Y染色体ハプログループの分布 (東アジア)

Y染色体ハプログループの分布 (東アジア)（Yせんしょくたいハプログループのぶんぷ ひがしアジア、英: Y-DNA haplogroups by populations of East and Southeast Asia）では、東アジアならびに東南アジアにおけるヒトのY染色体ハプログループの分布について、民族ごとに一覧表形式で示す。

東アジアのY染色体ハプログループの移動

概要

下表は各ハプログループを大きな括りで集計したものであることに注意(さらに淡赤色のセルには註有り)。たとえばハプログループDはハプログループD1a1(D-Z27276)、D1a2(D-64.1)に分類され、更に細かな分類も存在する。ハプログループD1a2は今より約45,000年前から約21,000年前までの間に日本列島にて発生したと推定される型である。その他のハプログループも同様に細分化された区分が存在し地域ごとに特有の型も存在する。下表の「K」は基本的には子系統を除いたもの（K(xO,N,Q,R,M,S,L,T)）であるが、サンプルによっては子系統の一部を含んでいる場合もあり、注意が必要である。

民族	言語	サンプル数	C	D	K	N	O1a	O1b	O2	Q	註/その他	出典
東アジア	東アジア言語	988	19.9	4.8	1.9	6.4	5.4	16.3	33.7		R1a=2.8	Xue 2006[1]
漢族（中国）	シナ語	166	6.0	0.6	1.2	9.0	9.6	16.3	55.4	0.6		Karafet 2005[2]
漢族（広東省梅県）	シナ語	35	8.6	0	2.9	2.9	20.0	14.3	51.4	0		Xue 2006[1]
漢族（四川省成都）	シナ語	34	11.8	0	0	2.9	14.7	17.6	52.9	0		Xue 2006[1]
漢族（甘粛省蘭州）	シナ語	30	20.0	6.7	0	6.7	6.7	3.3	36.7	0	J=10.0 R1a1=6.7 O*(xO1a,O1b,O2)=3.3	Xue 2006[1]
漢族（黒竜江省ハルビン）	シナ語	35	14.3	0	0	5.7	2.9	8.6	65.7	0	J=2.9	Xue 2006[1]
漢族（新疆・イリ）	シナ語	32	6.3	3.1	9.4	0	9.4	12.5	46.9		R1a1=6.3 P(xR1a1)=3.1 Y(xA,C,DE,J,K)=2.9	Xue 2006[1]
漢族（台湾）	シナ語	183	6.3	0.3			22.4	8.5	58.2	1.1		Tsai 2001[3]
チベット・ビルマ	チベット・ビルマ語	964	8.4	18.5	17.7		3.1	6.3	38.7		F=5.4	Wen 2004[4]
チベット人	チベット・ビルマ語	35	0	42.9	0	8.6	0	0	40.0	0	R1a1=8.6	Xue 2006[1]
チベット人	チベット・ビルマ語	156	2.6	51.6	0	4.5	0	0	33.9	3.2	H=1.9, R1a=1.9	Gayden 2007[5]
チベット人（チベット自治区ラサ）	チベット・ビルマ語	46	8.7	41.3	0	0	0	2.2	39.1		F=4.3, P=4.3	Wen 2004[4]
チベット人 （青海省玉樹）	チベット・ビルマ語	92	14.1	22.8	21.7		1.1		19.6		F=14.1, P=6.5	Wen 2004[4]
チベット人 （青海省貴徳県）	チベット・ビルマ語	39	2.6	48.7			7.7	0	10.3		F(xJ,K)=5.1 J=5.1, R1a1=2.6 P(xR1a1)=2.6	Zhou 2008[6]
チベット人 （雲南省シャングリラ）	チベット・ビルマ語	50	4.0	36.0	12.0		0	4.0	44.0	0		Wen 2004[7]
アチャン族 （雲南省梁河県）	チベット・ビルマ語	40	5.0		2.5			10.0	82.5	0	O1b: ≥10.0	Shi 2005 Yang 2005
イ族（四川省・雲南省）	チベット・ビルマ語	125	5.6	0.8	28.0		0.8	7.2	28.8		F=18	Wen 2004[4]
羌族	チベット・ビルマ語	33	0	18.2	0	0	15.2	15.2	36.4		BT(xC,DE,J,K)=9.1 P(xR1a1)=6.1	Xue 2006[1]
