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尿中一般物質定性半定量検査

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尿中一般物質定性半定量検査
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尿中一般物質定性半定量検査(尿一般検査、尿中一般検査、: urine dipstick test, urinalysis[※ 1])とは、尿を検体として、尿試験紙や屈折計などの簡便な方法で実施する臨床検査であり、医療や健診で多用されている[1]

概要 尿試験紙, 目的 ...

主要な尿中一般物質定性半定量検査とその基準値・検査法

さらに見る 項目名, 基準値 ...
  • 上記の他、尿中アルブミンや尿中アルブミンとクレアチニンを測定する尿試験紙も販売されている。
  • 上記項目は試験紙や屈折率計等、目視で検査可能であるが、多数の検体を扱う医療機関や健診機関などでは尿自動分析装置を採用するのが通常である。


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尿試験紙の比較:右は未使用、左はコントロール不良の糖尿病患者尿。左の試験紙は上から順に、白血球 (-)、亜硝酸 (-), ウロビリノーゲン 正常, 蛋白 (+), pH (5), 潜血 (+), 比重 (1.025), ケトン体 (4+), ビリルビン (+), グルコース (3+).
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主要な尿中一般物質定性半定量検査の異常値出現の機序

要約
視点

尿蛋白半定量

健常人の尿中にも微量の血漿由来の蛋白[※ 3]が存在するが、40から100 mg/日 程度である。150 mg/日 を超えると異常であり、蛋白尿とされる。尿蛋白試験紙の感度は アルブミンとして、10-30 mg/dL程度である[3][6]。 また、尿試験紙の蛋白半定量値(1+)は尿蛋白定量の30 mg/dLに相当するように標準化されている[3]

尿蛋白が陽性となる場合 尿蛋白が偽陽性となる場合 尿蛋白が偽陰性となる場合
  • 糸球体性蛋白尿(糸球体の蛋白透過性が亢進、主にアルブミン
    • 各種の糸球体障害でみられ、蛋白尿の中では頻度が高い。
      • 高度のアルブミン尿(一日3.5 g以上)と低アルブミン血症が存在する場合はネフローゼ症候群と呼ばれる。
  • 尿細管性蛋白尿(再吸収障害)
    • β2ミクログロブリンα1マイクログロブリンレチノール結合蛋白などが含まれるが、構成成分は症例により一定ではない。1.5 g/日を越えることは稀[2]
  • 腎後性蛋白尿
    • 尿路の炎症、腫瘍、傷害で血中や組織中の蛋白が尿中に移行したもの。
  • 機能性蛋白尿
    • 体位(起立性蛋白尿)、発熱、運動、ストレス、心不全などに伴うもの。病的意義に乏しい。
    • 妊娠:妊娠中の尿蛋白排泄量は非妊娠時のほぼ2倍となる。半定量(1+)では病的でない可能性があり、(2+)以上で病的蛋白尿を考える[7]
  • 濃縮尿
    • 尿蛋白(+)でも比重が1.016以上なら病的蛋白尿(蛋白クレアチニン比<0.3mg/mgCr)でない可能性がある。
    • 早朝第一尿では濃縮されているため(±)程度を呈することがある。
  • pH8以上のアルカリ尿。
  • 強酸性尿(酸性蓄尿[※ 4]など)
  • 尿の希釈度により偽陰性になる場合がある。尿蛋白(±)でも比重が1.011以下なら病的蛋白尿の可能性がある[8]

尿糖半定量

糸球体でろ過された原尿にはグルコース(ブドウ糖)が含まれているが、健常人では尿細管でグルコースが再吸収されるため、尿中には微量(40-85 mg/日程度[5])存在しない。再吸収が追いつかなくなる血糖値は(再吸収閾値)は180 mg/dLとされている(個人差が大きい)。尿糖試験紙の検出感度は、およそ、40-100 mg/dLである[3]。また、尿試験紙の糖半定量値(1+)は尿糖定量の100 mg/dLに相当するように標準化されている[3]

さらに見る 尿糖が陽性となる場合, 尿糖が偽陽性となる場合 ...

尿潜血(尿赤血球)

尿中のヘモグロビン(またはミオグロビン)のペルオキシダーゼ作用を利用して検出する検査である。赤血球がなくともヘモグロビンまたはミオグロビンが尿中に存在すれば陽性になる [9]

尿潜血試験紙の感度は、ヘモグロビンとして 0.015-0.03mg/dL、赤血球として5-15個/μL程度である[3]。ミオグロビンに対しても、ほぼ同等の感度である[3]。尿試験紙の潜血半定量値(1+)に相当するのはヘモグロビン濃度0.06 mg/dL、赤血球にして約20個 /μLに標準化されている[3]

尿蛋白と尿潜血の両者が陽性の場合は糸球体疾患の可能性が高く、精査を要するが、3-6 mL以上の出血の場合、血液に含まれる蛋白のために尿蛋白も陽性になるので注意を要する[2]

さらに見る 尿赤血球が陽性となる場合, 尿赤血球が偽陽性となる場合 ...

