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外傷
外的要因による組織または臓器の損傷 ウィキペディアから
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外傷(がいしょう、英: injury, trauma)とは、 物理的な衝撃やエネルギーが人体に加わることによって生じる損傷(けが)の総称である。

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用語の定義
外因の種類は特に問題としていないため塩酸をかぶったというのも外傷となる。創傷という言葉があるがこれは損傷のうち機械的エネルギーにより形成されたものであり、外傷よりも言葉の意味が狭くなる。基本的に創とは開放性の損傷であり、傷とは非開放性損傷を示すことが多い。
医学において損傷とは、身体を構成している組織の生理的な連続性が断たれた状態のことをいう。この定義においては機能障害、例えば脳震盪なども損傷に含まれると解釈されている。また胃潰瘍といった内因性のものも損傷には含まれる。
骨折とは骨の損傷であり、関節の損傷には捻挫、脱臼という言葉がある。脱臼とは関節面における関節頭と関節窩の相互関係が破綻(はたん)したものをいう。関節面の一部が接触を保っている場合は亜脱臼という。関節に外力が加わり、靱帯、関節包といった関節支持構造に損傷を受けるが関節面の相互作用関係が保たれている場合は捻挫という。
外傷の種類
外傷の種類には、以下のものがある。交通事故による交通外傷、高所からの転落による高エネルギー外傷、労災事故、スポーツ外傷、刃物などによる鋭的外傷など、原因は多岐にわたる。
外傷は、損傷が単一の部位に留まらず、全身の複数の臓器に損傷が及ぶ多発外傷となるケースが多く、救急医療における重要な分野である。重症外傷は、適切な処置が行われていれば救命できたはずの命(防ぎ得た外傷死: Preventable Trauma Death, PTD)を減らすことが最重要課題となる。
損傷部位別によるもの
- 頭部外傷
- 胸部外傷
- 腹部外傷
- 腹部外傷は頭部や四肢外傷に比べれば頻度が少ないが重症度が高く、適切な診断および治療が極めて重要な外傷である。複数の臓器損傷が多く、症状は腹痛、嘔吐、吐血、血尿のほかに、肝、脾、腎などの充実性臓器から出血すると早期に失血性ショックに陥り、胃、小腸、大腸、直腸などの消化管損傷では細菌性の汎発性腹膜炎を、また膵臓は強い消化酵素により、膀胱破裂は尿浸潤により腹膜炎を発症する[1]。
- 四肢外傷
- 切創、打撲傷、擦過傷、骨折、脱臼が多く、生命にかかわることは少ない[2]。
物理的要因によるもの
受傷機転により、鋭的外傷と鈍的外傷に大別される。鈍的外傷とは、皮膚を貫通するには至らない衝撃によって起こる打撲や挫傷、振盪などの症状を指す。対義語として、外出血があるものは穿通性外傷と呼ぶ。
機械的要因によるもの
創傷(Skin Lesion)は、皮膚の表面のけが(傷)を言う。
- 1次元的なもの
- 鋭利物(刃物など)による損傷。
- 裂傷
- 皮膚が2方向に引っ張られることによって裂ける損傷。
- 割創
- 裂傷が皮膚組織すべてを引き裂き、内臓・骨を露呈する損傷。
- 2次元的なもの
- 摩擦による損傷で、表皮のレベルまでしか達していないもの。
- 挫滅傷
- 摩擦による損傷で、真皮や皮下組織・それ以下のレベルまで損傷したもの。あるいは急激な圧力による同様な損傷。(急激でない圧力によるものは褥瘡と言う)
- 3次元的なもの
- 銃弾による損傷。
- 爆発による損傷。ただし、爆傷は熱傷や衝撃による内部的損傷(いずれも下記)を伴う。殺傷用の爆発物による損傷であれば、多発性の銃創の病態も呈する。
- 杙創(よくそう)
- 鈍的な物体が人体を貫通する傷。
内部的なもの
熱的要因によるもの
電気的要因によるもの
- 特に雷や空中放電によるものを雷撃傷と言う。
放射線要因によるもの
化学的要因によるもの
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外傷処置
外傷処置とは、外傷に対し、傷病者の生命を救い、損傷部位の障害を最小限にとどめるために行われる一連の医療行為の総称である。
応急処置
医療機関に搬送されるまでの間に行われる処置は、救命や症状の悪化防止を目的とする。
- 止血: 出血がある場合、清潔なガーゼや布を直接傷口に当てて、手のひらで強く圧迫する直接圧迫止血が最も効果的である。
- 気道確保と心肺蘇生: 意識がない、呼吸がない場合は、傷病者の反応を確認し、必要に応じて胸骨圧迫などの心肺蘇生を行う。
- RICE処置: 捻挫や肉離れなどの四肢の損傷に対し、安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の4原則が基本となる。
医療機関での処置
医療機関では、特にPTDを減らすことを目的とし、外傷初期診療ガイドラインJATEC(日本外傷学会・日本救急医学会監修)に基づいた迅速かつ専門的な処置が行われる。
- 初期評価と蘇生(Primary Survey & Resuscitation):
到着後直ちに以下のABCDEアプローチで評価と処置を同時に進行する。
- A (Airway): 気道確保。必要なら気管挿管や外科的気道確保を行う。
