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交響曲第3番 (團伊玖磨)
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作曲の経緯
1959年末から1960年はじめにかけて、作曲者はオペラ『夕鶴』の米国初演を指揮するため、ニューヨークに滞在していたが、その間、「下宿の二十階の部屋から毎夜ながめて受けた、マンハッタンの摩天楼の「現代の遺跡」とでも形容したいような力強さ、美しさ、不気味さ」[1]にカルチャーショックを覚え、次第にそれまでの自分の作品が脆弱に思えるようになっていった[2]。緊密な構造美を追求したいという衝動が本作の作曲に繋がり、米国滞在中に一気にスケッチを終えている。帰国後にオーケストレーションの仕上げを行い、1960年3月17日、葉山において完成した。なお、発表当初は『2楽章の交響曲』あるいは『2楽章制の交響曲』の題名で呼ばれていた[3][4]。
初演
1960年3月27日[5]、読売ホールで開催された第4回「3人の会」演奏会において、岩城宏之指揮NHK交響楽団により行われた。翌年には東芝音楽工業よりウィリアム・ストリックランド指揮インペリアル・フィルハーモニー交響楽団による商業録音も発売された[3]が、「調性を離れ(中略)、今までの叙情性をも捨てて、抽象的な方向に歩をすすめた」[6]本作は理解されにくく、また、初演の際の演奏にも問題があったせいか[2]、真価は認められず、どちらかといえば冷淡に受け止められた[2][3][7]。これに発奮したのか、作曲者は1963年に読売日本交響楽団を指揮して自作交響曲(1番、2番、本作)演奏会を行い、改めて本作を世に問うている[2]。翌1964年にはペータース社から楽譜が出版された[3]。
楽器編成
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン、クラリネット2、バス・クラリネット、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン6、トランペット3、トロンボーン4、テューバ、ハープ、ピアノ、ティンパニ、小太鼓、シンバル、大太鼓、タムタム、木琴、グロッケンシュピール、弦五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)[3]。
構成
演奏時間は約25分[8]。
- 第1楽章 アンダンテ・ソステヌート
ソナタ形式。ヴァイオリン、フルート、オーボエ、クラリネット、バス・クラリネット、打楽器の順で奏される動機が第1主題とされるが[1][9]、複数の素材の綜合による第1主題群とでもいえるもの[3]。いずれの動機も半音の動きに特徴がある。ヴァイオリンに現れる第2主題は作曲者が「神経質」と呼んだリズム的性格の強いもの[1]だが、主題の提示のみで確保が行われないため、提示部から展開部においては影が薄い存在である[9]。逆に再現部では第1主題の再現がなく、第2主題が再現、確保されて盛り上がる。終結部は第1主題による変容が続けられ、静かに楽章を終える。
- 第2楽章 アレグロ
三部形式、あるいは第1楽章の要素を挿入した変形ロンド形式[9][10]。4部からなり、第1部ではこの楽章で新たに登場する3つの主題が示される。曲は強烈な総奏の一打とそれに続く作曲者が言う「不安な、連続する付点音符の急速な進行」で開始され[10]、まずチェロ・コントラバスによってリズミカルな主題Aが登場、次にオーボエでなめらかな動きの主題B、続いて木管楽器とホルンに律動的な主題Cが現れる。第1部全体の流れは、主題Aの提示→主題Aの確保→主題Bへの推移→主題Bの提示→主題Bの確保→主題Cの提示→主題Bへの推移→主題Bの提示→主題Cの提示→主題Aの提示、というものになる[9]。第2部は第1楽章の第1主題が再登場し、第1楽章展開部や終結部が回想される。第3部は主題Aの提示→主題Bの提示→主題Bの確保という流れ[9]。終結部にあたる第4部は主題A、主題B、第1楽章第1主題を用い、壮大な結末を迎える。
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主要録音
脚注
参考文献
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