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AXL (タンパク質)

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AXL (タンパク質)
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AXL(anexelekto)は、ヒトではAXL遺伝子にコードされる酵素プロテインキナーゼ)である[5][6]AXL遺伝子は当初UFOと呼ばれていたが、この名称はタンパク質の機能が未同定であることを暗に示していた[7]。AXLはその発見以降、その発現プロファイルと機構によって、特にがん治療において魅力的な標的となっている。近年、AXLはがん細胞が免疫回避と薬剤耐性を促進し、アグレッシブな転移性がんとなるための重要な因子として浮上している[8]

概要 PDBに登録されている構造, PDB ...
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遺伝子とタンパク質

AXL遺伝子は脊椎動物の種間で進化的に保存されている。この遺伝子には2種類の異なる選択的スプライシングバリアントが存在する[6]

AXLタンパク質は、受容体型チロシンキナーゼファミリーに属する。AXLは他の受容体型チロシンキナーゼと類似しているものの、細胞外領域にIg様リピートフィブロネクチンIII型リピートが近接して存在するという独特な構造を持つ[6]

AXL遺伝子は、19q13.1-q13.2に位置するがん原遺伝子BCL3英語版ときわめて近接して位置している[6]

機能

AXL受容体は、GAS6英語版などの成長因子を結合することで、細胞外マトリックスから細胞質へシグナルを伝達する。AXLは細胞増殖と生存の刺激に関与している。ADAM10ADAM17英語版といったメタロプロテイナーゼによる細胞外ドメインの切断によって、シグナル伝達活性はダウンレギュレーションされる[9]

AXLの下流で活性化されるシグナル伝達経路には、PI3K-AKT-mTOR経路、MEK/ERK経路、NF-κB経路、JAK/STAT経路などがある[10]

また、AXLはホモフィリック結合による細胞凝集も媒介する[6]

AXLタンパク質は正常組織、特に骨髄間質細胞や骨髄系細胞で発現しており、他にも腫瘍細胞や腫瘍血管で発現している[11][12]。がん組織においては、腫瘍細胞上に発現しているほか、樹状細胞マクロファージNK細胞など近接する免疫細胞でも発現している。

AXLは自然免疫応答の阻害因子である。正常組織では、活性化されたAXLはアポトーシス促進性物質の効率的な除去、TLR依存的炎症応答やNK細胞活性の抑制などの機能を果たす[13]

AXLは、増殖、浸潤、遊走上皮間葉転換幹細胞性、血管新生、免疫調節といった、発生や成長、腫瘍の拡大に重要な多様な細胞過程を駆動すると考えられている[10]。AXLはがんのドライバーであることが示唆されており、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、急性骨髄性白血病(AML)、非小細胞肺がん英語版(NSCLC)、膵臓がん卵巣がんなど、多数のアグレッシブな腫瘍で生存率の悪さと関係している[14]

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臨床的意義

AXLは1988年、急性転化期へ進行した慢性骨髄性白血病患者における形質転換遺伝子のスクリーニングから、がん遺伝子として同定された[15]。以降、AXLの発現上昇は肺がん乳がん膵臓がん卵巣がん結腸がんメラノーマなど多数のがんと関係しており、生存転帰不良と強く相関していることが示されている[12]

また、AXLは肝臓などいくつかの器官の慢性線維化疾患への関与が示唆されている[16]

AXLのノックダウンは、SlugTwist英語版ZEB1英語版など、上皮間葉転換に必要な転写因子のダウンレギュレーションや、E-カドヘリンの発現上昇をもたらす[17]

AXLはジカウイルスSARS-CoV-2の感染にも重要な役割を果たしており、宿主細胞へのウイルスの進入を可能にしている[18][19]。この現象はウイルスの排出時にエンベロープに取り込まれたホスファチジルセリンに依存しており、ウイルスはアダプターであるGAS6を介してAXLに結合する。AXLはエンドソームへのインターナリゼーションを媒介し、ウイルスはそこから脱出して複製を開始する。

臨床研究

AXL阻害剤に分類されるいくつかの薬剤について臨床試験が行われているが、それらの多くはAXL以外にも複数の受容体型キナーゼを標的とするものである。AXL「選択的」な経口低分子阻害薬ベムセンチニブ英語版(BGB324、R428)は、NSCLC、TNBC、AML、メラノーマなどに対する臨床試験が現在行われており、単剤療法のほか、既存のまたは新たな標的療法、免疫療法、化学療法との併用療法の試験が行われている[20]

ギルテリチニブFLT3/AXL阻害剤であり、2017年にFDAによってAMLに対するオーファンドラッグとして指定され[21]、2018年11月にFDA承認検査によってFLT3に変異が確認された再発性・難治性AML成人患者に対する治療として承認された[22]

こうした承認医薬品や進行中の臨床試験の結果からは、AXLの阻害の広範囲の安全性と効力が示されている[10]

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相互作用

AXLはTENC1英語版と相互作用することが示されている[23]

出典

関連文献

外部リンク

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