尿白血球

尿中の好中球(および単球)のエステラーゼを検出する検査。リンパ球や好酸球は検出できないのに留意する。また、白血球尿がなくとも尿路感染は否定はできない。尿白血球試験紙の感度は、白血球 10-25個/μL、尿沈渣にして5-15個/hpf(強拡大)である[3]

さらに見る 尿白血球が陽性となる場合, 尿白血球が偽陽性となる場合 ...

尿ビリルビン

本来、尿にはビリルビンは含まれないが、血中の直接ビリルビン抱合型ビリルビン)は高値(2mg/dL以上)となると一部が尿に排泄される(ビリルビンのうち、アルブミンと結合したもの(間接ビリルビン、非抱合型ビリルビン)は糸球体基底膜を超えず尿中に排泄されない)。尿ビリルビン試験紙の感度は、0.4-1 mg/dLである[3]

陽性であれば臨床的意義が大きいが、偽陽性が多いため、確認試験が行われることがしばしばある。

なお、ビリルビンは石鹸のような界面活性作用があるので、尿が泡立ちやすい。また、泡も黄色に見える。また、ビリルビン陽性時は、沈渣で、ビリルビンにより障害されて剥離した尿細管上皮細胞および上皮円柱が多数出現する。

さらに見る 尿ビリルビンが陽性となる病態, 尿ビリルビンが偽陽性となる病態 ...

尿ウロビリノーゲン

ウロビリノーゲンは胆汁の抱合型ビリルビンが腸内細菌に代謝されて生成し、腸管から吸収され、尿に排泄される。閉塞性黄疸ではウロビリノーゲン排泄は低下、その他の黄疸(血中ビリルビンが上昇する病態)では上昇する。疾患のスクリーニングの手段としては感度が低すぎるため、現在は意義が低いと考えられる。

尿ウロビリノーゲン試験紙の検出感度は、0.1-1 mg/dL程度であるが、陰性の判定はできない[3]

さらに見る ウロビリノーゲンが高値をとる場合, ウロビリノーゲンが偽陽性となる場合 ...
尿ウロビリノーゲンと尿ビリルビンの関係
さらに見る 尿ビリルビン陰性, 尿ビリルビン陽性 ...

尿pH

尿pHは食餌[※ 9]に大きく左右されるが、通常はpH6.0程度の酸性である。

さらに見る 尿pHがアルカリ側 (pH6.5-8.0程度が持続), 尿pHが偽高値(アルカリ側)となる場合 ...

尿亜硝酸塩

食物に含まれる硝酸塩[※ 12]が尿に排泄され、硝酸還元能をもつ尿路の細菌[※ 13]により亜硝酸に還元されることを利用した反応である[11]尿路感染症のスクリーニングにもちいられ、尿白血球陰性かつ尿亜硝酸塩陰性なら細菌尿の可能性は低いと考えられる。

尿亜硝酸塩試験紙の検出感度は、亜硝酸ナトリウムとして0.03-0.15 mg/Lである[3]。感度はあまり高くなく、4時間以上の膀胱内尿貯留時間が必要。

さらに見る 尿亜硝酸塩が陽性となる場合, 尿亜硝酸塩が偽陽性となる場合 ...

尿ケトン体

ケトン体とは、アセトン、アセト酢酸、β-オキシ酪酸の総称である。尿ケトン体は、体内の脂肪代謝の亢進による血中ケトン体の増加を反映する。尿糖と尿ケトン体がともに強陽性となる場合は稀ではあるが、劇症型1型糖尿病や糖尿病ケトアシドーシスのような重篤な病態を疑う必要がある。

尿ケトン体試験紙の感度は、アセトン50 mg/dL(アセトンと反応しない試験紙もある)、アセト酢酸5-10 mg/dLである。β-ヒドロキシ酪酸とは反応しない[3]

さらに見る 尿ケトン体が陽性となる場合, 尿ケトン体が偽陽性となる場合 ...

