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多目的実験モジュール
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多目的実験モジュール(英語: Multipurpose Laboratory Module, MLM)は、ロシア連邦宇宙局が建造した国際宇宙ステーション (ISS) にドッキングする多目的実験用のモジュールである。愛称はナウカ(ロシア語: Нау́ка 英語: Nauka)で、ロシア語で科学を意味する。Multipurpose Laboratory Module-Upgrade (MLM-U; ロシア語: Многоцелевой лабораторный модуль, усоверше́нствованный もしくは МЛМ-У) とも記述される。

実験棟、ドッキング設備、荷物保管区画および搭乗員の作業場や休憩所、トイレ・水再処理設備などの生命維持設備、推進装置を持つことから姿勢制御などにも活用される。
元々はISSの基幹モジュールであるザーリャの予備機として開発されていた機体をベースとしたもので、1998年のザーリャ打ち上げ成功後に、紆余曲折を経て今日の姿へと改装され、2021年に打ち上げとISSへのドッキングを行った。他のロシア製モジュールと同様、単独で宇宙船としての飛行能力を持つ。
ISSの初期の計画では、「ドッキング・保管区画」(Docking and Stowage Module: DSM) として使用される予定であった。DSMは後に「ドッキング・貨物区画」 (Docking and Cargo Module: DCM) と名を改めて再び計画に上っていたが、結合場所をザーリャに変更し、ミニ・リサーチ・モジュール1となった。MLMは、建造が中止されたユニバーサルドッキング区画 (Universal Docking Module: UDM)(と、2機のロシア研究モジュール)にかわってズヴェズダ区画と結合することになった。
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初期計画

1990年代、ISSにおけるロシアの担当区画の計画にはザーリャ(Заря́ - Zarya。「基本機能モジュール (FGB)」とも呼ばれる)とズヴェズダ(Звезда - Zvezda)モジュールに接続するいくつかのロシア研究モジュールが含まれていたが、2000年代初頭に計画が変更された。2004年8月、多目的実験モジュールは、クルニチェフ国家研究生産宇宙センターが開発し、1990年代の終わりに70%ほどが作られたところで製造が中止されていた「基本機能モジュール2 (Functional Cargo Block, FGB-2)」を改造して作ることが決定された。FGB-2は当初はザーリャのバックアップを目的(予備機)として設計され、1997年初頭にユニバーサルドッキング区画(UDM) として使う事が検討されていたものであった。
またRKK エネルギア(露)とスペース・ハブ社(米)が共同出資で製造することを提案したが却下された商業用のエンタープライズ区画 (Commercial Enterprise Module) を基にしたMLMの代替案もあったが、採用されなかった。
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歴史
- 2004年、ロシア連邦宇宙局はMLMをプロトンロケットで打ち上げることを発表した。しかしながら、MLM計画はその後大幅に遅れた。2006年、ESA広報は2008年の終わりまでには打上げを実現する方向で露宇宙局と交渉していることを表明したが、2008年7月7日の打上げに関する合同表明では、打ち上げ予定日は2011年12月に延期された。[1]
- 打上げは2013年末にまで延期された[2]。RSCエネルギア社が製造元のクルニチェフ社から受領した後の性能試験を行っていた2013年末に、燃料供給用の配管の欠陥などの技術的なトラブルが複数見つかったため、製造工場に戻しての大がかりな修理が必要になるため、打上げが1年半以上遅れることになるだろうと報道された[3]。
- 2021年7月8日、ロスコスモスは、同7月21日にプロトンMロケットで打ち上げると発表した[4]。
- 2021年7月21日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地からプロトン-Mに積載された状態で打ち上げられた[5]。
- 2021年7月29日、ロスコスモスはナウカがISSへのドッキングに成功したと発表した[6][7][8]。
- ナウカが接続された3時間後にナウカが予定外のエンジン噴射を行い、ステーションとズヴェズダ区画の姿勢制御スラスタと格闘した。ステーション側のスラスタでは構造体にストレスがかかり壊れる危険性を危惧して停止した。11分ほど搭乗員との連絡がつながらなくなり、NASAは宇宙船非常事態を宣言した[9]。55分後に地上管制官によって停止された。540度[10](当初発表では45度)傾くトラブルとなったが[8]、滞在中の7人の飛行士は無事でステーションの姿勢も修正された[11][12]。このトラブルは最初 NASAにより発表されたが、ロスコスモスは7月30日、原因はナウカを遠隔操作するプログラムの障害にあると発表した[13]。
- 上記以外にも、打上げ→軌道の段階での幾つかのトラブルが指摘されているが、ロスコスモスは(2021年7月末日現在)大半の事例について公式にトラブルと認めていない[14]。
- 2023年10月10日、補助ラジエーターからの冷却剤漏れが発生[15]。
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用途

MLMは実験棟、ドッキング設備、荷物保管区画および搭乗員の作業場や休憩所として使用される。また姿勢制御装置を装備しているため、ISSのCMGを使う姿勢制御の補助用としても使用される。
結合される場所は、ズヴェズダ・モジュールの下部ドッキングポートである。この場所にはピアース (DC-1) が結合されていたが、DC-1はMLMの打上げ前に廃棄された。 2010年5月にスペースシャトル・アトランティス(STS-132)によってミニ・リサーチ・モジュール1 (Mini-Research Module 1: MRM-1) がISSに運ばれたが、この際、MLMで使用する予定の機器もMRM-1の外壁に取り付けて運ばれた。内訳は、MLMの下部側面に設置される小型の実験用エアロック、MLM用のラジエータパネル、欧州ロボットアーム(ERA)の予備の肘関節、船外作業用プラットフォームである。
主たる研究区画
MLMは、ISSのロシア区画のにおける主たる研究区画となる。NASAの公式計画にはMLMと同サイズの2つ目の研究区画も(検討中)の位置づけで挙がっていたがそれらはキャンセルされたため、小型のMRM-1, MRM-2を除けばロシアの唯一の研究区画となる。2012年12月に、ロシアは科学電力プラットフォームの後継計画となるScience Power (またはEnergy) Moduleの開発をRSCエネルギア社に発注した[16]。この科学電力モジュール1 (NEM-1) は、MLMの下部に球体状のロシアのノードモジュール (NM)[17]を取り付け、そこに結合する予定となっている。
諸元
- 全長:13.0 m
- 直径:4.11 m
- 重量:20.3トン
注記
外部リンク
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