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酒類製造免許
日本の酒税法に基づく酒類の製造を許可する免許 ウィキペディアから
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酒類製造免許(しゅるいせいぞうめんきょ)は、日本の酒税法(昭和28年法律第6号)の規定により酒類の製造をしようとする者が受けなければならない免許[1]。
![]() | この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
酒税法上の正式名称は「製造免許」(せいぞうめんきょ)であり[2]、「酒類の製造免許」(酒税法第7条)、「酒母の製造免許」、「もろみの製造免許」(酒税法第8条)に分けられる[2][3]。酒類の製造免許は製造する品目ごとかつ製造場ごと、酒母の製造免許及びもろみの製造免許は製造場ごとに製造場の住所を管轄する税務署長から免許が交付される[4]。また、酒類の製造免許を受けた者を「酒類製造者」という(酒税法第7条)[注釈 1][5]。
酒税を円滑に納付させることを目的とした制度であるが宗教儀式のために神酒等を少量を製造する場合にも必要である[6]。酒類製造免許を受けずに酒類を製造した者又は酒母等の製造免許を受けずに酒母・もろみを製造した者(未遂犯を含む)は10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科されるとともに[7]、製造に使用した物品(原料・器具・容器等)・製造された酒類・酒母・もろみ等は所有者を問わず没収される[8]。
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免許の効力と種類
免許の効力は「人」(免許を受けた者)・「場所」(免許を受けた製造場)・「物」(免許を受けた品目の酒類又は酒母若しくはもろみ)・「時」(免許の通知到達時から免許消滅時まで)に対して有する[9]。
酒類の製造免許は、品目別に免許が与えられることとなっており、免許を受けた品目と異なる品目の酒類を製造しようとするときは、改めてその品目の免許を受ける必要がある[注釈 2][2]。
品目・区分別免許一覧
免許条件の種類
酒税法法令解釈通達第11条(製造免許等の条件)によれば、特に酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持するため必要があると認められるときに限り製造する酒類の数量の条件(キロリットル単位)及び、以下の製造する酒類の範囲の条件を付して製造免許が与えられることがある[10]。
- 「酒税法第28条第1項の規定により、未納税移入した清酒に炭酸ガス又は炭酸水を加える場合に限る。」
- 「自己の清酒の製造に際し生じた酒かす又は米ぬか等の副産物を主原料として製造するもの及びこれに発泡性を持たせたものに限る。」
- 「その構成員の清酒の製造に際し生じた酒かす又は米ぬか等の副産物を主原料として製造するもの及びこれに発泡性を持たせたものに限る。」
- 「○○(産地の名称等を記載)で生産された特産品である○○を主原料として製造するもの(及びこれに発泡性を持たせたもの)に限る。」
- 「○○(産地の名称等を記載)で生産された米を主原料として製造するもの(及びこれに発泡性を持たせたもの)に限る。」
- 「リキュール又は甘味果実酒のうち、医薬品医療機器等法の規定により厚生労働大臣より製造の許可を受けたアルコール含有医薬品に限る。」
- 「試験のために製造する酒類に限る。」
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法的根拠
酒類の製造免許
酒類を製造しようとする場合、酒税法第7条の以下の条文の規定により、製造しようとする酒類の品目別かつ製造場ごとに所轄税務署長の免許を受ける必要がある。
第七条 酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目(第三条第七号から第二十三号までに掲げる酒類の区分をいう。以下同じ。)別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許(以下「製造免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類の製造免許を受けた者(以下「酒類製造者」という。)が、その製造免許を受けた製造場において当該酒類の原料とするため製造する酒類については、この限りでない。
—酒税法第7条
酒母等の製造免許
酒母又はもろみを製造しようとする場合、酒税法第8条の以下の条文の規定により、製造場ごとに所轄税務署長の免許を受ける必要がある。
第八条 酒母又はもろみを製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造場ごとに、製造免許を受けなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、この限りでない。
- 一 酒類製造者が、その製造免許を受けた製造場において、当該酒類の製造の用に供するため、酒母又はもろみを製造する場合
- 二 もろみの製造免許を受けた者が、その製造免許を受けた製造場において、当該もろみの製造の用に供するため、酒母を製造する場合
- 三 アルコール事業法(平成十二年法律第三十六号)第三条第一項(製造の許可)又は同法第四条第三号(試験等のための製造の承認)の規定によりアルコールの製造の許可又は承認を受けた者が、当該アルコールの製造の用に供するため、同法第二条第二項(定義)に規定する酒母又は同条第三項(定義)に規定するもろみを製造する場合
—酒税法第8条
また、化粧品や酢などで製造工程で酒母・もろみを製造する必要があるが、最終製品が酒類でない場合であっても酒母等の製造免許を受けなければならない[11]。
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免許の取り扱い
免許の審査・付与
製造免許の申請にあたっては以下の拒否要件に該当しないかについて申請を受けた税務署長が審査を行い、免許付与相当と判断された場合は免許の通知書、免許拒否相当と判断された場合は拒否の通知書を申請者に文書をもって通知される(酒税法第21条)[12]。ただし、もろみの製造免許、酒母の製造免許の免許を受けている者は法定製造数量の規定は適用されない[13]。
- 絶対的拒否要件
- 相対的拒否要件[15]
- 免許の申請者が過去に法律違反の事実があるなど遵法精神に欠けると認める場合
- 資力が不十分又は経営の基礎が薄弱であると認められる場合
- 上記のほか、税務行政上の見地から免許を与えることが適当でないと認められる場合
