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警報 (気象庁)

日本の気象庁が発表する予報 ウィキペディアから

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警報(けいほう)とは、暴風大雨大雪などの重大な災害が起こるおそれがある場合に、気象庁(各気象台)が警戒を呼び掛けるために発表[注 1]する予報。一般に発表される警報のうち、気象に関するものは暴風、暴風雪、大雨、大雪、高潮波浪洪水の7種。いずれも下位に注意報があり、洪水以外の6種は上位に特別警報がある[1][2]

警戒レベルでは大雨警報および洪水警報は警戒レベル3高齢者等避難)、高潮警報は警戒レベル4(速やかに全員避難)にそれぞれ相当し、避難指示などの目安となる[3]

本項目では、一般利用のための警報のほか、気象業務法が規定する警報全般、特定業務・用途のための警報を解説する。地震の警報(緊急地震速報)、火山の警報(噴火警報)、津波警報の詳細はそれぞれの項目を参照。

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定義と区分

要約
視点
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日本における気象業務は気象業務法に定められており、「警報」は「重大な災害の起るおそれのある旨を警告して行う予報」と定義されている。気象庁には、業務として気象、地象、海象の予報や警報を行う責務があり、同法と関連する規定はその種類および、伝達や周知について、気象庁以外による警報の制限などを定めている[2][4]

警報には、一般利用のための警報[注 2]と特定業務・用途(航空機、船舶、水防活動)のための警報がある[2]

警報の区分は気象業務法施行令と気象庁予報警報規定にまたがって定められ、またいくつかの警報は実務上独立して発表せず他の警報に含められている。一般向けの警報は施行令に9つ定められているが、予報警報規定にはそれを組み替えた10種類の警報が定められている。そのうち3つは地震・火山・津波に対するものなので、実際に発表される一般利用のための気象に関する警報は暴風、暴風雪、大雨、大雪、高潮、波浪、洪水の7種類である(2022年時点)[1][5][6][7]

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特定業務・用途のための警報として気象庁の責務に規定されているのは、航空機向け、船舶向け[注 3]、および水防活動向けの3種。前2つは国際航行に関わることから世界気象機関(WMO)、国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機関(IMO)の国際規格に適合する形で行われている。なお鉄道電気などその他の特定事業向けの予報・警報の規定もあるが責務ではなく、予報は提供しているものの警報はない[2][5][8]

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水防活動向けの警報は気象業務法及び水防法[注 4]が定めるもので、気象庁が単独または河川管理者(国土交通省または都道府県)との協定により指定した河川について共同で発表する。この区分として施行令に4種類定められているが、予報警報規定により一般向けの各警報を以って代用されている[2][5][10][6]。洪水警報は、主に一級河川において別途発表される指定河川洪水予報[注 5]と連動しており、それ以外の中小河川では、河川ごとに洪水予報を個別に発表することが難しいためその地域の洪水警報を以って代用する。

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  • 地震火山が警報の対象に加えられたのは2007年の法改正で、それまでの火山情報(火山活動度レベル)などは警報でも予報でもない情報提供の位置付けだった[11]
  • 2025年4月25日、噴火に伴い多量の火山灰が降ることを想定し「火山灰警報・注意報」の導入を検討していると発表された[12]
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一般に発表される警報

要約
視点

2022年時点[1][7][13]

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注意報のうち、濃霧・雷・乾燥・なだれ・着氷・着雪・霜・低温・融雪の9種については、対応する警報が存在しない[13]。これらの現象については、被害が局所的なものにとどまったり、あまり大きな災害をもたらすものでなかったりするためと考えられる。

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対象区域と発表機関

警報・注意報の対象区域の区分は2010年5月から、原則として市町村を単位として、一部では市町村内を分割して設定された区域、また東京23区は各特別区を単位としている[17][18]。予報区としては府県予報区やそれを分割した一次・二次細分区域が定められている[注 8](気象庁 「警報・注意報や天気予報の発表区域」参照)。

なお、東京都小笠原村は長らく注意報の対象ではなかったが、人が居住している父島母島とその周辺海域に限り2008年3月26日から開始されている[19]

警報・注意報は、担当気象官署である地方気象台(一部は測候所が分担)・管区気象台が発表する[注 9][6]

基準

具体的な単位時間当たりの降水量風速などの気象要素、それらの複合指標を数値化して予め基準を定めている[注 10]。地理的な特性、過去の災害事例や観測値などが考慮され、地域により差がある[注 11]。概ね類似した基準だが、大雨や洪水、高潮などは市町村[注 12]ごとに土壌雨量指数や潮位などが細かく設定されている[18][14]

