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南京写真館
2025年公開の映画 ウィキペディアから
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『南京写真館』[2](なんきんしゃしんかん、原題:南京照相館[1]、英題:Dead To Rights[1])は、2025年の中国映画。申奧が監督を務め、劉昊然、王伝君、高葉、王驍などが出演している。映画は南京事件を背景に、戦乱の中で民間人が写真館に逃げ込んで避難する様子を描いている[3]。
ストーリー
1937年、中華民国の首都南京が日本軍に占領されたとき、南京大虐殺の最中に郵便配達員の蘇柳昌は生き延びるため写真館の見習いを装う。日本軍の通訳である王広海の勧めで、蘇柳昌は伊藤という日本軍の写真技師が撮影した写真を現像させられ、「親善写真」と称した写真撮影に協力させられたこともあった。その間、蘇柳昌は写真館に国民革命軍や民間人をかくまう。蘇柳昌が南京からの脱出を助けた一人は、虐殺の証拠が残されたフィルムを世に公表した。当時、日本陸軍省の「新聞掲載事項許否判定要領」では「捕虜虐待の嫌疑を抱かせる」写真を掲載不許可と定めていた[4][5]
伊藤は蘇柳昌に通行証を2枚与え、一行は金承宗の妻子を先に逃がそうとする。しかし城門で待ち伏せに遭い、2人は殺害される——これは伊藤の仕掛けた罠であった。日本軍が宣伝用の「親善写真」を撮影する際には、公開の場で民間人が殺害された。宋存義は弟の死を写した写真を見て激昂し、協力に来た日本軍カメラマン・池田を殺す。暴行が激化する中、王広海は林毓秀を守ろうとして射殺され、金承宗は日本兵を倒し、蘇柳昌と共に伊藤を制圧する。
一同は王広海が妻子のために用意していた通行証を発見し、金承宗と林毓秀に赤子を託して脱出させることを決意する。彼らは事前に日本軍の残虐行為を記録したネガを衣服に縫い込み、伊藤の保管する証拠には古いネガをすり替えておいた。城門で金承宗は林毓秀を逃がすため命を落とすが、林毓秀は脱出に成功し、真実のネガを国際記者に渡す。
南京大虐殺を証明する写真は世界中に広まり、伊藤は絶望して自殺する。1947年、これらの写真は国防部戦犯裁判軍事法廷において、谷寿夫ら戦犯を告発する重要な証拠となった。
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出演者
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映画のモデル
本作に登場する照相館のモデルは、現在の南京・估衣廊付近にあった「金陵照相館」である。1938年初め、同館の見習いであった当時15歳の羅瑾は、日本兵が焼付を依頼してきたネガフィルムの中に、日本兵の暴行を記録した写真が含まれていることを発見した[6]。羅瑾はそれらを一部余計に焼増して密かに写真帳にまとめた。その後、日本の傀儡政権である汪精衛国民政府の時期に羅瑾は毗盧寺に駐留していた汪精衛国民政府の警衛所通信隊の訓練生となり、集中訓練期間中に写真帳を持込み所持していたが、写真が発覚すれば死刑にされる恐れさえあることを知り、写真帳を毗盧寺の便所近くの草叢に捨てた(便所のレンガの裏に隠したとする話もある[7])。1941年のことである。同じく毗盧寺で訓練に参加していた呉連凱がこれを見つけ、密かに仏像の下に隠し、その後持出し保管した[8][9]。
日本の降伏後の1946年に、「呉旋」と改名していた呉連凱は、南京市臨時参議会が南京軍事法廷のために証拠を収集していることを知り、長年隠していた証拠写真帖を提出した。この写真帖は、南京大虐殺の主犯の一人である谷寿夫を裁く際の「京字第一号証拠」となり、その後中国第二歴史档案館に収蔵された[10]。1995年6月、羅瑾と呉旋は南京で再会を果たした[11]
1947年2月6日、谷寿夫の裁判は中国政府による南京大虐殺に関する最初の公開審理であり、国内外の広い注目を集めた。公判は三日間にわたり、80名を超える証人が出廷して谷寿夫ら部隊の残虐行為を証言した。その中には3名の外国人証人も含まれていた。谷寿夫は当初南京大虐殺の罪を否認したものの、これら多数の証言と物証により、最終的には部隊に対し民間人や捕虜の虐殺を容認・教唆した犯罪事実が認定された[12]。
評価
要約
視点
支持
本作の内容および芸術的手法は、中国本土のメディアから高い評価を受けている。中国映画評論学会の胡建礼事務総長は『北京晩報』の取材において、本作の成功要因を「大きな歴史を、小さな切り口で描く」叙事手法にあると評した。すなわち、壮大な歴史叙述に頼るのではなく、照相館という限られた空間に焦点を当てることで、観客が庶民の視点から物語に入り込み、より強い共感を得られる構造となっているのである[13]。
