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シスプラチン
抗悪性腫瘍剤 ウィキペディアから
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シスプラチン(英語: cisplatin、略称:CDDP)は、白金錯体に分類される抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)。シスプラチンの「シス」は、立体化学の用語のシスに由来する。錯体の中心金属は白金、配位子はアンミンと塩化物イオンであり、物質名はシス-ジアミンジクロロ白金(II)(cis-diamminedichloro-platinum(II)、cis-[PtCl2(NH3)2])である。なお、日光によって分解されるため、直射日光を避けて保存する必要があり、点滴にかかる時間を長く取る必要がある場合は点滴容器の遮光が必要となることもある。世界保健機関 (WHO) の下部組織によるIARC発がん性リスク一覧のグループ2に属する。ヒトに対する発癌性の限られた証拠、動物実験での十分な証拠がある。
商品名は、ブリプラチン(ブリストル・マイヤーズ)、ランダ(日本化薬)など。白金製剤としては、ほかにカルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンがある。 薬理作用を発現するのはシス型だけでトランス型は抗がん作用を示さない。
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開発経緯
シスプラチンは、1845年にイタリアの化学[ミケーレ・ペイローネ(Michele Peyrone、1813-1883年)により錯体の研究材料として合成され[1]、「ペイロン塩(Peyrone's salt)」と呼ばれた。
1965年、アメリカ合衆国バーネット・ローゼンバーグ(w:Barnett Rosenberg)らは、細菌に対して電場が及ぼす影響を調べている時に、偶然プラチナ電極の分解産物が大腸菌の増殖を抑制し、フィラメントを形成させることを発見した。その後1969年には、ローゼンバーグらにより白金化合物の大腸菌に対する細胞分裂阻止作用を応用して癌細胞の分裂抑制に対する研究が行われ、その結果ペイロン塩、つまりシスプラチンが動物腫瘍において比較的広い抗腫瘍スペクトルを有する化合物であることが判明した。
1972年にはアメリカ国立癌研究所(NCI)の指導で臨床試験が開始されたが、強い腎毒性のため、いったんは開発が中断された。しかし、その後シスプラチン投与時に大量の水分負荷と、さらに利尿薬を使用することによって腎障害を軽減することが可能となった。その後の臨床開発により、1978年にカナダ、アメリカ等で承認され、1983年に日本で承認された。
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合成経路

シスプラチンの合成反応は、トランス効果の典型例である[2]。まず、テトラクロリド白金(II)酸カリウム([PtCl4]2−)を出発物質とする。最初のNH3基は4つのCl基どれとも無作為に置換される。しかし、Cl−はNH3より大きなトランス効果を持ち、そのトランス位を置換活性とするため、NH3基の置換は、すでに存在しているNH3基に対してトランスの位置にはあまりおこらず、Cl基のトランスの位置におきやすい。したがって、2番目のNH3基はシス型に置換される。一方、[Pt(NH3)4]2+が出発物質であれば、Cl基のトランス効果のため2番目のCl基は最初のCl基のトランスの位置に入り、生成物はトランス型になる。
作用機序
シスプラチンは、DNAの構成塩基であるグアニン、アデニンのN-7位に結合する。2つの塩素原子部位でDNAと結合するため、DNA鎖内には架橋が形成される。シス体に比べ、トランス体は架橋が形成されにくいため、投与量の制限により臨床的に用いることはできない。
シスプラチン抵抗
シスプラチンを使った癌治療は最近では多く見られるが、患者の多くは服用後しばらくしてからシスプラチン抵抗の強い病に苦しむことが多い。抵抗のメカニズムとして、細胞外への薬の流出、薬の無効化、アポトーシスの抑圧、DNA修復の補助などがある。研究所内の実験においてはシスプラチン抵抗のある癌細胞には活発なオキサリプラチンが多く見られるが、患者の癌細胞にも同じ現象が起きている事を証明する事実は少ない。[3]シスプラチン抵抗のある癌細胞の治療にはパクリタキセルが有効と思われるが、そのメカニズムはまだ明らかになっていない。[4]
効能・効果
- 睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂・尿管腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、食道癌、子宮頸癌、神経芽細胞腫、胃癌、小細胞肺癌、骨肉腫、胚細胞腫瘍(精巣腫瘍、卵巣腫瘍、性腺外腫瘍)
- 悪性胸膜中皮腫・・ペメトレキセドと併用
- 以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
- M-VAC療法(シスプラチン、メトトレキサート、ビンブラスチン及びドキソルビシンとの併用療法)
- 肝細胞癌・・(動注用製品)
禁忌:重篤な腎障害
主な副作用
腎毒性
- 発現機序
- シスプラチンは主に近位尿細管細胞を障害する。
- 対処法
悪心・嘔吐
- 発現機序
- 延髄外側網様体に位置する嘔吐中枢が刺激されて発現する。
- 対処法
聴器毒性
- 症状
- 聴力低下、難聴、耳鳴り
- 発現機序
- 蝸牛の外側有毛細胞の障害と考えられ、総投与量で300mg/m2 以上になると発現頻度が高くなる。
- 対処法
- 不可逆的であり、根本的な治療法は見つかっていない。障害が軽度な場合は投与中止で改善する可能性もあるので、定期的な聴力検査(オーディオグラム)を行い、障害の徴候があらわれたら、投与継続の是非を考慮する必要がある。
溶血性貧血
→「溶血性貧血」も参照
- 原因
- 長期間に渡るシスプラチンの服用が原因であり、体内にある抗体がシスプラチンと反応して溶血を引き起こすとされている。[5]
神経毒性
- 症状
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適用上の注意
調製時の注意
関連事項
脚注
外部リンク
参考資料
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