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行政拘禁

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行政拘禁[1][2](ぎょうせいこうきん、英語: Administrative detention)、または行政拘束[3](ぎょうせいこうそく)とは、、国家が、刑事上のなく、または対審などの司法的監視がない状態で[2]個人を逮捕・拘禁することである。複数の法域において、これは安全保障上の理由によって行われると主張されている。多くの国々は[4]、行政拘禁をテロリズム反乱への対抗手段や、不法移民の取締り、あるいは現統治体制の保護のための手段として用いていると主張している[5]。「司法なき拘束」とも呼ばれている[6]

一部の法域において、行政拘禁は、対審を経た刑事犯罪に対する有罪判決に基づく拘禁(収監)とは異なり、将来を見据えた手段である。刑事手続が過去志向的であり、被告が過去に犯罪を犯したかどうかを判断することを目的とするのに対し、行政拘禁の根拠は、被疑者が将来的に脅威となる可能性があるという主張に基づくことが多い。行政拘禁は、懲罰的であるというよりも、予防的性質を持つことを意図している(予防拘禁を参照)。この慣行は、市民的および政治的権利の侵害であるとして、複数の人権団体から批判を受けている[7][8]

他の法域においては、行政拘禁は過去志向的、例えば、特定の種類の犯罪に対する処罰の一形態として位置付けられている[要出典]

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各国での事例

要約
視点

予防拘禁#各国での事例も参照のこと。

イスラエル

イスラエルにおける行政拘禁[9]」や「行政拘束[10]」の法的根拠は、建国以来非常事態宣言が出たままになっており、そのため可能であるとされる。

イスラエルおよび占領地では、行政拘禁の根拠法は以下の3つである。

  1. 国防(緊急事態)規則英語版
  2. イスラエル国防軍軍律宣言3号67条ほか
  3. 不法戦闘員拘禁法ヘブライ語版

イスラエル国民が対象になり得るのは事実上1のみで、2は占領地の被占領民(ヨルダン川西岸地区の非イスラエル人)、3はイスラエルが「不法戦闘員」、すなわち国際人道法による保護の対象外と見なした無国籍者および第三国の人物を対象とする法律である。具体的には、レバノンヒズボラ関係者とされる人物や、ガザ地区等撤退後のガザ地区住民の拘束[11]などに適用されている。

犯罪の有無は問題とされず、テロ対策の名目で、主にパレスチナ人を拘禁している。占領地では、本土とは異なるイスラエル国防軍によるイスラエル国防軍軍律により非ユダヤ人住民を統制しており、軍は刑罰を含め、容易に処分を実行できるようになっている。軍律では、「地域や公共の安全」に必要と判断すれば、被拘束人や弁護士には証拠の開示はもちろん、被疑事実の開示も拒否できる[12][13]。そのため、被拘束者は無実を争うことすらできない[14][15]。名目上は異議申立が可能だが、弁護活動が不可能なので、事実上は軍の思うままに拘禁できるようになっている。拘禁期間は6ヶ月で、更新によって無期限延期が可能。

2005年現在、収監されているパレスチナ人約8043人中、722人が行政拘禁の適用者である[16]。また、2017年5月末現在では、475人が行政拘禁の適用者である。このうち、6ヶ月より長く1年以内の拘禁を受けた者は128人、1年以上の拘禁を受けた者は121人を占めた[14]

パレスチナ人以外への適用は稀であり、2024年11月22日現在、行政拘束されているパレスチナ人3443人、ユダヤ人8人(全て入植者)である。ユダヤ人への適用は入植者の他、政治犯・思想犯(無罪判決を受けた者、そもそも罪状に問われていない者もいる)などの例がある。しかし、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は11月22日、ユダヤ人入植者は行政拘禁の対象外にすると発表した[17]

2006年には更に従来の命令378(1970年4月20日 -)により発動できる弁護士接見禁止令に加え、30日間は弁護士の接見を禁止し、更に拘禁延長を審議する法廷審問に本人が出廷する権利を拒否できるよう法改正が審議された。その結果、6月28日、弁護士の接見禁止は見送られたが、出廷拒否の他、法廷での罪状開示前に、国内治安機関による尋問を48時間から96時間に延長するなどの案がクネセトで可決した。

2009年に布告した命令1651では、命令378はじめ、20の刑事罰関連の布告を一括した布告とした。命令1651では、第31条で無令状逮捕(米国のものより制限は緩く、「軍律違反または犯罪を犯すと疑うに足りる理由」があれば全ての罪状に適用できる)、第39条および第271-297条で行政拘禁を規定しており、本則は72時間以内(第39条、無期限延期可能)としつつも、地区長官の判断で6ヶ月毎の更新とすることができる(第271条)[18][19]。これらは従来の内容を踏襲している。

この他、2023年2023年イスラエル・パレスチナ戦争では、ガザ地区から「不法戦闘員拘禁法」に基づき、2025年5月現在で約6000人を拘束している。この数字は情報公開請求に基づく統計で、イスラエル刑務所局英語版は「ほぼ全員がハマースあるいはイスラーム聖戦所属」と主張した。しかし、イスラエル参謀本部諜報局の内部文書によると、イスラエルがハマース・イスラーム聖戦構成員と認識しているのは約1450人で、他の武装勢力の構成員は「2%(約120人)以下」、残りの73%強は民間人だった[20]。ガザ地区で活動するアル・メザン人権センター英語版は、過激派組織と繋がりを持つのは「6~7人に一人くらい」であり、しかも党員であっても戦闘員とは限らないと主張した[21]


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関連項目

  • 恣意的逮捕および恣意的拘禁英語版

出典

参考文献

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