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選挙権

参政権のうちの一つ ウィキペディアから

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選挙権(せんきょけん、英語: Suffrage)とは、政治における参政権の一種であり、地域での選挙に参加できる資格またはその地位を指す。これは選挙において投票する権利(投票権)のみならず、選挙人名簿への登録や選挙の公示を受ける権利や、議員定数に著しい不均衡が生じた際に選挙人がその是正のための立法措置を求める権利なども含まれる。

広義では、被選挙権を含める場合がある。

現代においては国民主権の原則から、国民は主権者としての主権行使の一環として選挙に参加できるとする選挙権権利説(せんきょけんけんりせつ)が有力であるが、古くは選挙人団(選挙人の集団)の一員としての公務の一環として選挙に参加する選挙権公務説(せんきょけんこうむせつ)も有力であった。前者の解釈をとった場合には、全ての国民は主権者としてそれぞれが平等の権利を保つために普通選挙が原則となるが、後者の解釈では公務を執行するに相応しいと認定された者にのみ、選挙権の付与を限定しても良いとする制限選挙の肯定を導き出すことも可能であった[注 1]

その選挙の立候補者であっても、選挙権を有しているために他の候補者に投票することは一応可能である(例外はある)。選挙権を有している者のことを有権者とも呼ぶ。

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選挙権の歴史

要約
視点

イギリス

イギリスの議会選挙の歴史は13世紀に遡るとされる[1]。その後、貴族や准貴族といったジェントリが支配した議会寡頭制を経て、1832年の第一次選挙改革でミドルクラスが選挙権を獲得した[1]。この1832年の第一次選挙法改正は「選挙権を資産階級を含む中産階級に拡大した最初の選挙改革」とされている[2]。これ以降、後世の歴史家が古典的民主主義あるいは「議会の黄金時代」と呼ぶ時代が始まった[1]

1838年6月にはロンドン労働者協会(London Working Men's Association)が数名の急進派議員(MPs)と協議して「人民憲章(People's Charter)」を作成し、ここからチャーティスト運動が始まった[1]。人民憲章の6項目の中には男子普通選挙権や秘密投票制、候補者の財産資格廃止などが含まれていた[1]。人民憲章作成の審議時には、選挙権について男子(male)に限定する文言を削る意見がメンバーの約3分の1にあったが、最終的には男子普通選挙権の実現を盛り込むことになった[1]。このときの男女平等の選挙権論者にはロバート・オーエン派やW・ロベット派がいたが少数派にとどまっていた[1]

1850年代後期から1960年代にかけてチャーティスト運動が終焉する一方で、第二次選挙改革をもたらすこととなる職能別組合の圧力団体(National Reform Union、NRU)などによる普通選挙制と秘密選挙制を求める運動がおこった[1]

1867年には伝統的に二つに分かれていた選挙区の種類のうち、バラ(borough、都市区)で戸主選挙権が労働者階級にも認められることとなった(第二次選挙改革)[1]。さらに1884年の第三次選挙改革(第三次選挙法改正)で、もう一つの選挙区の種類であるカウンティ(county、郡部ないし農村区)にも同様の制度が適用され、農業・鉱山労働者にも選挙権は拡大した[1][2]

ただし、1867年改正の選挙法が完全には定着しなかったことなどから、1832年、1867年、1884年と画然と時期を区分することは適切でなく、どれ一つとして同じ選挙権の下では行われなかったというほうが適切という意見もある[3]

20世紀にはいると、1918年の第四次改革で男子普通選挙権が実現するとともに[1][4]、30歳以上の婦人参政権付与が実現した[2]。さらに1928年の国民代表法で女性が男性と平等の選挙権を獲得した[1]

日本

日本においては、1889年大日本帝国憲法及び衆議院議員選挙法が公布され、直接国税15円以上納める25歳以上の男子に選挙権が与えられた。第2次山縣内閣の時(1900年)に直接国税10円以上を納める25歳以上の男子に緩和され、さらに原内閣の時(1919年)に直接国税3円以上を納める25歳以上の男子に再び緩和された。その後1925年に第2次護憲運動がおこり、普選断交を掲げて衆議院選挙に勝利した加藤高明内閣によって25歳以上の男子全員に選挙権が与えられた[5]。 ただし、第二次世界大戦終戦前までは、女性破産者、貧困により扶助を受けている者(例外として、軍事扶助法による扶助がある)、住居のない者、6年以上の懲役・禁錮に処せられた者、華族当主、現役軍人、応召軍人には選挙権は与えられていなかった[5]

