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宮武一貴

日本のメカニックデザイナー、イラストレーター (1949-) ウィキペディアから

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宮武 一貴みやたけ かづたか[1]1949年昭和24年〉[1]9月21日 - )は、日本メカニックデザイナーイラストレーターコンセプトデザイナー[2][1]神奈川県[1]横須賀市出身、同市佐野町在住[3]。本名は渡邊一貴[3][注 1]スタジオぬえ所属[5][6][1]

概要 みやたけ かづたか 宮武 一貴, 本名 ...

日本のアニメ界におけるメカニックデザイナーの草分け的存在で[1]大河原邦男と共にメカニックデザイナーという職業を確立した[2][6]。また「スタジオぬえ」の創設メンバーであり、日本SF界の第一人者として小説の挿絵などのイラストワークでSFアートをリードしてきた[7]

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人物・来歴

要約
視点

横須賀という土地柄や父親や祖父の仕事の関係から海上自衛隊横須賀基地に出入りする機会が多かったため、幼少期から軍艦などに間近に接することが出来た[3][5]。その経験からミリタリーイラストを描き始める。イラストを描くようになると、次は"中"がどうなっているかが気になり始めた。機械の構造を知るため、父親がオートバイを分解している様をつぶさにスケッチしてエンジンやサスペンションの仕組みを教えてもらうなどして、それを次々と絵に反映させていった[3]

小澤さとるを「生みの親」と言い、師として慕っているが、実際に本人に会うまでは意図的に、彼に接近する作品を避けてきたと話している[8][9]。また、子供の頃から長岡秀星のファンであり、長岡の絵をもっと図面風に描いてみたいという想いを持っていた。18歳の時に映画『2001年宇宙の旅』の特撮メカニックに衝撃を受け、宇宙船などのSFイラストを描くようになる[5]

東京農工大学農学部で大学院まで進み[1]、その傍らSFの同人活動を行う[3][10]1972年1974年には、SF小説『スーパーバード』『コッペリア』の2編をSF同人誌『宇宙塵』に発表した[注 2]

大学院在学中の1972年、SF好きの同人会の仲間とデザイン会社「SFクリスタルアートスタジオ」を設立[3]。子ども番組の美術設計などから少しずつ仕事の幅を広げて行き、「スタジオぬえ」に移行してからはまずSFアニメ作品の世界観設定から手掛けるようになる[3]。ぬえで同僚の加藤直之と共に手掛けた数多くのメカニックデザインSF関連のイラストは、当時のSFビジュアルシーンに大きな影響を与えた。

1977年に出版されたロバート・A・ハインラインの小説『宇宙の戦士』で、劇中の人型兵器パワードスーツの挿絵とデザインを加藤直之と共同で担当[注 3][11][12]。そのデザインは、『機動戦士ガンダム』を始めとするリアルロボットアニメに多大な影響を与えたとされる[11][12]

以来、SFアニメやロボットアニメを中心に、メカニックデザイナーとして第一線で活躍するようになる[2]

さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のアンドロメダ[注 4]や劇場版『銀河鉄道999』のアルカディア号[注 5]などを手掛けた他、ヤマトやハーロックの設定資料集に三面図や細部の設定、透視図解なども描いていた[13]

『超時空要塞マクロス』に始まるマクロスシリーズでは、後輩の河森正治とともにメカニックデザインを手掛けただけでなく、敵対する異星人の文明(文字・言語・技術・美術体系)など、作品世界全体の設定も行っている。また、河森が作品を象徴する「ガウォーク」のデザインを生み出したのは、宮武と「どちらが先に人型ロボットに変わる、新型主役メカを開発できるか」を競争したのがきっかけ[14]。二人で1年ほど考えた後、スキー旅行に行った河森がスキーで走る時の姿勢から思いついた[14]。それを宮武に伝えたところ、彼も似たものを考えていたので、河森は「こういうアイデアはほぼ同時に思い付くものなのだなと思った」という[14]

超時空世紀オーガス』では主役メカのオーガス[注 6]を手掛けた。また主人公側(エマーン)のメカは、F1などのモータースポーツをイメージしてデザインしている。

聖戦士ダンバイン』では監督の富野由悠季の構想から昆虫型メカ「オーラバトラー」やオーラマシンのコンセプトを生み出すが、諸事情により数点のデザインを残して早い時期に作品を離れている[15]。宮武の降板後、出渕裕がそのコンセプトを発展させる形でデザイナーを引き継ぎ、メカ部分の世界観作りはキャラクターデザイナーでもある湖川友謙と分担して行った[15]。宮武の手掛けたデザインは、オーラバトラーでは主役機のダンバインドラムロダーナ・オシー、ウィング・キャリバーのフォウ、オーラ・シップのゼラーナで、クリンナップは湖川が担当した[16]

2021年5月22日、神奈川県横須賀市にある自宅が全焼し、夫婦で病院に運ばれる。宮武は一命を取り留めたものの、妻[注 7]は亡くなった[17]

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作風

1970年代から数多くの人気作品に携わり、戦艦、要塞、ロボットなどのメカニックデザインを多数手掛けてきた[3][6]。またメカだけでなく、企画や設定、作品の世界観を構築するコンセプトデザインも手掛けている[5][18]

