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日本の租税

日本の行政 ウィキペディアから

日本の租税
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日本の租税(にほんのそぜい)は、国税地方税からなる。日本において租税は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と日本国憲法第30条で規定されている。

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OECD各国税収のタイプ別GDP比(%)。
水色は国家間、青は連邦・中央政府、紫は州、橙は地方、緑は社会保障基金への供出[1]

租税の多くは申告納税制度が採用されている。納税者は年末調整確定申告などを行うことにより、自ら税を納税する。

日本一般政府歳入(%, 2019年)[2]

  社会保険拠出 (39.8%)
  物品税・消費税 (20.1%)
  個人所得税 (18.8%)
  法人税 (13.0%)
  資産税 (8.0%)
  その他 (0%)
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租税の基本原則

納税の義務

日本国憲法第30条では、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。」と納税の義務について規定している。同条は国民に納税の義務を課したものとして国家による徴税の根拠となっている。

租税法律主義

租税法律主義とは、租税は、民間の富を強制的に国家へ移転させるものなので、租税の賦課・徴収を行うには必ず法律の根拠を要する、とする原則。現代では、ほとんどの民主的な国家で租税法律主義が憲法原理とされており、大日本帝国憲法では第62条が、日本国憲法では第84条がこれを定めている。伊藤博文著憲法義解は大日本帝国憲法第62条の租税法律主義を次のように解説している[3]

新に租税を課するに当たっては、議会の協賛を必要とし、之を政府の専行に任せないのは、立憲政の一大美果として直接臣民の幸福を保護するものである。蓋し、既に定まった現在の税の外に、新に徴税額を起し及び税率を変更するに当たって、適当な程度を決定するのは、専ら議会の公論に依頼せずにする事は出来ない。もし、この有効な憲法上の防範がなければ、臣民の富資はその安固を保証する事が出来ない。

この原則が初めて出現したのは、13世紀イギリスのマグナ・カルタである。近代以前は、君主や支配者が恣意的な租税運用を行うことが多かったが、近代に入ると市民階級の成長と法治主義の広がりに伴い、課税に関することは課税される国民側の代表からなる議会が制定した法律の根拠に基づくべしとする基本原則、すなわち租税法律主義が生まれた。

租税公平主義

租税公平主義とは、租税は各人の担税力(租税負担能力)に応じて公平に配分されるべきであり、租税に関して全ての国民は平等に扱われるべきだという原則である。この原則は、日本国憲法第14条第1項が定める平等原則が、租税の分野に適用されたものである。

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政治過程

日本の税制はほぼ毎年改正されている。通常のスケジュールでは、所得税法人税の場合は財務省主税局が原案を作成し、12月末に税制改正大綱が示される。翌年1月に内閣が法律案綱領を閣議決定し、内閣提出法案の形で国会に提出、3月末に成立する[4]

租税法の成立・改正過程では税制調査会が大きな影響を与えている。通常、税制調査会は内閣総理大臣諮問機関審議会)・政府税制調査会政府税調)と政権党(主に自由民主党)の党組織たる自由民主党税制調査会党税調)がある。政府税調が基本的な事項の調査内容を示し、党税調が細部(特例・免除、租税特別措置法)を決めていくという方法が採られている。60年代には政府税調が中心的な役割を果たしていた。高度経済成長が終わり、税収の自然増がなくなると政権党の自民党税調の影響力が増大する[5]。しかし、21世紀には党税調の力も落ち[6]総理大臣官邸が自民党の党税調を押し切ったとする報道も見られるようになった[7]

税制の改正は利害関係者から与党・省庁などへの要望(インプット)を受けて、租税法令の形で制定(アウトプット)される。施行された法律は様々な利害関係者に影響を当たれるため、彼らが与党・省庁などに要望(インプット)をする。このようなサイクルが毎年繰り返されている[8]

