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天主実義
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『天主実義』(てんしゅじつぎ、拼音: 、天主實義)は、明代中国のイエズス会宣教師、マテオ・リッチ(利瑪竇)の主著[1]。天主教(カトリック)の教義を漢文で説明した書物[2]。1603年(万暦31年)初刻[2]。
内容
中国人の「中士」と西洋人の「西士」の問答形式で、天主(神)の存在、人間の霊魂、倫理などについて論じる[2]、カテキズム(教理問答)である[3][4]。神を中国古来の「上帝」や「天」と結びつける点に特徴がある[5][6](適応主義)。三教・理気論・性善説などの中国思想と、アリストテレスなど西洋哲学との東西対話の要素を含む[5][7][8]。
文体は、明代風の漢文だが名文とは言いがたく、破格の句法や造語を含む[9]。
成立
本書は1594年頃から執筆、1596年頃脱稿、ゴアの異端審問官から出版許可が下りた後、1603年北京で初刻された[3]。
本書の姉妹作として、ルッジェーリ『天主実録』(『天主聖教実録』とも、1584年)[11][3][12][13]、リッチ『天主教要』(1605年)[3][14]、リッチ『畸人十篇』(1608年)がある[15][12][16]。
影響・伝来
徐光啓は本書を読んで受洗を決意した[17]。康熙帝も本書に敬意を表したとされる[18][19]。
本書の影響のもと、アレーニ『三山論学記』[20][21]、プレマール『儒教実義』[22]、回儒の王岱輿『正教真詮』[23]などが著された。『聖朝破邪集』には、費隠通容や雲棲祩宏による本書への批判が収録されている[20]。李之藻の叢書『天学初函』にも収録された[24]。『四庫提要』には存目として載っている[25]。
本書は漢字圏での布教に使うため、度々重刻された[24]。典礼論争による禁教を挟んで、清末の1868年(同治7年)に再び重刻された[26]。
李氏朝鮮では、実学者の李睟光や李星湖に読まれ、朝鮮のキリスト教の拡大に貢献した[27]。
日本にも舶来し、キリシタンの禁書に指定されながらも、林羅山や平田篤胤[28][29]、水野軍記[30]に読まれた。新井白石[28]、ハビアン[31][32][33]にも読まれたと推測される。内閣文庫・蓬左文庫には現存最古級の刊本がある[29][34]。
日本語訳
- 後藤基巳『天主実義』明徳出版社〈中国古典新書〉、1971年。ISBN 978-4896192520。(訓読と要約)
- 柴田篤 訳『天主実義』平凡社〈東洋文庫〉、2004年。ISBN 978-4582807288。(現代語訳)
参考文献
- 新居洋子 著「学知と宣教 在華イエズス会士による適応の変容」、齋藤晃 編『宣教と適応 グローバル・ミッションの近世』名古屋大学出版会、2020年。ISBN 978-4815809775。
- 井川義次「イエズス会士を仲介とする儒教情報の啓蒙期欧米への流入と受容」『人文研ブックレット』第40号、中央大学人文科学研究所、2023年。 NCID BD01139282 。
- 神崎繁「魂の位置――十七世紀・東アジアにおけるアリストテレス『魂論』の受容と変容――」『中国 : 社会と文化』第19号、中国社会文化学会、2004年。 NAID 40006409873 。
- 柴田篤 著「天主実義」、尾崎雄二郎; 竺沙雅章; 戸川芳郎 編『中国文化史大事典』大修館書店、2013年、898f頁。ISBN 9784469012842。
- 柴田篤 著「明末天主教と死生観――中西対話の底に流るるもの」、川原秀城 編『西学東漸と東アジア』岩波書店、2015年。ISBN 978-4000610186。
- 中砂明徳 著「天主と耶穌 明末における受難のナラティブ」、齋藤晃 編『宣教と適応 グローバル・ミッションの近世』名古屋大学出版会、2020年。ISBN 978-4815809775。
- 平川祐弘『マッテオ・リッチ伝 2』平凡社〈東洋文庫〉、1997年。ISBN 978-4582806243。
- 福島仁「ヨーロッパ人による最初の理気論――西洋の神と朱子学の理」『中国 : 社会と文化』第4号、中国社会文化学会、1989年 。
- 吉田公平 著「利瑪竇の『天主実義』について」、東北大学文学部日本文化研究所 編『神観念の比較文化論的研究』講談社、1981年 。
- 王雯璐「『天主実義』の初期刊本とその改訂をめぐって」『或問』第31号、近代東西言語文化接触研究会、2017年 。
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脚注
関連項目
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