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東京応化科学技術振興財団
川崎市中原区に本部を置く公益財団法人 ウィキペディアから
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公益財団法人 東京応化科学技術振興財団(とうきょうおうかかがくぎじゅつしんこうざいだん)は、科学技術に関する研究及び交流に対する助成を行うことを目的に、1987年に設立された法人である。本部を神奈川県川崎市中原区に置く。
事業
1987年、東京応化工業創業者の向井繁正は、同社の創業50周年および株式上場、自身の米寿を記念して、私財を提供して「財団法人東京応化科学技術振興財団」を設立した。発起人には向井と、当時の東京応化工業社長の伊藤毅雄、科学者の戸田昭三[注釈 1]、本多健一、藤嶋昭、事務を担う武井實の計6名が名を連ね、科学技術庁との仲介には当時の新技術開発事業団(現科学技術振興機構)参事役の児玉柳太郎の協力を得ることができた[2]。
1988年5月、本多健一が2代目理事長に就任[3]。1990年に、科学技術の振興に関する優れた研究業績を対象とする表彰制度「向井賞」を創設。1992年度からは向井記念科学講演会を開催し、「研究費の助成」の研究成果発表会を同時に開催している[4]。2006年4月3日に、藤嶋昭が3代目理事長に就任した。2006年度は東京応化工業の増配により、財団は600万円ほどの増収となった。かねてから青少年の理科離れを憂慮している藤嶋は、増収となった分を使い、理科教育の助成事業を提言。同年度より科学教育の普及・啓発活動を行うボランティア団体に対する助成を実施した。2011年度にはさらなる増収を受け、藤嶋の提案により、科学教育の普及活動を書籍化。東京書籍『ヤングサイエンス選書』シリーズや、学研プラス『開け ! 科学の扉』の発刊支援を実施した[5]。
2008年に施行された公益法人制度改革3法案により、既存の財団法人は2013年までに一般財団法人か公益財団法人のいずれかに移行する必要が生じた。収益事業を行わず、助成事業を目的としていることから公益財団法人を目標としたが、財団役員が助成対象の推薦を行っていた点が公益法人認定法第2条第4項で公益目的事業として定める「学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。」の“不特定かつ多数の者”に該当しない恐れがあることが判明した。同種の助成事業を実施している団体では、全国の大学や公立研究所に募集をかけ、多額の費用をかけて選考を行っているが、そこまでの費用を捻出することは困難であった。日本化学会より、学術団体に推薦枠を付与するアイデアが寄せられた。日本化学会は会員数3万人で、日本国内の化学系研究者の多くが加入していることから「不特定多数」の条件に合致し、会報を通じて周知を図ることも可能である。より広く募集を行うため、日本化学会・電気化学会・高分子学会・表面技術協会・エレクトロニクス実装学会の5団体の協力を得て、財団の理事・評議員の合わせて7つの推薦枠を設けることとした。内閣府への申請が認められ、2011年9月27日に「公益財団法人東京応化科学技術振興財団」に移行した[6]。
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資金運用
設立初年度の預金利率は2.09%。ピーク時の1990年には6.85%で、2739万円の利息収入があったが、利率の低下により減少に転じた。東京応化工業の1株当たりの配当は初年度の13円から2023年12月期には168円[7]まで上昇し、2015年度の配当収入は初年度から12倍に増加した[8]。
2025年6月30日現在の財産目録によると、配当を助成・表彰事業および法人会計に使用する目的で東京応化工業の株式を2,954,160株、約124億円相当を保有。他に、配当を法人会計に充てるため三菱UFJフィナンシャルグループを60,000株、みずほフィナンシャルグループ21,000株、ENEOSホールディングス106,000株、日本郵政52,000株、ブリヂストン11,000株などを保有している[9]。2024年7月1日-2025年6月30日の正味財産増減計算書内訳表によると、公益目的事業会計で1億6934万円、法人会計で3669万円の配当収入があり、推薦図書購入費用助成金5510万円、科学教育の普及・啓発助成金2480万円、研究費助成金2700万円、向井賞表彰経費・賞牌資産贈呈517万円などに使われた[10]。