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行政過程

法令解釈

財務省外局で国税の賦課徴収を担当する国税庁は国税徴収を行う執行機関であり、適切・公平な賦課徴収を実現するために法令解釈や事務手続きなどで周知・広報を行っている。このうち、法令解釈通達は国税庁長官から職員への命令で、法規ではなく形式的には行政組織内のみを拘束するが、実質的には納税者に大きな影響を与える。文書回答事例では、課税関係が不明な場合、納税者が税務署に紹介して文書による回答を得ることができる。

徴税方法

賦課された租税を徴収(納税)する方法として、普通徴収特別徴収源泉徴収などの方法がある。賦課された租税が滞納された場合、徴収権者は一定の要件により、滞納者の財産を差し押さえ換価するなどの方法により、滞納された租税を強制的に取り立てることができる。詳細は滞納処分を参照のこと。

一覧

要約
視点

ここでは日本の租税の概要を、主として内部リンクを区分して示す。

さらに見る 法定外普通税, 法定外目的税 ...

廃止されたものなど

  • 国税
  • 道府県税
    • 特別地方消費税:平成元年3月31日法律第14号により料理飲食等消費税から名称変更後、平成9年法律9号により平成12年3月31日をもって廃止
    • 狩猟者税:昭和38年狩猟免許税と目的税である入猟税の創設に伴い廃止
    • 狩猟者登録税:昭和54年3月31日法律第12号により狩猟免許税から名称変更後、平成16年3月31日法律第17号により廃止
    • 入猟税:平成16年3月31日法律第17号により廃止
  • 市町村税
    • 電気税:昭和49年3月30日法律第19号により電気ガス税から分離後、平成元年3月31日法律第14号により廃止、消費税の創設に伴うもの
    • ガス税:昭和49年3月30日法律第19号により電気ガス税から分離後、平成元年3月31日法律第14号により廃止、同上
    • 木材引取税:平成元年3月31日法律第14号により廃止、同上

租税納付方式

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税収の推移

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日本の一般政府部門税収(GDP比)。棒グラフは総税収。
青は個人所得税、橙は法人税、緑は社会保険、紫は消費税、赤は資産税

国税(一般会計・特別会計)収入

財務省の統計を参照(単位:億円)

  • 平成17年度 522,905(同年度租税総額の60.0%)
  • 平成16年度 481,029
  • 平成15年度 453,694
  • 平成14年度 458,442
  • 平成13年度 499,684
  • 平成12年度 527,209
  • 平成11年度 492,139
  • 平成10年度 511,977
  • 平成9年度 556,007

地方税収入

総務省の統計を参照(単位:億円)

  • 平成17年度 348,044(同年度租税総額の40.0%)
  • 平成16年度 335,388
  • 平成15年度 326,657
  • 平成14年度 333,785
  • 平成13年度 355,488
  • 平成12年度 355,464
  • 平成11年度 350,261
  • 平成10年度 359,222
  • 平成9年度 361,555
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歴史

要約
視点

ここでは、「中央政府の財源となるもの」と「地方政府の財源となるもの」を合わせて示す[注釈 3]

弥生

  • えつき(労役、兵役、絹、綿など税の総称)
  • 税(たちから:穀物による物納)
  • 調(みつぎ:穀物以外の物税)
  • 役(えだち:労役)

飛鳥時代-奈良時代

  • 公事(くじ:税の総称)
  • (そ:口分田収穫の3%)
  • (よう:布の物納、男子のみ)
  • 調(ちょう:絹、地方特産物を運搬納税)
  • 調副物(ちょうのそわつもの:紫、紅、茜、麻、胡麻油、紙、鹿角、鳥の羽、砥石、塩、漆などから一種類を納入)
  • 雑徭(ぞうよう:年60日間の労役)
  • 歳役(さいえき:年10日間労役、庸との選択性)
  • 兵役(へいえき:宮中警護、九州警護)
  • 仕丁(しちょう:政府雑用)
  • 出挙(すいこ:稲を種もみ用に貸し付け秋に5割の利息を回収)
  • 義倉(ぎそう:雑穀を飢饉用に供出)

