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STK3
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STK3(serine/threonine kinase 3)またはMST2(mammalian STE20-like kinase 2)は、ヒトではSTK3遺伝子によってコードされている酵素(プロテインキナーゼ)である[5][6]。
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背景
プロテインキナーゼは、成長因子、化学物質、熱ショック、アポトーシス誘導因子による処理への応答として活性化されることが多い。STK3の活性化も、好ましくない環境条件への対処を可能にしていると考えられている。酵母の'sterile 20'(Ste20)キナーゼは、さまざまなストレス条件下で活性化されるMAPKカスケードの上流で作用する。 STK3は出芽酵母のSte20に類似したキナーゼとして同定され[7]、その後スタウロスポリンやFasリガンドといったアポトーシス促進性因子によって活性化されるキナーゼであることが明らかにされた[8][9]。
構造

ヒトのSTK3の単量体は56,301 Daで[10]、N末端のキナーゼドメイン、阻害ドメイン、そしてSARAHドメインの3つのドメインから構成される。C末端のSARAHドメインは長いαヘリックスから構成され、二量体化した際には逆平行型コイルドコイルを形成する[11]。SARAHドメインはSTK3とRASSF(Ras association domain family)タンパク質やSAV1との相互作用を媒介することが示されている。RASSFはアポトーシスの活性化に重要な役割を果たしているがん抑制因子であり、SAV1はSTK3をアポトーシス経路と関連づけている[12][13]。STK3が活性化状態となった際には、180番のスレオニン残基が自己リン酸化される[14]。
機構
活性化
STK3は、ホモ二量体化、もしくはホモログであるSTK4(MST1)とのヘテロ二量体化に伴う自己リン酸化を介して活性化される[15]。STK4とのヘテロ二量体化の結合親和性はSTK3ホモ二量体と比較して約1/6と弱く、またSTK3/STK3やSTK4/STK4ホモ二量体と比較してキナーゼ活性も低い[13]。スタウロスポリンやFasリガンドによる活性化以外にも、STK3は酸化ストレス条件下でGLRXやチオレドキシンが解離することでも活性化されることが明らかにされている[15]。また、アポトーシス時にはカスパーゼ-3が活性化され、STK3はSARAHドメインや阻害ドメインが切断除去されることでキナーゼ活性が活性化される。カスパーゼ-3はSTK3の核外搬出シグナルも切除するため、STK3のキナーゼ断片は核内へ拡散してヒストンH2Bのセリン14番をリン酸化することでアポトーシスを促進する[13]。
不活性化
STK3の不活性化は、SARAHドメインに結合するc-Rafによってホモ二量体化と自己リン酸化が阻害されることで行われている[13]。
基質
哺乳類のHippoシグナル伝達経路において、STK3はそのホモログであるSTK4とともに上流のキナーゼとして機能しており、その触媒活性によって増殖関連遺伝子のダウンレギュレーションやアポトーシス促進遺伝子の転写の増大といった下流のイベントがもたらされている[15]。STK3がSARAHドメインを介してSAV1を結合すると、STK3はSAV1の助けのもとLATS1/LATS2を、そしてMOB1A/MOB1B、Merlinをリン酸化する。LATS1/LATS2はYAP1をリン酸化することで、YAP1の核内移行、そして増殖促進、抗アポトーシス、遊走に関連した遺伝子の転写活性化を阻害する。細胞質では、YAP1はSCF複合体によって分解のための標識が付加される[16]。さらに、STK3はFOXOファミリーの転写因子をリン酸化し、これらは核内に拡散してアポトーシス促進遺伝子の転写を活性化する[15]。
疾患との関係
多くの種類のがんにおいて、がん原因子であるc-RafはSTK3のSARAHドメインに結合し、RASSF1を介したSTK3の二量体化、そしてその下流のアポトーシス促進シグナルの伝達を妨げている[17]。また、がんにおいて高頻度で変異がみられるがん抑制遺伝子であるPTENを喪失している細胞ではAktの活性がアップレギュレーションされており、MST2の不活性化の増大と細胞増殖が引き起こされる[18]。
出典
関連文献
外部リンク
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