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向井賞
- 第1回(1990年) - 小門宏、光記録材料に関する研究
- 第2回(1991年) - 北尾悌次郎、機能性色素材料
- 第3回(1992年) - 徳丸克己、光化学反応の有機物理化学的手法による研究とその展開
- 第4回(1993年) - 大西孝治、個体触媒反応機構に関する基礎研究
- 第5回(1994年) - 山本明夫、有機繊維金属錯体の研究
- 第6回(1995年) - 笛木和雄、個体材料の物理化学的研究
- 第7回(1996年) - 国武豊喜、固体二分子膜の開拓と自己組織性分子集合体の研究
- 第8回(1997年) - 増子曻、金属化学プロセスの電気化学的研究
- 第9回(1998年) - 遠藤剛、新しい開環重合の開発と機能
- 第10回(1999年) - 曽我直弘、無機材料の基礎科学と材料設計に関する研究
- 第11回(2000年) - 井上祥平、高分子合成反応のせいみつせいぎょとその展開
- 第12回(2001年) - 伊藤靖彦、溶融塩/高温化学系に関する基礎的並びに開拓的研究
- 第13回(2002年) - 飯島澄男、高分解能電子顕微鏡の開拓とカーボンナノチューブの発見
- 第14回(2003年) - 玉尾皓平、クロスカップリング反応の発見とその応用
- 第15回(2004年) - 御園生誠、個体触媒の設計と環境触媒への応用
- 第16回(2005年) - 榊裕之、半導体ナノ構造の設計・評価法と新素子応用の開発
- 第17回(2006年) - 鯉沼秀臣、酸化物の化学と電子機能に関する革新的研究
- 第18回(2007年) - 入江正浩、フォトクロミックアリールエテン分子に関する研究
- 第19回(2008年) - 平尾公彦、量子科学における分子理論の開発
- 第20回(2009年) - 岩澤康裕、分子レベルの触媒表面設計と動的触媒作用に関する研究
- 第21回(2010年) - 増原宏、レーザーを駆使した分子光科学の開拓的研究
- 第22回(2011年) - 井上晴夫、可視光による光化学
- 第23回(2012年) - 川合眞紀、表面単分子スペクトロスコピー
- 第24回(2013年) - 小池康博、フォトニクスポリマーの基礎研究と機能創造
- 第25回(2014年) - 黒田玲子、固体キラル化学の展開と新しいキラル分光計の開発
- 第26回(2015年) - 橋本和仁、電気化学反応を基礎とするエネルギー・環境科学に関する研究
- 第27回(2016年) - 逢坂哲彌、電気化学ナノテクノロジーによる学から産への技術発信
- 第28回(2017年) - 大越慎一、固体物理化学に立脚した新規機能性物質の開拓
- 第29回(2018年) - 本間英夫、湿式成膜による機能性薄膜の創製
- 第30回(2019年) - 山下正廣、次世代型高次機能性ナノ金属錯体の創成
- 第31回(2020年) - 西出宏之、ラジカル高分子の創出と電荷輸送・貯蔵への実践的展開
- 第32回(2021年) - 益田秀樹、アノード酸化プロセスにもとづく規則ナノ構造の形成と機能化展開
- 第33回(2022年) - 渡邉正義、イオン液体を基軸とする有機イオニクス材料の設計と創成
- 第34回(2023年) - 片岡一則、高分子合成化学に立脚した新規薬物送達システムの開発
- 第34回(2023年) - 根岸雄一、金属ナノクラスターの原子精度での制御とエネルギー・環境触媒への応用
- 第35回(2024年) - 金村聖志、二次電池・燃料電池用新材料の開発と実デバイスへの応用
- 第36回(2025年) - 工藤昭彦、カーボンニュートラルを目指した光触媒の開発
脚注
外部リンク
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