表題ごとに基準は過去に何度か全面的に改正されている。2010年5月からは大雨警報の土砂災害基準で24時間雨量に代えて土壌雨量指数、洪水警報で流域雨量指数、2017年からは大雨警報の浸水害基準で1時間・3時間雨量に代えて表面雨量指数という複合指標をそれぞれを導入。警報の効果低下を招く空振りを低減する精緻化を図り、また同時期に危険度分布(キキクル)の提供を開始した[18][20]

なお、直前に地震(おおむね震度5強以上)・火山噴火が発生したり、豪雨に起因する大規模な災害[注 13]があったなどの状況に応じて、基準が引き下げられる場合がある。

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伝達

要約
視点

警報が発表された場合、国・地方自治体の機関、さらには個々の住民などは災害の発生に備えて要員の出動、高齢者等避難避難指示、通行制限、危険箇所からの退避などの防災対応を行う必要がある。このため、気象庁の発表した警報についてはその解除も含めて以下のように通知・周知の徹底を図るための伝達系統が制度化されており防災対応の迅速かつ確実な実施を支援するようになっている(気象業務法第15条、同法施行令第7条)[2][5]

  • 警察庁の機関・都道府県警察(火山現象・津波の各警報)
→関係市町村長→公衆・所在の官公署
→航行中の航空機
  • 国土交通省の河川管理機関(水防活動用各種警報)
決まった周知先はないが、各種の水防活動のトリガーとなる。気象警報が発表された場合、防災の観点から河川に限らず地方整備局に所属する該当地域の各河川や国道事務所が特別体制に入るケースが多い。
  • 海上保安庁(気象・高潮・波浪・火山現象・津波・海上の各警報)
→航海中および入港中の船舶
  • 都道府県知事(気象・高潮・波浪・火山現象・津波・土砂崩れ・洪水の各警報、水防活動用各種警報、共同洪水警報
→関係市町村長→公衆・所在の官公署
→関係市町村長→公衆・所在の官公署
  • NHK(気象・高潮・波浪・地震動・火山現象・津波・土砂崩れ・洪水の各警報)
→公衆(放送の義務[注 14][注 15]

主な伝達手段としてテレビ放送やデータ放送ラジオ放送インターネットが挙げられる[8]スマートフォンアプリ、登録型メールなどもある。

技術的には、気象庁から各専門機関や自治体へ、ADESS(アデス)と呼ばれるシステムを起点にして、直接あるいは気象業務支援センターを通じて、電文データとして配信される。データは統一した気象庁XML形式で、その他の防災気象情報も同様。古く電報の流れを汲んでテキスト(文章、平文)形式である2バイト文字のかな漢字形式の時代が続いていたが、2011年にXML形式が開始し、2018年にはかな漢字形式が廃止された[21][22]

市民への伝達手段が乏しかった時代には日常の天気予報を含めて吹き流し、色灯、サイレンによる周知が行われていて、その様式を示す信号標識が定められていた[23]。現在でも、津波のように突発的な災害ではサイレンは有効な周知手段のひとつである[24]

また、気象業務法以外にも災害対策基本法やこれに基づく地域防災計画などにおいて官民の各機関が災害の発生の危険を周知する活動のひとつとして、気象庁の警報を伝達する手続が定められている(後述)。

船舶向け海上警報は、GMDSS規格の海上保安庁の無線システムや気象庁の船舶気象無線・気象無線模写通報(JMH)・インターネットを通じ伝達される[8]

航空機向け飛行場警報・空域警報は、国土交通省航空局経由や気象庁の東京VOLMET放送を通じ伝達される[8]

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警報の独占

気象業務法第23条により、気象庁以外の者が警報を行うことは禁じられており[2]、情報が錯綜することによる防災対応上・公安上の混乱を防止している。これと同様の規制はアメリカにおけるSingle "Official" Voice原則など、世界的にみられる。

なお、通信が途絶するなどして気象庁の津波警報が利用できない場合に市町村長が行う津波警報は、気象業務法施行令第8条で“気象庁以外の者の行うことができる警報”とされ許容されている[2]。また現地で確認した異変などに基づいて土地の管理者などが行う地象(がけ崩れなど)の警報は、緊急避難的なものとして許容されている。

洪水、土砂崩れ、高潮、津波、噴火、火山ガスについては、2023年の法改正後、各分野につき審査を受け許可された予報業務許可事業者による独自予想に基づいた予報が可能となっている(警報は引き続き不可)が、防災上の混乱を防ぐため、予報の利用者を「気象庁の警報・予報との違いを事前に説明した者」に限定している[25][26]

