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中国宇宙ステーション
地球低軌道にある中国の宇宙ステーション ウィキペディアから
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中国宇宙ステーション(ちゅうごくうちゅうステーション、中: 中国空间站、英: Chinese Space Station, CSS)[4][5]は、中華人民共和国が天宮計画で2021年より運用中の宇宙ステーションである。三つのモジュールで設計されており、総質量は80トンに達すると見積もられている。天宮(てんきゅう、天宫、Tiangong)の名称でも知られている[5]。
それ以前の天宮1号・天宮2号とは異なり、試験機ではなく、旧ソ連のミールに匹敵するサイズの完成した宇宙ステーションと位置づけられている。コアモジュール「天和」、2つの実験モジュール「問天」と「夢天」、無人補給船「天舟」といった構成要素が公表されている。打ち上げには長征5号B型ロケットが用いられた。
建設は2021年4月に開始され[6]、2022年11月30日にドッキングした神舟15号のミッションによる検証や調整をもって2022年12月に建設が完了した[7][8][9][10]。
天宮の名称は他のモジュールや宇宙船の名称と共に2013年10月に発表された[11]。ただし、2021年現在の公式発表などでは単に中国宇宙ステーションと呼ばれている[5]。
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目的
宇宙ステーションの目的としては以下が挙げられている。
- ランデブーとドッキング技術の更なる進歩。
- 長期間の宇宙飛行と居住、軌道上での宇宙機の長期飛行、再生的な生命維持、無人宇宙補給機による補給等の主要技術の飛躍的な進歩。
- 宇宙船の性能と機能の検証。
- 中大型的な軌道上宇宙実験を実行。
また、2016年6月に国際連合宇宙局は中国国家航天局とCSSの利用機会を国際連合加盟国にも開放する協定を結んでおり、日本の東京大学など17か国23機関による9件の科学実験も計画されている。
モジュール
要約
視点
ミールやロシアのISSモジュールと同様に、宇宙ステーションのモジュールは完全に組み立てられた状態で打ち上げられる。これに対し、米国のISSモジュールは、ケーブル、配管、構造体の人力による接続が必要であり、設置に宇宙遊泳が必要であった。天和コアモジュールのドッキングポートは軸方向からのみ直接のドッキングに対応しており、横方向にドッキングする際には、先に軸方向にドッキングしてからロボットアームで横のドッキングポートへ移動する[12]。
当初から計画されていた天和・問天・夢天の3モジュールの他、2023年には将来的にさらに3つのモジュールを追加する計画が発表されている[13]。
天和
→詳細は「天和コアモジュール」を参照

天和コアモジュールは、最大3人の宇宙飛行士の居住と、宇宙ステーションの誘導、航行、方向制御などに対応しているコアモジュール。また、宇宙ステーション全体の電気系統、推進システム、生命維持システムもこのモジュールが中心となっている。
モジュールは居住区、サービス区、ドッキングポートの3つのエリアに分かれており、居住区には、キッチンやトイレ、消火装置、大気処理・制御装置、コンピュータ、科学実験装置、北京の地上管制との通信装置などが設置されている。サービス区には、カナダアーム式のロボットアームが収納されている。
問天

→詳細は「問天」を参照
問天実験モジュールは2つ打ち上げられる実験モジュールの1つであり、2022年7月24日に打ち上げられた[14]。
宇宙ステーションの制御・管理機能を持ち、天和コアモジュールのバックアップとしても機能する。宇宙ステーションで2つ目のエアロックとロボットアームを備えており、エアロックは主に宇宙遊泳に使用される[15]。また、問天モジュールは全長55mのソーラーパネルを4枚備えており、一日あたり平均430kWhの電力を供給できる[16]。
夢天

→詳細は「夢天」を参照
夢天実験モジュールは2つ打ち上げられる実験モジュールの1つであり、2022年10月31日に打ち上げられた。
