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第11回国際連合緊急特別総会

国際連合総会の11回目の緊急特別会期 ウィキペディアから

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第11回国際連合緊急特別総会(だい11かいこくさいれんごうきんきゅうとくべつそうかい、英語: Eleventh emergency special session of the United Nations General Assembly)は、2022年2月28日から開催された国際連合総会の11回目の緊急特別会期。2022年2月24日に開始されたロシアのウクライナ侵攻を議題としている。

開催までの経緯

北大西洋条約機構(NATO)への加盟を希望するウクライナと、NATOのこれ以上の東方拡大に反対するロシア連邦の対立は2022年2月24日のウラジーミル・プーチン露大統領による「特別軍事作戦」に発展し、ロシア軍はウクライナへの侵攻を開始。これに対しウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は徹底抗戦を表明し、両国は事実上の戦争状態へと突入した[1]

この事態に対しアメリカ合衆国アルバニアはロシアによるウクライナ侵攻の非難と、即時撤退を要求する決議案を安全保障理事会(安保理)に提出し、2月25日に採決が行われたが当事国かつ議長であるロシアが拒否権を行使したため採択されなかった[2]。これを受けてロシアの国際的孤立を示すためアメリカ合衆国が主導して拒否権のない総会で同様の非難決議採択を目指すこととなり、2月27日に国連総会の緊急特別会合を翌28日より開催するよう要請する決議を安保理で採決し、賛成11、反対1(ロシア)、棄権3票(中華人民共和国インドアラブ首長国連邦)で開催が決定した[3][注釈 1]

緊急特別会合は国連憲章で「国際平和と安全維持の主要な責任を負う」とされる安保理が、常任理事国の不一致で機能不全となった場合に平和のための結集決議に基づいて開かれるが、加盟国の過半数か安保理理事国の9カ国以上の賛成が必要で、安保理による会合要請はイスラエルによるゴラン高原併合問題を取り上げた1982年以来、40年ぶりとなる。

決議名は「Aggression against Ukraine(ウクライナへの侵略)」で、"ロシア"は含まれなかった[4]

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各国の主張

緊急特別会合の開催を提案したアメリカは、すべての国連加盟国が参加できる国連総会の場でウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアを非難する決議案の採決を目指し、ロシアの国際的な孤立をいっそう際立たせ、圧力を強めている。

ロシアのヴァシリー・ネベンジャ英語版国連大使は、今回の軍事侵攻について「ウクライナ東部をめぐる停戦合意(ミンスク合意)の履行をウクライナ側が怠ってきたからだ」と述べて正当化するとともに、「我々の計画にウクライナの占領は入っていない」と述べ、侵攻はウクライナの非軍事化などが目的だと主張している。

決議

要約
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ES-11/1

概要 国際連合総会決議ES-11/1, 投票: ...

3月2日、採決が行われ、賛成141、反対5、棄権35の賛成多数で採択された。決議に法的拘束力は無いが、ロシアによるウクライナ侵攻や核部隊の警戒態勢強化を非難し、ロシア軍の即時撤退などを求めた。また、ベラルーシの関与に関しても懸念を表明した[5]

2014年のロシアによるクリミアの併合を無効とする総会決議では賛成は100か国であったが、今回の総会決議での賛成国数はそれを大きく上回った[6]

非難決議の圧倒的多数の賛成は、法的拘束力がなくとも国際社会でのロシアの孤立を浮き彫りにしたとされるが[7]、敵対的行為自体にのみ反対表明しており、法的拘束力のある国連安全保障理事会のロシア非難決議案では棄権したUAEやサウジアラビア、ブラジルといった中立国も賛成を投じている点に留意。

ES-11/2

概要 国際連合総会決議ES-11/2, 投票: ...

2022年3月23日、会期は継続され、ウクライナからは「ウクライナに対する侵略がもたらした人道的結果」(A/ES-11/L.2)、南アフリカからは「ウクライナにおける紛争により生じる人道的状況」(A/ES-11/L.3)という2つの相対する決議案が提出された[8]。3月24日、決議案A/ES-11/L.2は賛成140、反対5、棄権38で採択された[9]。ES-11/2では民間人やインフラへの攻撃に遺憾の意を示し、増える難民への重大な懸念を表明した。またES-11/1の完全な履行を改めて要請し、人道支援者やジャーナリスト、脆弱な状況にある人々を含む民間人の完全なる保護などを求めた。

ES-11/3

概要 国際連合総会決議ES-11/3, 投票: ...