トゥチャ族（湖南省）	チベット・ビルマ語	155	15.5	1.3	12.9		9.7	3.9	53.5		P=1.9	Wen 2004[4]
ハニ族（中国）	チベット・ビルマ語	34	17.6	0	0	11.8	0	50.0	17.6	0	Y(xA,C,DE,J,K)=2.9	Xue 2006[1]
ハニ族 （シーサンパンナ・タイ族自治州）	チベット・ビルマ語	34	11.8	0	35.3		2.9	2.9	50	0	C(M130) 11.8 K(M9) 35.3 O1a(M119) 2.9 O1b1a1a(M95) 2.9 O2(M122) 35.3 + O2a2b1(M134) 14.7 F(xK)=1.9	Wen 2004[4]
ローバ族	チベット・ビルマ語		0	20.8	0	34.6			33.8	0.8	J=0.8, R=7.7 O(xO2)=1.5
インド東北部	チベット・ビルマ語	173	0.6	1.2					86.7	0	H1=2.9, J2=0.6 O(xO2)=3.5 P=2.9 K(xL,O,P)=1.7	Cordaux 2004[8]
ガロ族	チベット・ビルマ語	71	8.5	0	4.2			11.3	59.2		C2(M217) 8.5 K(M9) 4.2 O1b1a1a(M95) 11.3 O2(M122) 16.9 + O2a2b1(M134) 42.3 F(M89)4.2% H1(M69)=1.4% O(M175) 4.2% P1(M45) 1.4% R1(M173) 5.6%	Reddy 2007[9]
華南人	シナ語・ ミャオ・ヤオ語	384	9.6	2.1	0.5	4.4	6.8	17.4	57.8	0.3		Karafet 2005[2]
ミャオ族・ヤオ族（中国）	ミャオ・ヤオ語	169	8.9	3.6	0	1.2	3.6	22.5	61.5	0		Karafet 2005[2]
ヤオ族 （広西チワン族自治区・ バマヤオ族自治県）	ミャオ・ヤオ語	35	17.1	2.9	0		2.9	40.0	34.3	0	NO(xN1,O)=2.9	Xue 2006[1]
ヤオ族 （広東省・ 連南ヤオ族自治県）	ミャオ・ヤオ語	35	2.9	0	0	0	5.7	8.6	82.9	0		Xue 2006[1]
タイ人	タイ・カダイ語	34	2.9	2.9	0	0	8.8		35.3		O*=44.1	Tajima 2004[10]
ベトナム人	オーストロアジア語	70	4.3	2.9	0	2.9	5.7	32.9	40.0	7.1	J=2.9	Karafet 2005[2]
日本人	日本語	118	5.1	46.6							P=1.7	Karafet 1999[11]
日本人	日本語	259	8.5	40.8	0	1.6	0	27.0	22.1	0.4	NO=2.3	Hammer 2005[12]
日本人（アイヌ）	アイヌ語・日本語	16	12.5	87.5	0	0	0	0	0	0		Tajima 2004[10]
日本人（関東）	日本語	137	3.6	48.2	0	0	2.2	30.7	14.5	0.7		Nonaka 2007[13]
日本人（西日本）	日本語	97	7.2	26.8			4.1	37.1	23.9	0		Nonaka 2007[13]
朝鮮民族	朝鮮語	317	9.1	4.0			4.1	30.3	44.5	0.6		Shin 2001[14]
朝鮮民族	朝鮮語	110	18.0	0		5.5	2.7	28.2	45.5		K(xNO)=1.8	Kim 2007[15]
朝鮮民族 (中国の朝鮮族)	朝鮮語	25	12.0	0	4.0	4.0	0	32.0	40.0	0	BT(xC,DE,J,K)=8.0	Xue 2006[1]
朝鮮民族（朝鮮半島）	朝鮮語	43	16.3	2.3	2.3		0	30.2	39.5		P(xR1a1)=2.3 J=2.3	Xue 2006[1]
朝鮮民族（京畿道ソウル）	朝鮮語	110	13.6	0.9		1.8	0.9	28.2	50.9	2.7	L=0.9	Kim 2011[16]
朝鮮民族（江原道）	朝鮮語	63	12.7			6.3	1.6	39.7	38.1	1.6		Kim 2011[16]
朝鮮民族（忠清道）	朝鮮語	72	11.1	1.4		4.2	1.4	30.6	50	1.4		Kim 2011[16]
朝鮮民族（全羅道）	朝鮮語	90	13.3	3.3		4.4	1.1	33.3	43.3		L=1.1	Kim 2011[16]