尿比重

尿比重は尿に溶解している固形成分の量を反映する。健常人は主にナトリウムと尿素による。屈折計で測定されることが多いが、尿糖・尿蛋白が大量に含まれる場合は補正が必要である。

随時尿の比重は1.010から1.030の間であることが多いが、水摂取状態によりこの範囲を超えて変動する(24時間尿では1.015前後である)。水分制限で尿比重が1.025を超えれば腎臓の濃縮能は維持されている(若年者では1.032以上、高齢者では1.025–1.027)と考えられる。腎不全が進むと、腎の濃縮・希釈能力が低下するため、血液と等張の1.010前後になっていく。

なお、尿比重の下二桁を0.03で除するとおよその浸透圧が得られる。

さらに見る 尿比重が高値となる場合, 尿比重が偽高値となる場合 ...

尿色調

尿は、通常は、ウロクローム等の色素により、麦わら色乃至淡黄褐色を呈する。尿を放置すると濃褐色に変化するのは、ウロビリノーゲンが酸化され赤褐色のウロビリン体となるためである。その他の尿中色素としては、ウロエリトリン(赤橙色)があげられる[※ 19]

尿中の色素排泄量はほぼ一定であり、色の濃さは尿の希釈/濃縮、すなわち、尿比重と並行する。

さらに見る 尿異常色調, 原因 ...

尿混濁

尿は通常透明であるが、健常人の尿でも混濁が認められる場合がある。

さらに見る 健常人の尿混濁, 病的な尿混濁 ...
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脚注

  1. Urinalysisは定性半定量検査以外に尿沈渣も含む。
  2. 尿は通常は透明であるが、健常人でもリン酸塩や尿酸塩による混濁がみられることがある。
  3. 健常人の尿にみられる蛋白の内訳は、アルブミン 40%、IgG 5-10%、免疫グロブリン軽鎖 5%、IgA 3%、程度である。(日本臨床 2009;67(S8):93.)
  4. 尿中カテコラミン測定のため蓄尿する場合は薬剤をいれて酸性を維持する。この尿で他の検査をすべきではない。
  5. 妊婦の約80%で尿糖排泄の増加が見られ、グルコースろ過量の増大および尿細管糖再吸収能の低下のためである。妊婦では尿糖 300 mg/日までは正常と考えて良い。分娩1週間後には陰性化する。
  6. ビタミンCはペットボトル飲料にも大量に添加(緑茶で8.8-35.5 mg/dL程度)されているので偽陰性の原因となる。
  7. 赤血球が糸球体由来か否かは尿沈渣で赤血球の形態から推測することができる。
  8. 原因不明の顕微鏡的血尿は加齢とともに増加し女性に多い。
  9. ある食品に含まれる酸性無機イオン(Cl-、SO42-、PO43-など)とアルカリ性イオン(Na+、K+、Ca2+、Mg2+など)の濃度を当量で比較した場合、前者の和の方が多い食品を酸性食品、後者の和の方が多い食品をアルカリ性食品という。その食品を食べたとき、尿が酸性になる食品を酸性食品、アルカリ性になる食品をアルカリ性食品と考えてもよい。
  10. 睡眠中は換気低下により呼吸性アシドーシス傾向があるため、早朝尿はpH6.0以下の酸性尿が多い。
  11. 代謝性アシドーシスが存在するときは尿pHは5以下となる。尿pHが5.3を超える場合は尿細管性アシドーシスを疑う。
  12. 硝酸塩はホウレンソウ春菊サラダ菜等の葉菜類に多い。
  13. 硝酸還元能をもつ細菌としては、大腸菌プロテウスクレブシエラ腸球菌の一部、ブドウ球菌属の一部、緑膿菌、などがあげられる。
  14. 腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)は女性の尿路感染の原因菌であるが、硝酸還元能がないので偽陰性になるのに注意する必要がある。
  15. アルコール性ケトアシドーシスでは糖尿病性ケトアシドーシスと比べアセト酢酸が少ないため尿試験紙では検出しにくい。尿試験紙でケトン陰性でも否定できない。
  16. 糖尿病で通常の食事を摂取しているにもかかわらずケトン体陽性の場合は、著しいインスリン作用不足による糖の利用低下、最悪、糖尿病性ケトアシドーシスを疑う必要がある。
  17. 糖尿病性ケトアシドーシスの加療により、血液のアニオンギャップ重炭酸・pHは半日前後で正常化するが、尿ケトン体の正常化には一日前後かかる。治療効果判定には不適である。
  18. 生理的に尿比重が1.035を超えることはない。超えた場合は、これらの薬剤の投与を疑う。
  19. 尿酸が沈殿してレンガ色を呈するのはウロエリトリンのためである。
  20. 肉眼的血尿で煙状に霞んでみえるものをsmoky urineと呼び、急性糸球体腎炎の特徴とされている。

出典

関連項目

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