- B (Breathing): 呼吸管理。酸素投与、人工呼吸管理、緊張性気胸や大量血胸の処置を行う。
- C (Circulation): 循環管理。迅速な輸液・輸血、直接圧迫止血や緊急止血術、ショックへの対応を行う。
- D (Disability): 意識障害の評価。意識レベル(JCS/GCS)、瞳孔所見を確認する。
- E (Exposure/Environment): 全身の露出と体温管理。損傷部位の確認と低体温の防止を行う。
- 全身観察と画像診断(Secondary Survey):
Primary Surveyで生命に関わる緊急事態に対処し、患者の状態が安定化し次第、全身の詳細な観察を行う。
- 画像診断: 80列マルチスライスCTのような高性能な装置を用いた全身検索(トリアージCT)が不可欠である。
- FAST検査: 腹腔内や心嚢内の出血を迅速に確認するための超音波検査も繰り返し行われる。
- 専門的・集学的治療:
診断後、複数の診療科が連携し、根本的な治療が行われる。
重症度評価方法
重症度を定量化する値として以下のものがある。
- AIS(Abbreviated Injury Scale)
- ISS(Injury Severity Score)
- RTS(Revised Trauma Score)
重症外傷患者の診かた
要約
視点
以下の方法は、致命的外傷・重症外傷が前提であり、一般的捻挫や切創は対象としていない。
病院前救護
→詳細は「外傷病院前救護ガイドライン」を参照
病院での初期診療
→詳細は「外傷初期診療ガイドライン日本版」を参照
- 外傷部より末梢のPMSの確認をする。これはパルス(脈が触れるか、皮膚の色は大丈夫か)、運動、知覚の神経は保たれているかを確認することである。指の外傷の場合は爪の圧迫にてパルスの確認をする。
- 明らかな骨折以外にほかの外傷がないかの確認を常にする。特に手足の骨折を見逃しやすい。
病院でのその後の診療
脊髄損傷の診療
→詳細は「脊髄損傷」を参照
脊椎、脊髄の外傷の診療ではバイタルサインの確認、脊髄損傷の有無の確認、合併損傷の有無の確認という手順を踏む。脊髄損傷の有無は麻痺の高位や程度を評価することでわかる。これは上下肢の知覚検査と筋力検査で明らかになる。C5は肩の外転、肘屈曲でC6、C7は手関節の動き、C7、C8、T1は手指の動きで評価できる。具体的にはC6では手関節の背屈、C7では手関節の掌屈と手指の伸展、C8は手指の屈曲、T1は手指の内転、外転で評価できる。L3は膝伸展、L4は足関節の背屈、L5は趾伸展、S1は足の外反で評価する。深部腱反射では上腕二頭筋反射がC5、腕橈骨筋反射がC6、上腕三頭筋反射がC7である。膝蓋腱反射がL4、アキレス腱反射がS1となる。感覚ではC5で上腕外側、C6で前弯外側、母指、示指、C7が中指、C8が環指、小指、前腕内側。T4が乳首、T7が剣状突起、T10が臍部、T12が鼡径部である。L4が足の内側縁であり、L5が足背中央、S1が足の外側縁となる。合併損傷では頭部外傷、胸腹部外傷、骨盤外傷が重要である。
重症外傷の予後
最も生命を脅かすのはABC(気道・呼吸・循環)の阻害である。詳細はJATECの項を参照されたい。時間的に見て早期に死亡原因となるのは出血であるが、これは単に失血のみならず、心タンポナーデを始めとした各種の内出血によるタンポナーデによるものもあれば、肝臓・脾臓・大動脈が損傷すれば胸腔・腹腔に大量に出血して死に至る。目に見える外出血の有無にとらわれては重傷度の判断はできない。
また、脊髄損傷は受傷直後は無症状である場合が少なくない。受傷後に傷病者自身や周囲の人間が不用意に動かすことによって脊椎損傷が脊髄損傷に発展する。この場合、呼吸麻痺や脊髄原性ショックによる心停止の危険があるのみならず、生存しても機能予後が大きく低下する。詳細はJPTECを参照のこと。
感染症は受傷の2〜3日後から発現する。創傷面からの感染は勿論のこと、肺炎(人工呼吸器を使用している場合)や皮膚炎、さらに安静によって生じる褥瘡からの感染も無視できない。
コンパートメント症候群や挫滅症候群(クラッシュ症候群)は、その兆候に注意することである程度は救命できるが、「それが予測でき、かつ措置を講じた」としても救命できない例も多い。阪神・淡路大震災やJR福知山線脱線事故において、24時間以上を経てようやく救出されたにもかかわらず、救出後にクラッシュ症候群により死亡した例が典型的である。
東京医科歯科大の高山渉らの研究で[3]血液型O型では重症の外傷の場合に死亡率が高く32%となり、その他の血液型の11%より高かった[4]。
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軽症〜中等症外傷患者の診かた
以下の方法は、致命的外傷ではない場合が前提であり、重症外傷は対象としていない。
病院前
→詳細は「止血」を参照
出血があれば、水道水で洗浄し、清潔な布で直接圧迫する。 四肢や指の根元を縛る方法は、適切に行わないと、動脈を駆血せず、静脈のみの駆血する事となり、鬱血し、出血が助長される。
病院での診療
開放創があれば、その汚染度・深さに応じて、洗浄や縫合をする。靭帯・骨・腱・筋肉・神経・血管の損傷があれば、損傷に応じて、処置をする。
出典
参考文献
関連項目
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