また、上記の要件のほかに、清酒・合成清酒や単式蒸留焼酎・連続式蒸留焼酎・原料用アルコールの酒類製造免許を新たに取得できるのは、既存の製造者が、企業合理化を図るため新たに製造場を設置して製造しようとする場合等に限られており[16]、新規参入は制限されている[17][18]。新規参入には、休廃業した酒造会社を買収し酒蔵の免許を移転する方法が使われる(北海道の上川大雪酒造の例)[19]。2021年には海外への輸出を後押しするため、輸出用清酒製造免許が設定された[20][17]。第1号は福島県のねっかに交付された[21]。
免許の移転
製造免許を受けた製造場を移転しようとするときは移転先の所轄税務署長の許可を受けなければならない(酒税法第16条の1)[22]。
免許の消滅・取消
製造免許は以下のいずれかにより効力が消滅する[23]。ただし、もろみの製造免許、酒母の製造免許の免許を受けている者は法定製造数量の規定は適用されない[13]。
- 自然消滅
- 任意取消
- 免許者の申請に基づく取消処分(酒税法第17条)
- 強制取消(酒税法第12条)
- 偽りその他不正の行為により酒類の製造免許を受けた場合
- 酒税法第10条第3号から第5号まで若しくは第7号から第8号までに規定する者に該当することとなった場合又は酒税に係る滞納処分を受けた場合
- 3年以上引き続き酒類を製造しない場合
- 3年以上引き続き酒類の製造数量が法定製造数量に規定する数量に達しない場合(例外あり)。
- 酒税法第31条第1項の規定により命ぜられた担保の提供又は酒類の保存をしない場合
- 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和28年法律第7号)第84条第2項(酒税保全のための勧告又は命令)又は第86条の4(公正な取引の基準に関する命令)の規定による命令に違反した場合
法定製造数量
酒税法第7条第2項において、種類別に1年あたりの最低製造見込数量(法定製造数量)が定められている。免許取得後1年間に製造しようとする見込数量がこれに達しない場合は、免許を受けられない。また、実際の製造数量がこれを3年間下回ると、免許取り消しとなる。ただし、法令解釈通達によれば薬用酒を製造する場合は以下の法定製造数量を満たしているものとみなされる[24]。
酒税法施行令(昭和37年政令第97号)第12条の2の規定により、以下の場合は上記の法定製造数量は適用されない。
- 清酒、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール又はスピリッツの製造免許を受けた者が、その製造免許を受けた製造場において、自己の製造したこれらの酒類を原料としてリキュールを製造しようとする場合
- 1の製造場において果実酒及び甘味果実酒を製造しようとする場合で、製造免許を受けた後1年間におけるその製造見込数量の合計が6kL(キロリットル)以上であるとき。
- 1の製造場においてウイスキー及びブランデーを製造しようとする場合で、製造免許を受けた後1年間におけるその製造見込数量の合計が6kL以上であるとき。
- 1の製造場において原料用アルコール及びスピリッツを製造しようとする場合で、製造免許を受けた後1年間におけるその製造見込数量の合計が6kL以上であるとき。
構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)の規定により以下に該当する場合、上記の法定製造数量は適用されない[25]。
- 「酒類を自己の営業場において飲用に供する業」を営む農業者が特区内の自己の酒類製造場で「濁酒」又は「果実酒」を製造しようとする場合
- 地方公共団体の長がその地域の特産物として指定した農産物、水産物又は加工品を原料として「単式蒸留焼酎」を製造しようとする場合
- 特区内において、単式蒸留焼酎の製造免許を受けた者が、その製造場において、特産農産物等を原料の全部又は一部として「原料用アルコール」を製造しようとする場合
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酒類製造者の義務
酒類製造者には酒税の保全のため以下の義務が課されている[26]。
自家製造の例外
原則として酒類製造免許を受けずに酒類の製造行為を行なうことは禁止されているが、酒税法施行規則(昭和37年大蔵省令第26号)第13条第3項の規定により、消費者が自分で飲むために酒税課税済のアルコール度数20度以上の酒類に下記の物品以外を混和させる場合[注釈 9]は、例外として製造行為とみなさないこととなっている[31][32]。
罰則
酒類製造免許を受けないで酒類を製造した者(未遂犯を含む)は、酒税法第54条の規定に基づき、10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処される[7]。
第五十四条 第七条第一項又は第八条の規定による製造免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造した者は、十年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
- 2前項の犯罪に着手してこれを遂げない者についても、同項と同様とする。
- 3前二項の犯罪に係る酒類、酒母又はもろみに対する酒税相当額(酒母又はもろみについては、その他の醸造酒とみなして計算した金額)の三倍が百万円を超えるときは、情状により、前二項の罰金は、百万円を超え当該相当額の三倍以下とすることができる。
- 4第一項又は第二項の犯罪に係る酒類、酒母、もろみ、原料、副産物、機械、器具又は容器は、何人の所有であるかを問わず没収する。
- 5第一項又は第二項の行為に係る酒類については、当該酒類を製造した、又は製造に着手してこれを遂げない者から、直ちにその酒税を徴収する。ただし、前項の規定により没収された酒類には、酒税を課さない。
- 6第一項又は第二項の行為に係る酒母又はもろみはその他の醸造酒とみなし、当該酒母又はもろみを製造した者から、直ちにその酒税を徴収する。ただし、第四項の規定により没収された酒母又はもろみには、酒税を課さない。
—酒税法第54条
免許に付された条件(免許条件の種類)に違反した者は、酒税法第58条の1の規定に基づき、1年以下の拘禁刑又は50年以下の罰金に処される[5]。
第五十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
- 一 第十一条第一項の規定による条件に違反した者
—酒税法第58条
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統計情報
品目・区分別免許場数
令和5年度の国税庁統計「酒類製造免許場数等」によれば、2024年(令和6年)3月31日時点の品目・製造場別の酒類製造免許、製造場別の酒母等の製造免許の交付状況は以下のとおりである[33]。
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脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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