朝鮮民族（慶尚道）	朝鮮語	84	16.7	2.4		4.8	2.4	33.3	36.9	1.2	L=1.2 R=1.2	Kim 2011[16]
朝鮮民族（済州島）	朝鮮語	87	8.1	1.2		6.9	5.8	32.2	43.7	1.2	R=1.2	Kim 2011[16]
満州民族	シナ語・ツングース語	101	16.8		2.0		3.0	33.7	42.6		O*(xO1,O1b2,O2) =1.0, P*(xR1a)=1.0	Katoh 2004[17]
満州民族	シナ語・ツングース語	35	25.7	2.9	2.9	14.3	2.9	14.3	37.1	0		Xue 2006[1]
シボ族	ツングース語	41	26.8	2.4	4.9	17.1	7.3	2.4	26.8		J=7.3 P(xR1a1)=2.4 BT(xC,DE,J,K)=2.4	Xue 2006[1]
ナナイ族（中国）	ツングース語	45	28.9	0	0	17.8	0	6.7	44.4	0	NO(xN1,O)=2.2	Xue 2006[1]
オロチョン族	ツングース語	31	61.3	0	3.2	6.5		6.5	19.4	0	O(xO1a,O1b,O2)=3.2	Xue 2006[1]
蒙古族	蒙古語	65	53.0	1.5	1.5	10.6	0	1.5	10.6	4.5	R1a=9.1	Xue 2006[1]
内蒙古	蒙古語・シナ語	45	46.7	0	4.4	13.3	0	2.2	28.9	0		Xue 2006[1]
ダフール族	蒙古語	39	30.8	0	0	7.7	5.1	20.5	25.6	0	N: ≥7.7 O1: ≥5.1 NO(xN1,O)=2.6 O(xO1a,O1b,O2)=2.6	Xue 2006[1]
ハルハ	蒙古語	85	56.5	3.5			0	0	18.8		J=2.4, N1a1=4.7 P(xR1a1)=4.7 R1a1=3.5 K(xN1a1,O,P)=3.5 F(xJ,K)=2.4	Katoh 2004[17]
Zakhchin	蒙古語	60	46.7	3.3		3.3	0	3.3	8.3		N1a1=3.3 O1b2=3.3 R1a1=13.3 O(xO1a,O2b,O3) =8.3, J=1.7 P(xR1a1)=5.0 K(xN1a1,O,P)=5.0 F(xJ,K)=1.7	Katoh 2004[17]
ウイグル族	テュルク諸語	70	7.1	1.4	7.1	8.6	1.4	0	11.4		others=63	Xue 2006[1]
台湾の原住民	オーストロネシア語	246	0.4	0	0	0	66.3	10.6	11.0			Capelli 2001[18]
マレーシア	オーストロネシア語	50	6		8		8	32	30		F=6, M=2	Scheinfeldt 2006[19]
東南アジア島嶼部	オーストロネシア語	312	15.7		24.4		23.7	14.1	18.6		M1=5.4	Capelli 2001[18]
ボルネオ島 （インドネシア）	オーストロネシア語	40	5.0	0	10	0	15	37.5	17.5		F=5	Kayser 2002[20]
スマトラ	オーストロネシア語	57	5.3	1.8	3.5	0	17.5	14.0	29.8		F=14,S=3	Kayser 2006[21]
ジャワ	オーストロネシア語	53	1.9	0	1.9	0	22.6	41.5	22.6		R1=3.8	Kayser 2002[20]
バリ島 （インドネシア）	オーストロネシア語	551	1.8	0	1.1	0	18.1	58.8	6.9	0.4	H=3.4	Karafet 2005[2]
フィリピン人	オーストロネシア語	50	0	0	10	0	46		38			Tajima 2004[10]
フィリピン人	オーストロネシア語	115	5		20		28	3	39		S=2	Scheinfeldt 2006[19]
東南アジア島嶼部	オーストロネシア語 ・パプア諸語	272	9.9		8.8		20.2	18.7	22.1		S=4, M=3	Kayser 2006[21]
小スンダ列島	オーストロネシア語 ・パプア諸語	344	61.9	0	10.5		2.6		7.3		S=11, M=4	Mona 2009[22]
アンダマン諸島人	アンダマン諸語	37	0	73	5.4	0	0	2.7	5.4	0	D(M174) 73 P=10.8	Thangaraj 2002[23]