夢天モジュールは微小重力実験の設備を搭載しているほか[17]、機材や物資の運搬に用いるエアロックを搭載しており、キューブサットなどの小型人工衛星を放出することができる[15][18]。また、天和モジュールや問天モジュールと異なり、夢天モジュールは居住設備を含まない完全な実験棟モジュールである。
巡天
→詳細は「巡天」を参照
巡天は2026年に打ち上げが予定される宇宙望遠鏡である[19]。
直径2メートルの主鏡と2.5ギガピクセルのカメラを搭載し、ハッブル宇宙望遠鏡の300倍の視野を持つとされており、10年間で全天の40%を撮影することが期待されている。
また、天宮宇宙ステーションと同一の軌道に設置され、修復等を行う際には天宮宇宙ステーションとのドッキングが可能とされている。
諸元
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建設

中国宇宙ステーション (CSS) の建設は2021年4月から開始され、2022年11月に完成した(オプションの巡天宇宙望遠鏡を除く)。モジュールの打ち上げには長征5号Bロケットが用いられた。
最初のモジュールとなる天和コアモジュールは、2021年4月29日に打ち上げられた[21]。6月17日には乗組員を乗せた神舟12号とドッキングし、これがCSSにおける初めての有人滞在となった[22]。
次いで2022年7月24日に、2つ目のモジュールである問天モジュールが打ち上げられた[23]。これによりステーションでの高度な化学実験が可能となったほか、最大6人の滞在が可能となった[16]。問天は9月30日に天和の側面へとロボットアームで移動された[24][25]。
さらに2022年10月31日に、3つ目のモジュールである夢天モジュールが打ち上げられた[18]。夢天は11月2日に天和の側面に移動され[26]、これによりCSSは完成した[27]。
- 天和モジュール(中央)のみの状態のCSS。両側は天舟無人補給船、下側は神舟有人宇宙船
- 問天モジュールドッキング後のCSS
- 問天モジュール移動後のCSS
- 夢天モジュールドッキング後のCSS
- 夢天モジュール移動後のCSS
国際協力
要約
視点
外国人宇宙飛行士の参加に関して、中国載人航天工程弁公室(CMSA、旧CMSEO)は支持を繰り返し表明してきた。神舟12号ミッションの記者会見で、中国有人宇宙計画の首席設計者である周建平氏は、複数の国が参加の意向を表明していると説明した。同氏は記者団に対し、将来的には外国人宇宙飛行士の参加が「保証される」と語った[28]。 CMSAのアシスタントディレクターであるJi Qiming氏は記者団に対し、次のように信じていると語った。
「近い将来、中国の宇宙ステーションが完成すると、中国と外国の宇宙飛行士が一緒に飛行し、協力する姿が見られるでしょう。」[29]
2022年10月、同局は中国の2つの特別行政区である香港とマカオにも選考プロセスを開放した。[30][31]
国連
2018年、中国は独自宇宙ステーションの科学利用を国連加盟国へ開放すると公表した。[32]
2019年、CMSAと国連宇宙局(UNOOSA)の国連会合で国際実験が選ばれた。 42件の申請が提出され、9件の実験が受理された[33]。実験の中には、スイス、ポーランド、ドイツ、中国が提案したガンマ線バースト偏光測定の研究実験であるPOLAR-2など、天宮2号での実験の継続がある[34]。オスロ大学のカナダ人教授トリシア・ラローズ博士は、同ステーション向けに最先端の癌研究実験を開発している。 31日間の実験は、無重力状態ががんの増殖を止めるのにプラスの効果があるかどうかを研究することを目的としている。 [35]高エネルギー宇宙線検出器プロジェクトは、ヨーロッパ、中国本土、香港、台湾からの 200 人の科学者チームによって実施されている。 UNOOSAの枠組みに基づき、天宮はベルギー、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、ペルー、ロシア、サウジアラビア、スペインの実験を主催することも期待されており[34]、23の機関と17か国が参加する。[36][37]
日本
国連の共同実験には日本からも東京大学が参加している。[38]2023年7月から、東京大のチームは航空宇宙工学の専門家を中心に、中国・清華大と共に流体力学に関する研究を無重力の環境を利用して行う。[39]
米国