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警報の補足

警報の発表後に特に警戒しなければならない状況が生じた場合に、警報を補足する気象情報が発表されることがある。例えば大雨警報や特別警報発表中に数年に1回程度しか生じないような猛烈な雨を観測した場合には記録的短時間大雨情報が発表され、発生しつつある災害への警戒が呼びかけられる[7]。また土砂災害の危険性が高まっている場合、土砂災害警戒情報を発表し市町村単位で土砂災害への警戒を呼びかけることも行われている[27]

警報を発表するような気象があらかじめ予想される場合には早期注意情報(警報級の可能性)が発表される。主に当日夜や翌日、最大で5日後まで[13]タイムラインも参照。

警報・注意報の構成では発表文(注意警戒事項)とともに「今後の推移」の発表も2017年出水期から行われている。今後の危険度を、3時間ごと時系列表の形で、雨量・風速・波高などの値を警報級・注意報級などの色分けと共に示す。概ね翌日までの予測期間以後は「以後も警報級」などと示される場合もあり、また予測の確かさが低い雷雨などでは、ある時間以降は灰色で不確定であることが示される場合もある[28]

水害(土砂災害・浸水・洪水)については、ホームページ等で地図上に危険度を5段階で示す危険度分布が提供されており、1km単位の細かい分布を確認できる[13]。5段階のうち下から3段階目の赤色が「警戒」(警戒レベル3)、4段階目の紫色が「危険」(警戒レベル4)相当[29]

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特定業務・用途のための警報

飛行場警報

2022年時点。原則として、発表時点から6時間後までの予報に基づいて発表する[9]

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航空交通管制も参照。

海上警報

2022年時点。原則として、発表時点から24時間後までの予報に基づいて発表する。警報電文では海域ごとの予報のほか、荒天の原因である温帯低気圧や熱帯低気圧(台風)の位置や進路、強風の範囲などを伝える[30][31]

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航行警報海上保安庁所管)も参照。

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歴史

要約
視点

1883年明治16年)3月1日に東京気象台(現在の気象庁)が日本の気象機関として暴風警報の業務を開始。なお、毎日の天気予報の開始はこの1年ほど後の1884年(明治17年)6月1日である。これ以降、大きな警報体系の変更としては1935年(昭和10年)の気象特報(現在の注意報)の新設、2013年(平成25年)の特別警報の新設が挙げられる[34][35]。警報の種類は社会の要請、監視・予測技術の向上などにより数度に亘って変わってきた。当初は暴風のみ、1950年に暴風雨・暴風雪・大雨・大雪の4種、1953年に高潮、波浪、洪水が追加され7種、1988年に暴風雨が廃止・暴風に変更されて現在に至る。

明治から昭和前期

  • 1883年3月1日 - 東京気象台(現在の気象庁)が毎日の天気図作成と暴風警報の業務を開始。5月26日には初めて全国暴風警報が発表。新聞記事によると関西では暴風に先だって連絡があり船の出航を見合わせることができたという[34][36][35]
  • 1883年7月1日 - 内務省地理局が暴風警報信号標式を制定。高い柱に赤球を掲げて警戒の旨を周知することとした[34]
  • 1908年(明治41年)4月1日 「天気予報暴風警報規定」、「地方天気予報、地方暴風警報信号標識」を制定。暴風警報は「風強かるべし」、「風雨強かるべし」、「暴風雨のおそれあり」の3種類に分けられる。
  • 1935年(昭和10年)7月15日 - 暴風警報の下位に気象特報(現在の注意報)を設ける。前年9月の室戸台風の教訓を受け、地域によっては頻繁になりすぎて鈍感になる傾向があった警報をより警戒度の高い情報に位置付ける。暴風警報 は「暴風雨、暴風雪襲来し災害の大ならんとする見込みなるとき」。気象特報 は「風雨、風雪、大雨、大雪、その他特に注意を要する気象上の異常現象の起こらんとするとき」。電報や信号標についても改正。また全国10気象区をさらに小気象区に分ける[34][37][注 16]
  • 1950年(昭和25年) - 運輸省告示の気象予報規程およびその実施要領により、気象警報の種類として暴風雨、暴風雪、大雨、大雪を規定。なおこの頃のみ、中央気象台(現在の気象庁)が全国単位で発表する台風注意報、台風警戒報も存在した[38]

なお、太平洋戦争の期間に敷かれた気象管制では全国で警報・特報を含む天気予報の公表が中止されたほか、日中戦争時にも中止された期間があった。ただし、特に甚大な被害が予想される場合は「特例暴風警報」を発表することとしていたものの、情報は限定的で十分ではなく、1942年(昭和17年)周防灘台風などでは被害を拡大させた[39][40]