主なグループ

下表においても大きな括りでまとめられたものであることに注意を要する。たとえばハプログループDのうち、日本でD1a2、チベットでD1a1が高頻度であり、両者は四万年から五万年前にわかれた^[24][25]。また、O1b-M268には下位分類O-M95とO1b2-M176が存在し、それらの最も近い共通祖先も約三万年前にさかのぼると推定されている。ハプログループCにも日本固有のC1a1-M8とユーラシアに広く分布するC2-M217が含まれるが、両者の最も近い共通祖先は約五万年前と推定されている。C2-M217だけを取ってみても、日本ではC-F1067（日本及び朝鮮、中国等でのC-M217の多数を占める）とC-L1373（中央アジア、モンゴル以北の北東アジア、並びにアメリカ大陸先住民でのC-M217の多数を占める）の両方が観察されており、両者の最も近い共通祖先は三万年から四万年前にさかのぼると推定されている。

民族・集団	言語	n	C	D	K	N	O1a	O1b	O2	Q	その他	出典
漢族（中国）	中国語	166	6.0	0.6	1.5	1.1	9.6	16.3	55.4	0.6		Karafet 2005[2]
チベット人 （ラサ）	チベット・ビルマ語	46	8.7	41.3	0	0	0	2.2	39.1	--	F=4.3, P=4.3	Wen 2004[4]
タイ人	タイ・カダイ語	34	2.9	2.9	0	0	8.8	--	35.3	--	O(xO1a,O2)=44.1	Tajima 2004[10]
ベトナム人	オーストロアジア語	70	4.3	2.9	0	2.9	5.7	32.9	40.0	7.1	J=2.9	Karafet 2005[2]
日本人	日本語	259	8.5	34.7	0	1.6	0	31.7	20.1	0.4	NO=2.3	Hammer 2005[12]
韓国人（朝鮮半島）	朝鮮語	506	12.6	1.6	0	4.5	1.8	32.4	44.3	1.4	P(xR1a1)=2.3 J=2.3	Kim 2011[16]
蒙古族	蒙古語	65	53.0	1.5	1.5	10.6	0	1.5	10.6	4.5	R1a=9.1	Xue 2006[1]
ウイグル族	テュルク諸語	70	7.1	1.4	7.1	8.6	1.4	0	11.4	--	others=63	Xue 2006[1]
マレーシア	オーストロネシア語	50	6	--	8	0	8	32	30	--	F=6, M=2	Scheinfeldt 2006[19]

Y染色体アダム (Y-MRCA)

A0

A1

A1a

A1b

A1b1

BT

B

CT

DE

CF

D

E

C

F

G

H

IJK

IJ

K

I

J

K1

K2

L

T

MS

NO

P

K2*

N

O

Q

R