SF理論のみならず科学・軍事・生物・建築など多分野にわたって知識を幅広く持つ人物であり、その博識を活かした兵器から動植物まで描き分けるデザインの幅広さや応用力の高さが特徴である。美術全般の設定にも能力を発揮し、近年は作品のトータルの世界観を創造するコンセプトデザイナーとしての活動を主としている。

宇宙戦艦などの架空の艦艇をデザインする際には、幼少時の実物の軍艦を目の当たりにした経験を活かしている[5]。戦艦や要塞など大きなものをデザインするときは、大きな紙に描くのが望ましいとしている[19]。『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に登場する超巨大戦艦の設定画は紙を横に3枚つなげて描いた[20]。『超時空要塞マクロス』に登場するブリタイ艦(全長約4,000m)はホワイトボードに描いた[19]

若手時代から数多く制作してきて世に彼の名を知らしめたものに、メカの外装を透かしてその内部構造や機能を描き出すいわゆる「透視図解」イラストがある。『マジンガーZ』のエンディングに使用された図版が有名であるが、これは宮武が学生時代にアルバイトで描いたもので、エンディングで大きく扱われたことには本人が驚いたという[21]。SF小説に登場する宇宙船の他、スーパーロボット系アニメ作品でも自らがデザインしていないメカでも数多く手掛けている。

CG制作に早くから取り組んだ同僚の加藤直之とは対照的に、「意思がダイレクトに伝わる」アナログの鉛筆画にこだわり続けている[3]。パソコンや携帯電話は必要性を感じていないため所持しておらず、仕事上での連絡ツールは主に電話とファックス。

デザインを一枚絵やイラストにする作業を苦手としており、仕上げを加藤直之などに丸投げしてしまう傾向がある[10]。そうなってしまうのは、アイデアを熟成させるためのデータ集めや試行錯誤に圧倒的に時間を費やしてしまうという本人の気質のせいである[10]。その上、今まで誰も見たこともない新しいものを描き出したいという創作にたいする本能的な衝動があり、そのための新たなコンセプトを構築するというプロセスがさらに現実の時間を奪っていくため、イラストを仕上げる時間が無くなってしまうからである[10]

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エピソード

河森正治のことは高校1年生の春休みから知っていて、先輩として面倒を見ていた[5][14]。またアニメーター板野一郎を宮武に紹介したのは河森である[5]

富野由悠季から「モノ作りには先駆者と収穫者がいて、先駆者は世の中よりも数年先を走って、新しいビジョンを作ってしまう。その先駆者が作ったビジョンを、収穫者は丸くまとめて商売にする。スタジオぬえのビジョンは5〜6年どころか20年ぐらい先行しているから、君たちは絶対に収穫者になれない」と言われたことがある[5]

体格が良く、仕事でアメリカに行ったときは現地の人にインディアンだと思われたことがある。

参加作品

要約
視点

記載は年代順である。

テレビアニメ

劇場アニメ

OVA

Webアニメ

特撮テレビドラマ

特撮映画

自主制作作品

ゲーム

小説

  • ロバート・A・ハイライン『宇宙の戦士』(ハヤカワ文庫SF、1979年) - パワードスーツデザイン、挿絵[12]
  • 野田昌宏『銀河乞食軍団』シリーズ(ハヤカワ文庫JA、1982-1995年) - 宇宙船デザイン

漫画

  • 松本零士『宇宙海賊キャプテンハーロック』(1977-1979年) - アルカディア号のクリンナップ、細部設定
  • 皆川ゆか (原作)、環望 (作画)『聖剣王シグリード』(1995年) - メカデザイン
  • 小澤さとる『青の6号 AO6』(1997年) - メカデザイン

玩具

  • タカラダイアクロン』 - メカデザイン
  • タカラ『ミクロマン』 - メカデザイン
  • 京商『ガンウォーカー 零壱式主力戦闘足機・全方位移動型6輪走行R/C ガンローラー(ラジコンロボット玩具、2003年) - メカデザイン
  • ウェーブ『スペースセツルメント』[注 8](プラモデル、2015年) - 宮武を中心に「スタジオぬえ」がデザインをアレンジ[28]

その他

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イラスト・挿絵

著作物

小説

  • SUPERBIRD』シリーズ「SUPERBIRD」「コッペリア」[注 2](「宇宙塵」掲載、1972年) - 小説と挿絵

イラストノベル

  • 宮武一貴+L.CAt。『THE ADVANCED APSARAS アドバンスト・アプサラス』(大日本絵画「月刊COMIC NOIZY」1988年12月号-1989年10月号連載) - 文章とメカニックデザイン

画集

  • 『宮武一貴 マクロス&オーガスデザインワークス』 MOVIC 2005年 ISBN 4-89601-629-7
  • 『宮武一貴デザイン集 HIGHLY ORIGINAL WORKS』幻冬舎コミックス 2007年 ISBN 4-344-80957-2
  • 『機甲天使ガブリエル』ラピュータ 2008年 ISBN 978-4-947752-84-0 加藤直之と共著
  • 『MIYATAKE KAZUTAKA MEGA DESIGNER CREATED MEGA STRUCTURES 宮武一貴画集』ホビージャパン 2017年 ISBN 978-4-7986-1424-3

コラム

その他

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個展

メカニックデザイナー宮武一貴原画展
2015年10月24日-11月23日、神奈川県横須賀市の世界三大記念艦「三笠」艦内にて開催[29]。主催:公益法人 三笠保存会、横須賀集客促進実行委員会、協力:スタジオぬえ。

脚注

参考文献

関連項目

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