平安時代

  • 年貢(ねんぐ)
  • 公事(くじ:糸、布、炭、野菜などの手工業製品や特産品)
  • 夫役(ぶやく:労役)
  • 国役(くにやく:朝廷・国衙が課した課役)

鎌倉時代

  • 年貢(ねんぐ:全収穫高の30-40%、別当とも)
  • 公事(くじ:雑税。藁、むしろ、薪、炭、布、絹、塩、魚類など)
  • 加地子(かじし:年貢以外の、小作料。下地とも)

足利時代

  • 公用銭、臨時役(守護、地頭に課税、労役のかわりに金銭納付)
  • 土倉役(どそうやく:質屋営業に課税)、酒屋役(さかややく:酒造業の酒壷数に応じて課税)
  • 五山官銭(五山各寺の住持就任に対する謝礼金)、五山献銭(献上金)
  • 段銭(たんせん:一国平均に田地の段数に応じてかけられた臨時税)、棟別銭(むねべつせん:社寺、朝廷の造営や修復許可料)、徳政分一銭(徳政令の手数料)
  • 年貢、公事、夫役
  • 関銭(せきせん:関所通行税)、津料(つりょう:入港税)
  • 間別銭(都市居住税)
  • 明朝頒賜、銅銭、抽分銭(外国貿易許可税)
  • 勅役、天役、院役、神役、寺役、本家役、領家役、国役、武家役、守護役、陣夫、御家人役
  • 座役(ざやく:座での独占販売権に対する免許税)
  • 地子(じし:田、畑、林、家屋などの不動産保有税)

織豊時代

  • 年貢(ねんぐ:収穫の3分の2)
  • 夫役(ふえき:築城などの労役提供)

徳川時代

江戸時代後半の発展の理由の一つに、抜け穴だらけの検地(山奥の隠し田・米以外の畑は対象外)の結果、低税制であったからという事実がある[11]

  • 本途物成(ほんとものなり:年貢、米収穫の40-50%、一部銀、大豆による石代納が認められた)
  • 小物成(こものなり:山林でのまき、炭、草の収穫に対して物納又は金銭で納税)
  • 伝馬宿入用(宿場経費、高掛三役の一つ)
  • 六尺給米(江戸城台所人夫費、高掛三役の一つ)
  • 蔵前入用(浅草米蔵人夫費、高掛三役の一つ)
  • 伝馬役宿駅に人馬を提供、助郷役もこの一種である)
  • 国役(朝鮮使節の道中入用や河川の修理費)
  • 上納(参勤の期間短縮の見返りの米年貢、上げ米とも)
  • 運上(農業以外の営業税)、冥加(本来は献金、後に営業税)

明治維新以後

明治時代初期には、税収に占める地租の割合が圧倒的であった。その後、1899年(明治32年)には、酒造税が税収に占める割合がトップに立った(28%)。また、消費税や課税等を合せた広義の消費税は、1907年には過半数を占めるまでになった。すなわち、明治年間を通じた税収の変化としては、地租優位から間接税優位の時代への移行が見られたといえる。

軍事費確保のために、可能な限り税収を増やすため1940年度の税制改正で、直接税(法人税・所得税)の比重が高まった[12]

終戦以後

  • 1946年 財産税:10万円以上の財産を所有する個人に一度限りの課税。戦時補償特別税:戦時補償請求権に100%課税。
  • 1947年 贈与税、事業税、電気ガス税、軌道税、軌道税付加税の創設
  • 1948年 固定資産税の創設:前年に国税の地租が廃止された。取引高税創設:主食、味噌、醤油、家賃、入浴料を除く取引高に1%の税率で課税され、取引高税印紙で納入。1年で廃止された。
  • 1949年 シャウプ勧告。日本の戦後税制の土台となった。第二次世界大戦後、連合軍は、民主的な政府の下で平等な生活をさせたい考え、当時としては実験的な直接税中心の税制を日本に持ち込んだ[13]
シャウプ勧告以降
消費税施行以後
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脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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