米国議会がNASAとCNSAとの直接的な関与と協力を禁止し、2011年に中国の国際宇宙ステーション(ISS)への参加を事実上禁止した。[40]
ロシア
ロシアは中国との協力に積極的だが、中国側の態度は消極的である。バイコヌール宇宙基地の緯度が51.6度なのに対し、天宮の軌道傾斜角は41.6度であり、ランデブーは困難である。ロシアは軌道傾斜角の変更を求めたとされるが、中国は応じていない。[41]
欧州
中国、ロシア、欧州は宇宙において協力的かつ多国間アプローチを維持する意向を示した。[43]
2007 年から 2011 年にかけて、ロシア、欧州、中国の宇宙機関は、有人火星探査に向けた ISS ベースの準備を補完する、Mars500 プロジェクトの地上での準備を実施した。[44]
天宮はフランス、スウェーデン、ロシアと協力している。[45]
2023年、財政及び政治的理由でESAは飛行士の派遣を中止すると決めた。中国ではアメリカからの圧力が原因との見方がされている。[46]
イタリア
2011年にCMSAとイタリア宇宙局(ASI)の間で有人宇宙飛行分野での協力が検討された。中国の有人宇宙ステーションの開発への参加の他、宇宙飛行士の訪問や科学研究などの分野において、中国との協力が検討された。[47]
2011 年 11 月、中国国家航天局とイタリア宇宙局は、宇宙輸送、電気通信、地球観測などの協力分野をカバーする最初の協力協定に署名した。[48]
2017年2月22日、CMSAとイタリア宇宙局(ASI)は長期的な有人宇宙飛行活動で協力する協定に署名した[49]。
2019年、イタリアの高エネルギー宇宙放射線検出(HERD)の実験が中国のステーションで計画されていた。[50]
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乗組員
神舟12号
- プレスリリース(左から湯洪波、聶海勝、劉伯明)
- 聶海勝(ソマリアにおいて発行された記念切手)
- 劉伯明
- 湯洪波
神舟13号
- 発射前(左から葉光富、翟志剛、王亜平)
- 翟志剛
- 王亜平
- 葉光富
神舟14号
- 発射前(左から蔡旭哲、陳冬、劉洋)
- 陳冬
- 劉洋
- 蔡旭哲
神舟15号
船内環境
宇宙ステーションにはWi-Fi環境があり、 乗組員はコミュニケーション用に骨伝導ヘッドホンとマイクを着用している[51]。また、船内の表記には中国語が用いられている[52]。
宇宙食は宇宙飛行士の好みに応じて最大120種類が船内に保管されており、様々な中華料理や野菜、お茶やジュースなどがある[53]。補給は天舟無人宇宙補給機で行われ、果物や野菜はクーラーボックスに保管されている。
中国国家航天局の主任宇宙飛行士トレーナーであるHuan Weifenは、"ほとんどの食品を固形で食べることができ、骨等は除去されているほか、微小重力下での味覚の変化を補うため花椒などの調味料を追加している"としている。
天和コアモジュールには調理用の小さなキッチンと、宇宙ステーションとして初となる電子レンジが備わっており[54]、乗組員が温食を食べることができるように配慮されている[55][56]。
天和コアモジュールの居住区には、3つの個室兼寝室とトイレ、シャワー、ジム設備などがある[57][58][59] 。
個室兼寝室は国際宇宙ステーションのものより大幅に大きく設計されており、ダブルマットレス、窓、ヘッドホン、換気装置などの設備や、筋萎縮を防ぐための電気刺激装置が備えられている[60][61]。
国際宇宙ステーションでは当初、作業エリアの騒音レベルは72-78 dB、睡眠ベッドの騒音レベルは65 dBに達し、飛行士は騒音に悩まされた[62]。一方、中国宇宙ステーションでは、作業エリアで58 dBに保たれており、 寝室では49 dBとなっている[60][61]。
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履歴
要約
視点
※ すべての日付はUTCで表記されており、打ち上げ予定日は変更される場合がある。
無人補給船
有人宇宙船
モジュール
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参照
関連項目
Wikiwand - on
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