2022年4月1日、ブチャの虐殺のビデオ映像が公開され、虐殺にロシア軍が関与していることが判明した[10][11][12][13]。4月4日、アメリカの国連大使リンダ・トマス=グリーンフィールドは、ブチャの虐殺に言及し、アメリカは国際連合人権理事会からのロシアの除名を求めると表明した[14]。当時、ロシアは任期3年の理事国となっていた[15]

4月6日、決議案A/ES-11/L.4が提出された[16][17]。過去には、2011年の反政府の抗議者に対するカッザーフィー政権の行動により、リビアのみが組織から除名されていた[18][19]。採決前には、ロシアの国連代表が、各国に対して、二国間関係に影響を与えると強調し、決議に賛成しないあるいは棄権するように要求する書簡を回した[20]

4月7日、総会で採決が行われ、賛成93、反対24、棄権58で採択された[21]。ロシアの任期は2023年までだったが[22]、採決結果を予想し、採決日前に国際連合人権理事会から脱退していたと表明した[23]

ES-11/4

概要 国際連合総会決議ES-11/4, 投票: ...

国際連合総会決議ES-11/4は、2022年10月12日に第11回国際連合緊急特別総会で採択された4度目の決議である。ロシアによるウクライナ4州での住民投票と併合は国際法の下で無効かつ違法であると宣言した上で、すべての国に対してロシアの領土と認めないように要求し、ロシアに対してウクライナの領土からの即時、完全、無条件の撤退を要求している[24]。決議は賛成143、反対5、棄権35の圧倒的な賛成多数で採択され[25]、ロシアの即時撤退を求めた1度目の決議ES-11/1より賛成票が多い[26]

背景

2022年9月23日から27日まで、ロシアはウクライナ4州の併合に関する住民投票を行ったが、一般的には不正投票と見なされている[27]

投票結果を受けて、9月30日にロシアの大統領プーチンがウクライナ4州の併合を宣言、布告したものの、ロシアは併合することになっている地域の大半を支配してはいなかった[28]

9月30日、ロシアは不正な住民投票と併合を違法と宣言する国際連合安全保障理事会の決議案に拒否権を行使した。新たに採用された手続きでは、常任理事国による拒否権の行使により国際連合総会の緊急特別会合が招集されることになっており[29]、緊急特別会合において、ES-11/4の草案ES-11/L.5が提出、採択された[30][31]

秘密投票の提案

決議案の採決に先立ち、各国が特定の立場を公式に表明するのは困難であるだろうとし、ロシアは秘密投票を要求したものの、総会で公開投票に関する採決が行われ、賛成107、反対13、棄権39によりロシアの提案は却下された[32]。一般に、国際連合においては公開投票が行われるため、秘密投票は非常に珍しい[33]

採決

10月12日、国際連合総会で採択に3分の2の賛成を要する決議案の採決が行われ、賛成143、反対5、棄権35で採択された[34]

この決議は、ロシアのウクライナ侵攻を議題とする第11回国際連合緊急特別総会において最も賛成票が多く、2014年のロシアによるクリミアの併合を非難する国際連合総会決議68/262よりも多く賛成票を得ている。このように、西側の支持国による最も楽観的な予測を上回る結果となった[35]

ES-11/5

概要 国際連合総会決議ES-11/5, 投票: ...

国際連合総会決議ES-11/5は、2022年11月14日に第11回国際連合緊急特別総会で採択された5度目の決議である。国際的な賠償メカニズムを創設し、ロシアに対してウクライナへの戦争賠償を行うように要求する内容となっている。

ES-11/6

概要 国際連合総会決議ES-11/6, 投票: ...

国際連合総会決議ES-11/6は、2023年2月23日に第11回国際連合緊急特別総会で採択された6度目の決議である[36]。題名は「ウクライナにおける包括的、公正かつ恒久的な平和の基礎となる国際連合憲章の原則」[37][38][39]

投票結果

各決議における加盟国の投票結果を示す。Yは賛成票、Nは反対票、Aは棄権、空欄は欠席。

  • ES-11/1:題名「ウクライナに対する侵略」
  • ES-11/2:題名「ウクライナに対する侵略がもたらした人道的結果」
  • ES-11/3:題名「人権理事会におけるロシア連邦の理事国資格停止」
  • ES-11/4:題名「ウクライナの領土保全:国際連合憲章の原則を守ること」
  • ES-11/5:題名「ウクライナに対する侵略への救済と賠償の推進」
  • ES-11/6:題名「ウクライナにおける包括的、公正かつ恒久的な平和の基礎となる国際連合憲章の原則」
さらに見る 国名, ES-11/1 ...
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脚注

参考文献

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