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コンバインドサイクル発電(コンバインドサイクルはつでん、英: combined cycle, CC)は、内燃力発電の排熱で汽力発電を行う複合発電である。内燃機関としては主にガスタービンエンジンが使用される。この場合狭義においてはガスタービンコンバインドサイクル発電[1]という。
燃焼ガス温度をさらに高め、省エネルギー性、耐久性、環境適合性などを向上させた改良型に、1,300 ℃級のACC (Advanced Combined Cycle)、1,500 ℃級のMACC (More Advanced Combined Cycle)、1,600 ℃級のMACC IIがある[2]。
コンバインドサイクル発電には、次のような特徴がある。
発電方式 | 温度条件 (℃) | 発電端発熱量基準熱効率 (%) | 備考 | |
---|---|---|---|---|
高位 | 低位 | |||
コンバインドサイクル (CC[4]) | 1100 | 44 | 49 | |
1300 | 49 | 55 | 再熱ボイラ 再熱蒸気タービン 改良型コンバインドサイクル発電 (ACC[5]) | |
1400 | 51 | 57 | 再熱ボイラ 再熱蒸気タービン 蒸気冷却式燃焼器 | |
1500 | 53 | 59 | 再熱ボイラ 再熱蒸気タービン 蒸気冷却式燃焼器 (MACC[6]) | |
1600 | 55 | 61 | 再熱ボイラ 再熱蒸気タービン 蒸気冷却式燃焼器 (MACCII[7]) | |
1700 | 60 | 66 | 再熱ボイラ 再熱再生蒸気タービン 蒸気冷却式燃焼器 水素燃料 | |
汽力(参考) | 40 | 42 | 主蒸気温度538℃ 超臨界圧再熱ボイラ 再熱再生蒸気タービン (SC[8]) | |
43 | 45 | 主蒸気温度600℃ 超々臨界圧再熱ボイラ 再熱再生蒸気タービン (USC[9]) |
構成 | 概要 | 熱効率 | 単独運転 | 整備 | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
定格負荷 | 部分負荷 | ガスタービン | 蒸気タービン | ||||
排熱回収(一軸型) | それぞれの構成要素を1台ずつ1つの軸に直結したユニットを並列設置 | 2 | 1 | 可 | 不可 | 1つの系統(軸)ごとに行うことができる | ピークロード用 |
排熱回収(多軸型) | ガスタービンによる発電部、排熱回収ボイラー、蒸気タービンによる発電部を適宜組み合わせる[10] | 1 | 2 | 可 | 不可 | 1つの機器の停止が全体の停止につながる | ベースロード用 |
排気助燃 | 排熱回収ボイラへの配管の途中のバーナーで助燃を行う | 4 | 3 | 可 | 不可 | 蒸気タービンの出力分担を大きくすることで出力あたりの建設費を低減できる | |
排気再燃 | ガスタービン排気をボイラーの燃焼用空気として利用 | 3 | 4 | 可 | 可(押込み通風機を別置で) | ガスタービン単独が可 | 既存の汽力発電所の出力増強 |
給水加熱 | ガスタービン排気で蒸気タービンの給水を加熱 | 5 | 5 | 可 | 不可 | ガスタービン単独が可 | 既存の汽力発電所の出力増強 |
過給ボイラ | 圧縮機からの空気でボイラを加圧燃焼させ、その排気の圧力でガスタービンを回してその排熱でボイラ給水を加熱 | 可 | 不可 | 固体燃料の利用が容易 |
圧力容器内に収納した流動床ボイラーから発生した高温・高圧の蒸気により蒸気タービンを回して発電するとともに、ボイラーの排ガスによりガスタービンを回して発電する方式を加圧流動床複合発電 (PFBC[11]) と呼ぶ。加圧流動床複合発電方式は、コンバインド発電方式のため、高い発電効率を得ることができ、さらにガスタービン空気圧縮機を使用することで大型補機が不要となり、所内動力が低減されるため、従来型の微粉炭発電に比べ、送電端効率は約2%高くなる。さらに、燃料を加圧下で燃焼させるため、ボイラーを小型化できるほか、ボイラー内部で硫黄酸化物を除去する炉内脱硫方式により、排煙脱硫装置が不要となることなどから、発電所をコンパクトにつくることができる。
配管の摩耗や損傷が多く[12]、低い稼働率や高い補修費が問題となった[12]。そのため苫東厚真発電所3号機は2005年に廃止、大崎発電所1-1号機も2011年に休止となった[12]。また同方式の予定だった大崎発電所1-2号機は建設計画が撤回され、別方式の実証設備とされた[12]。
燃料のガス化とコンバインドサイクル発電を組み合わせた発電形式を石炭ガス化複合発電 (IGCC[13]) と呼ぶ[14]。低質な石炭や重質油、廃棄物などは硫黄や塩素、重金属を含むことがあり、そのまま燃焼させて発電を行うとその環境負荷物質が大気中に排出されて問題となる。ガス化複合発電では、燃料をガス化したときにそれらの不純物を除去することができ、そうして生成したクリーンなガスを用いて発電を行うことで、環境負荷物質の少ない発電を行うことができる[14]。また、従来の方式に比べて二酸化炭素排出量を削減することができ、石炭を燃料とした発電で石油発電並の二酸化炭素排出量を達成することができる。空気吹きと酸素吹きの2種類のガス化方式があり、2022年時点で空気吹きの勿来と広野の2基の発電所が商用運転中である[15][16]。酸素吹きのIGCCは大崎発電所で試験実証中である。
石炭をガス化させた際に含まれる水素を燃料電池の燃料とし、燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンを組み合わせた発電形式を石炭ガス化燃料電池複合発電 (IGFC[19]) と呼ぶ[14]。IGCCと比較し更なる高効率発電が可能となり、二酸化炭素排出量の低減も図ることができる[14]。大崎発電所にある酸素吹きIGCC実証機に組み合わせて2022年4月から試験実証中である[20]。
コンバインドサイクル内に太陽熱を利用した発電方式を太陽熱複合発電 (ISCC[21]) と呼ぶ。太陽熱発電の一種であり、太陽熱を補助熱源とし、蒸気サイクルの出力を増加させることで、発電能力の向上や燃料の使用量の低減を行うことができる。2010年にイタリアのアルキメデス複合発電所で世界初のISCC発電設備が建設された。他にもアメリカ、エジプト、イラン、モロッコ、アルジェリアなどで運転が開始されている。
1940年代後半から開発は開始された。黒鉛炉・溶融塩炉・液体金属炉を1000度近い高温で操業して、ヘリウムで冷却し、ヘリウムをガスタービンで膨張・温度低下させたあと、廃熱ボイラで冷却して、原子炉に戻す。基本的にガスタービン複合発電であり、原子力発電の熱効率を向上させる。
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