気象業務法制定以降

  • 1952年(昭和27年)12月27日 - 気象業務法施行。同法の体系下で翌1953年に運輸省告示の気象庁予報警報規程を制定。警報は「重大な災害が起こる恐れのある旨を警告して行う予報」と規定され、気象警報に高潮、波浪、洪水が追加。気象特報は気象注意報となる[34][38]
  • 1954年(昭和29年)8月15日 - 警報・注意報の基準に具体的な数値基準が導入される(気象官署予報業務細則の制定)[41][42]
  • 1955年(昭和30年) - 気象業務法・水防法改正により指定河川洪水予報を導入。当初の対象は一部の大河川のみ[43]
  • 1960年(昭和35年)7月 - 前年9月伊勢湾台風の教訓を受け、気象庁予報警報規程を改正。警報文の発表を警報ごと個別から一括・標題に警報名列挙へ、また予報区を府県から細分区域(現在の1次細分)へと細かくして変更した(発表は府県ごと)[34]
  • 1972年(昭和47年)6月 - 大雨警報の基準に1時間・3時間雨量が導入。短時間強雨による被害が目立った昭和42年7月豪雨の教訓から検討が進められていた[34][41]
  • 1979年(昭和54年)7月 - 大雨警報について警報名の後ろに1次細分区域名を括弧付きで明記するよう運用変更[34]
  • 1983年(昭和58年)8月 - 大雨警報を補完する記録的短時間大雨情報の創設、警報文の冒頭に防災上重要な事項を付記する「見出し的警告文」の開始[34]
  • 1987年(昭和62年)6月 - 二次細分区域単位での発表を開始。この区分は各府県で順次細かく改善されていき、2000年には214、この後分割が進み、2004年には364となった[34][41]
  • 1988年(昭和63年)4月1日 - 暴風雨警報を廃止し、新設の暴風警報と既存の大雨警報に移行。雨を伴う可能性のある暴風雨に対して暴風警報が発表されていたが、結果的に雨を伴わない場合があること、雨量予報の精度が向上したことから雨と風を分離して発表することとした[34][44]
  • 2000年(平成12年) - 前年の広島県の土砂災害を受けて、警報文の冒頭に「過去数年で最も土砂災害の起こる可能性が高くなっている」との見出しを付記して土砂災害への警戒を重ねて呼びかける大雨警報の切り替え運用を開始(切り替えの基準として土壌雨量指数を活用)。また2004年には鹿児島県水俣市の土石流災害を受けて表題に「重要変更!」と付記する運用を開始[41]
  • 2005年(平成17年)から2008年(平成20年) - 大雨警報の重要変更に代えて土砂災害警戒情報を各府県で順次開始[41]
  • 2007年(平成19年)12月 - 気象業務法改正により、地震動と火山現象の警報を気象庁の業務に位置付け。同年10月開始の緊急地震速報を警報等に位置付け。噴火警報・噴火予報・噴火警戒レベルの運用開始[45]
  • 2008年 - 大雨警報の基準に雨量と併せ土壌雨量指数を導入[41]
  • 2010年(平成22年)5月 - 警報・注意報の発表単位を市町村ごとに細分化。大雨警報の表題に「土砂災害」「浸水害」を付記する運用変更[45]。大雨警報の土砂災害基準を土壌雨量指数に一本化。洪水警報の基準を流域雨量指数に変更[18]
  • 2013年(平成25年)8月30日 - 警報の上位に特別警報を新設[34][45]
  • 2017年(平成29年) - 大雨警報の浸水害基準を表面雨量指数に変更[20]
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その他

報道などにおいて「○○地方気象台が●●警報(注意報)を発令した」と表現されることがままあるが、正式には「発表」という表現が正しい[46]。なお、災害対策基本法には「災害に関する予報又は警報の発令」が規定されており、これに基づき地方自治体が高齢者等避難避難指示を発することは「発令」という。

日本以外の事例

日本以外の気象当局でも警報類に階級を設けていて、概念は同じではないが、日本の気象庁の「警報」に相当する主なものとして以下が挙げられる。

「警報」「注意報」のような2区分ではなく、日本でも導入された大雨等に関する警戒レベル噴火警戒レベルのような警戒レベルを用いている地域もある。

  • 中華人民共和国 - 警報・注意報の類として、3 - 5段階の警戒レベルにより区分した「预警信号」がある。地方により異なる。警報相当の区別は困難[48][49]突発気象災害預警信号中国語版も参照。
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脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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