『揚子晩報』傘下の「紫牛新聞」も、監督が伝統的な英雄叙事を排し、戦火の中に生きる一般市民へと視線を定めた点を高く評価した[14]。また、映画評論家の陸支羽は、暴力描写における巧みな抑制を指摘している。血生臭い映像を直接映すのではなく、空白を残す手法や登場人物を強調することで、観客に深い印象を与えているとしている。人物造形については、評論家の井潤成が「近年の日中戦争を題材とした映画の中で最も真実に近く、人間性を最も忠実に再現した作品」と称賛した[13]。さらに『新京報』は、本作が従来の南京大虐殺を題材とした映画と異なり、歴史的事実や観客、そして市場を同時に尊重しつつ、より幅広い受容層に届く新たな表現方法を確立したと評価している[15]。
『北京晩報』や大公網の報道によれば、本作は2025年夏の興行シーズンにおいて興行収入第1位を記録しただけでなく、豆瓣においても11万人のユーザーから8.6という高評価を受け、年間の国産劇場公開作品の中で最高の記録を樹立した[16]。『紫牛新聞』によれば、多くの観客が自発的にSNS上で本作を推奨し、多くの親がこの映画を子どもにとって、若い世代が民族に起こった悲劇を理解する契機となり得る「歴史の授業の入門」だとしたという。[14]。『新華日報』は、本作が多くの親子連れ観客を引きつけ、単なる鑑賞体験にとどまらず、「観る」から「記憶する」さらには「継承する」へと価値の段階を押し上げたと分析した[17]新華社と人民日報は短編映像を公開し、河南の9歳の子どもがこの映画を観た後、「帰宅後に自発的に自分が大切にしていた日本の漫画を破り捨てた」と伝えた。[18][19]湖北日報は、若い世代にとってこの映画は「命に刻まれる歴史の授業のようだ」と評した[20]。
さらに、中国本土の一部の自媒体や社説は、本作を歴史虚無主義に対する積極的な反撃として評価し、史実に基づく映画こそが歴史への真の敬意であり、いわゆる「抗日神劇」とは一線を画すものだと高く称賛している[21][22]。
批判
アジア太平洋戦争戦争終結80周年にあわせて歴史題材映画が相次いで公開されたこともあり、本作は世論の反響も非常に大きかった[18]。新浪微博では、本作を批判・揶揄する一部のネットユーザーが管理側によってアカウントを凍結される事例も報告されている[23]。台湾では正式公開は行われず(試写会のみ実施)、一部の論調では本作が「憎悪教育」を強化するのではないかという懸念が示された。特に映画が引き起こした「日本文化全体のラベリング」現象をめぐって議論が展開された[24]。また台湾の一部メディア関係者からは、日本軍による捕虜への組織的な暴行を十分に描いていない一方で、「女性や子どもの被害や市街での衝突」といった場面に焦点を当てたことが、事件の正確性を弱めているとの批判も出ている[25]。
フランス国際放送によると、中国のインターネット上では、子どもが映画の一部を見た後に日本のウルトラマン漫画カードを切り取る(実際にはこの作品は戦後に登場した)行為や、地図上の日本を叩く行為が始まり、日本国大使館が注意喚起の情報を出したり、外国人への街頭暴力事件が報告されたりするなど、歴史的な日本軍侵略批判とは無関係な行為が急増し始めた[18][26]
『環球時報』は社説で、これは元々歴史を記念しつつ芸術的に表現した作品で、表現手法には様々な見方や議論、進歩の余地があるのは当然だが、反ファシズムの歴史に対してこのような悪意ある扱いをすべきではないと主張した。芸術的議論の名目で歴史を歪め、「反日教育」というレッテルを貼る「ネットリンチ」は意図が卑劣だとし、本作の欠点が全体を否定するものではないことを称賛した。『南京写真館』は真に「反人種主義の重要な芸術作品」であり、全世界の人々が歴史の教訓を忘れないための作品であって、報復や民族主義を煽るものではなく、海外の好事家の中傷を拒否するものであると述べた。さらに、同作が世界の週末興行収入ランキングで首位に立った際の第二篇社説では「歴史を記憶するのは憎悪を継続させるためではなく、未来を切り開き、子孫が再び武力を交えないようにするためだ」といった、より穏健な外交的表現を強調した。また、その後の報道では日本についても肯定的に言及し、石破茂本人が8月4日に「保守派からの圧力で首相が戦後80周年談話の発表を見送るか検討した」という報道は誤りだと公に釈明したことや、同日に名古屋市長の広沢一郎が記者会見で南京事件を「否定できない事実だ」と述べた例などを挙げ、日本国内でも正しい戦後史観を維持しようとする勢力が消えていないことを認めた[27][22].
一部の作品批判を行ったネットユーザーが新浪微博で発言禁止処分を受けた。北京日報報業集団傘下の公衆号「長安街知事」は、これらのユーザーが歴史の記憶と反ファシズム映画を反日や対立煽動と中傷し、中国人に対する認知戦を里応外合で仕掛けているのではないかと批判するコメントを発表した。[28]
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脚注
外部リンク
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