無声歯茎鼻音

無声歯茎鼻音（むせい しけい びおん）とは、子音の種類の一つ。舌端と歯茎で閉鎖を作り、口蓋帆を下げて呼気を鼻へも通すことによって生じる音。国際音声字母では [n̥] と書く。

無声歯茎鼻音
n̥
IPA 番号	116 + 402
IPA 表記	[n̥]
Unicode	U+006E U+0325
文字参照	n̥
JIS X 0213	1-3-78 + 1-11-71
X-SAMPA	n_0
Kirshenbaum

特徴

• 気流の起こし手 - 肺臓気流機構によって生じる呼気。
• 発声 - 声帯の振動を伴わない無声音。
• 調音
  • 調音位置 - 舌端と歯茎による歯茎音。
  • 調音方法
    • 口腔内の気流 - 舌の中央を気流が通る中線音。
    • 調音器官の接近度 - 完全な閉鎖とその開放による閉鎖音。
    • 口蓋帆の位置 - 口蓋帆を下げて鼻腔へも呼気を送った鼻音。[n̥] には以下の四つの特定の変種がある。

• 歯音：舌尖または舌端を上歯に接触させて調音され、それぞれ舌尖音（apical）および舌端音（laminal）と呼ばれる。
• 歯茎歯音：舌尖を歯茎隆起に、舌端を上歯の後方に接触させて調音される。
• 歯茎音：舌先または舌尖を歯茎隆起に接触させて調音され、それぞれ舌尖音および舌端音と呼ばれる。
• 後部歯茎音：舌尖または舌端を歯茎隆起の後方に接触させて調音され、それぞれ舌尖音および舌端音と呼ばれる。

存在

歯音または歯茎歯音

言語		単語	IPA	意味	注釈
Iaai					/m̥ m̥ʷ n̪̊ ɳ̊ ɲ̊ ŋ̊/ とこれらの有声音と対立する

歯茎音

言語		単語	IPA	意味	注釈
アレウト語		uhngix	[un̥ɣix]	'姉'	有声接近音および鼻音は、無声子音と接する場合や語末において、部分的に無声化することがある
アリュティーク語		pat'shnarluni	[pat.sn̥aχluni]	'(天気が)寒い'	有声の/n/と対立する
ビルマ語[1]		နှစ်/hnac	[n̥ɪʔ]	'2'
中央アラスカユピック語[2]		ceńa	[t͡səˈn̥a]	'端'
英語	容認発音	chutney	[ˈt̠ʃʌˈt͡n̥ːɪ]	'チャトニー'	[3]
		cotton	[ˈkɒˈtn̥̍]	'コットン'
	特定の方言	knee	[n̥iː]	'ひざ'	特定の方言
エストニア語[4]		lasn	[ˈlɑsn̥]	'木製のへら'	/t, s, h/の後の語末の/n/の異音[4]
ミャオ語	白ミャオ語	𖬆𖬰𖬩 / hnub	[n̥u˥]	'日'	有声音の/n/と対立する。青ミャオ語では/n/と合流する[5]
アイスランド語[6]		hnífur	[ˈn̥iːvʏr̥]	'ナイフ'
Jalapa Mazatec[7]		hne	[n̥ɛ]	'滝'	有声歯茎鼻音および喉頭化歯茎鼻音と対立する
キルディン・サーミ語[8]		чоӊтэ/čohnte	[t͡ʃɔn̥te]	'回る'
北部サーミ語		váhnen	[ˈvaːn̥en]	'両親'
ポーランド語		kupn	[ˈkupn̥]	'買う、得る'（複数属格）	無声音の後の/n/の異音
ウェールズ語[9]		fy nhad	[və n̥aːd]	'私の父'	/t/ の鼻音変化として現れる
Xumi	Lower[10]	[n̥ɑ̃˦]		'毛皮'	有声の/n/と対立する[10][11]
	Upper[11]	[n̥ɔ̃˦]

後部歯茎音

言語		単語	IPA	意味	注釈
フェロー語[12][13]		einki / onki	[ˈɔn̠̊t͡ʃɪ]	'nothing'