終戦後の1946年日本国憲法が公布され、これを受けて新たに制定された公職選挙法で20歳以上の男女と定められた。以来、選挙権は長らく20歳以上であったが、後述する公職選挙法の改正(2015年6月17日成立 同年同月19日に公布後、翌年6月19日施行)で「満18歳以上の男女」に変更されて18歳選挙権が認められるようになった。

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ドメイン投票制度導入論

日本のような既に高齢者有権者数が「20〜35歳未満の有権者数」の比率が3倍以上と圧倒的多数では少子高齢化対策・「現役子育て世代を向いた政治」を民主主義体制下では政治家がしにくいため、選挙権付与年齢未満の未成年国民の数だけ選挙権を現役子育て中の親に追加付与する「ドメイン投票制度」構想がある[6]

各国の選挙権年齢

要約
視点
Thumb
  選挙なし
  25歳
  21歳
  20歳
  19歳
  18歳
  17歳
  16歳
  不明/データなし

選挙権年齢のデータがある192の国・地域のうち、170の国・地域が選挙権年齢が18歳以上となっている[7][8]

世界各国、地域の選挙権年齢

世界、地域における選挙権年齢[9][注 2](2020年7月現在)

のあるものはサミット参加国、太字はOECD参加国)

2007年6月にオーストリアが国政レベルの選挙権年齢を18歳から16歳に引き下げており、ドイツのように一部の州が地方選挙の選挙権年齢を先行的に16歳としている例もある。イギリスやドイツでは16歳への引き下げが議論されている。また韓国は選挙年齢を20歳から18歳に引き下げる段階的措置として、2005年6月に19歳に引き下げた[11]。日本では2015年6月に18歳選挙権を認める改正公職選挙法が成立し[12]2016年6月19日に施行されたことにより、不在者投票・期日前投票を含めれば第24回参議院議員通常選挙(公示日:6月22日・投票日:7月10日)の公示日翌日から18歳・19歳選挙権が行使できるようになった[13](投票日では6月26日告示日・7月3日投票日の福岡県うきは市長選挙が参院選より1週間早く、初の18歳・19歳選挙権となった)。

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各国の選挙権制限

要約
視点

制度上または事実上の理由により選挙権が制限される場合がある[14]

在外国民

イギリスでは軍人や公務員などを除いて在外選挙権が認められていなかったが、1985年国民代表法により議会選挙とヨーロッパ議会選挙について在外選挙権が認められた[14]

精神疾患

イギリスでは、かつてコモン・ローの下で知的障害者及び心神喪失者には選挙権が認められなかったが、2006年の選挙管理法73条でこれらの選挙権の欠格条項は全廃された[15]

フランスでは、かつて成年被後見人は欠格条項とされていたが、2007年の法改正では後見措置を受けたり更新したりする場合に裁判所の判事が選挙権の維持・停止を判断することとなった[15]

カナダでは、かつて選挙法で「精神疾患により行動の自由を制限されている者又は自己財産の管理を禁じられている者」が欠格要件となっていたが1992年に欠格条項は削除されている[15]

オーストリアでは、1972年国民議会選挙法で行為能力を剥奪された者は選挙権を有しないと規定されていたが、1984年の代弁人制度導入により代弁人を付された者が欠格事由となっていた[15]。しかし、1987年に憲法裁判所が欠格条項を憲法違反としたため1987年に削除された[15]

オーストラリアでは、1918年連邦選挙法で「精神疾患の状態にある者」が欠格要件とされていたが、1983年の法改正を経て、1988年の法改正で医師の証明書を添えることで異議を申し立てることができるようになった[15]

日本でも2013年(平成25年)までは、成年被後見人も欠格者であったが、同年3月に東京地方裁判所違憲判決が出されたことを受け、同年5月に改正公職選挙法が成立し、2013年(平成25年)7月1日から選挙権を回復した[16][17][18]

受刑者・仮釈放者

アメリカでは、メーン州とバーモント州を除く全ての州が収監中の重罪犯の投票を禁じているが、大半の州は釈放後あるいは保護観察中に選挙権を回復させている。フロリダを含む少数の州は、元重罪犯が選挙権を回復するまでに追加の待機時間や措置を義務付けており、貧困層やアフリカ系住民が狙い撃ちされていると指摘する声が上がっていた[19]

イギリスの1983年法3条は「有罪判決を言い渡された者は、刑の執行により刑事施設に拘禁されている期間、又はそうでなければ拘禁されるのに違法な不拘束の状態にある期間、議会選挙又は地方政府選挙において、投票に関し法的無資格とする」と規定する[14]。しかし、この規定についてヨーロッパ人権裁判所大法廷はヨーロッパ人権条約(EuropeanConvention on Human Rights)第一議定書3条に違反すると判断した[14]

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脚注

関連項目

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