。

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Kirchhoff (1887) による文字形分類
  西方(クマエエウボイア
  南方(クレタ

これに先立つ最初期のギリシア文字はフェニキア文字を元として、ギリシア語に必要な5種類の母音を表すことが可能なアルファベットを創った(母音字を作るために、文字の転用[注釈 1]およびΥ [u] の追加[注釈 2]を行なった)。なおそれを受け継いだクレタ南方ギリシア)ではその後もこれを長く用いた。

これに対し、西方ギリシア文字ではさらに Φ、Χ、Ψ の文字を付け加え、これらの帯気音・子音結合を一文字で表した。ペロポネソス半島エウボイア島周辺、イタリア半島アナトリア半島の一部(リュキア文字)で使用された。エウボイア文字(Euboean alphabet)・カルキス文字(Chalcidian alphabet)とも呼ばれる。

この文字は、エウボイア島(ユービア島)から、イスキア島やイタリア半島の植民市・クマエへ持ち込まれ、ほぼそのままの形で最初期のエトルリア文字ラテン文字などの古イタリア文字として用いられ派生していった。この流れは歴史的に重要視され、クマエ文字(Cumaean alphabet)とも呼ばれる。

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概要

ギリシア文字の分類は大きく3種類の類型に区別される。

  • アドルフ・キルヒホフ英語版の著書では3種類の類型に区別し、折り込まれた地図の中でほぼ最初期を保った南方(クレタ)ギリシア文字が緑色、西方ギリシア文字が赤色、東方ギリシア文字が青色で塗り分けられていたため[1]、この色で呼ぶ習慣がある。

これらの区別は、帯気音 [pʰ kʰ][注釈 3] 及び子音結合 [ps ks] をどのように表すか、および新たな文字 ΦΧΨ の導入の有無などの点で異なる[2]

  • 南方(緑) - これらの帯気音は2文字 ΠH、KH (もしくは一文字 Π、K )で表記する。子音結合も2文字ΠΣ KΣで表記する。
  • 西方(赤) - Φ[pʰ]Ψ[kʰ]を表し、Χ[ks]、ΠΣで[ps]を表す。
  • 東方(青) - Φ[pʰ]Χ[kʰ] を表し、


ほかに、s の音を表すのにΣ(シグマ)とϺ(サン)のどちらを使うかについても地域差があった。

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消滅

西方ギリシア文字は紀元前4世紀の中頃までに消滅した。これは東方ギリシア文字がギリシア語圏のほぼすべてへ広がり標準の地位を獲得したためである[4]。ただしイタリア半島では西方ギリシア文字を受け継ぎ、その後も用いられた。

東方ギリシア文字

紀元前6世紀に、東方ギリシア文字地域にあたる小アジア(イオニア)のミレトスで、長い ē ō を表す文字 ΗΩ が考案された[5]。また、イオニア方言で使われない文字( w の音を表す文字など)が削除され、24文字からなるアルファベットが成立した。紀元前5世紀になるとこのミレトス・アルファベットがほかの地域でも使われるようになった(アッティカでは紀元前403/402年に採用した)。

一覧

さらに見る フェニキア文字, 南方 ...
  • ギリシア文字の Ϝ(子音字:[w])とΥ(母音字:[u])とは区別される文字だが、元来のフェニキア文字は同一文字であり、その異形字(前者はࠅ[6])を採用することでギリシア語の音を区別した[7]

関連項目

注釈

  1. ΑΕΙΟを母音を表す文字とした。
  2. 母音[u]へ転用可能なフェニキア文字は [w] だったが、古くは子音 [w] を表す文字もギリシア語に必要だったので、異体字を採用し区別した(子音 [w] には ࠅ ())の文字で表した。
  3. Θ帯気音 [tʰ] を表すことは共通した。
  4. また、コリントスなど一部の地域では、Ι(イオータ)をΣ(シグマ)のような形 (, )で書いていた。

脚注

参考文献

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