Loading AI tools
1970年代から2000年代にかけて発生した家庭用ビデオ規格の主導権争い ウィキペディアから
ビデオ戦争(ビデオせんそう)とは、ビデオテープレコーダに関する規格争いである。VTR創世期以降、さまざまな規格争いが展開されている。
家庭用ビデオの最初期には、カセット収納型規格として
など、さまざまな規格が乱立していたが、開発・販売が先行していたU規格がカセットの大きさや価格の面で家庭用としては普及せず、各社が1/2インチテープを使用する各規格を構築し「家庭用の本命」とPRしていた。
その後1975年にソニーが文庫本サイズの媒体を用いるベータマックスを発売したのに対し、1976年に日本ビクターはVHS方式のビデオカセッターHR-3300を発売[2]した。
他社ではVコードを開発した東芝・三洋が「ベータ方式」に参入(当初は併売)、オートビジョン方式・VX方式を開発した松下電器も、子会社であるビクターが開発したVHSの併売を決め、最終的には「ベータ方式」と「VHS方式」に収斂された。
1980年にテクニカラーと船井電機が提唱したコンパクトビデオカセット(CVC) はキヤノンにもOEM供給されたが既にベータ方式とVHS方式の2強状態であったため、数年で撤退し船井電機はVHS陣営に加わった。
結果としてベータ陣営は、ソニーを規格主幹として東芝・三洋電機・NEC・ゼネラル(現・富士通ゼネラル)・アイワ(現・ソニーマーケティング)・パイオニア(現・オンキヨーテクノロジー)が、VHS陣営は日本ビクターを規格主幹として松下電器を中心にシャープ・三菱電機・日立製作所・船井電機・ニコン・オリンパス・赤井電機などが、それぞれ加わった。
ソニーのベータマックスが「U規格と同等の性能確保」を意識し、基本録画時間を1時間(後のβIモード)として画質を堅持、U規格と同じ形態によるフルローディングとして機能性を維持していた[注 1]のに対し、VHS方式では家庭用途を意識して、小型軽量、低廉なテープ、市場調査の結果、基本録画時間を2時間と設定した。βⅠモードの画質は、VHS標準モードと比べ、S/N、解像度は数値は同等であったが、視覚的には勝っていた。録画時間で劣るベータマックスは、すぐさま2倍モードに相当する「βII」モードを開発・搭載することでVHS方式に対抗したが、2倍モードの構造的問題(H並びが合わないなど)から、再生処理を本来規格から変更せざるを得ず、βIIモードの再生処理を基本とした「ベータ方式」として規格を再構築し、これを各社が採用する形となった(最初期のβIをソニー以外の各社がサポートしない理由となっている)。ベータマックスの記録モードの基本が、テープ速度を半減したβIIモードになったことから、画質面ではS/N比は3dBほど劣化し、VHSにやや劣ることになった。機能面ではVHSはノイズレススロー再生や、ドロップアウト補正機能を初期においてリリースし、ソニーも高機能化を意図した製品を投入した。
一方でVHS方式はユーザーにはベータマックスよりも録画時間が長い点が受け入れられ、メーカーには使用部品数が少なくコストの面でニーズに合致していた[2]。販売店の多かったVHS陣営は1978年度には生産台数でベータ陣営を抜き、1982年には毎日新聞が「ベータに敗色」と見出しをつけて報じるなど、「VHSの勝利」という認識が拡がった。
ソニーはベータの苦境を見て、1984年(昭和59年)に4日間連続の新聞広告で「ベータマックスはなくなるの?」「ベータマックスを買うと損するの?」「ベータマックスはこれからどうなるの?」といった問いかけに「答えは、もちろん「ノー」。」「もちろん発展し続けます。」というキャッチコピーを入れ、最終日に「ますます面白くなるベータマックス!」という展開で終わる新聞広告を行ったが、4日間継続して読み続けないと、消費者に意図が上手く理解できない構成だった[注 2]。
東芝・三洋などベータ陣営のメーカーもVHS方式の併売をはじめ、程なくベータ方式の新規開発を取りやめ、VHSへ完全に鞍替えした。ベータ方式の規格主幹であるソニー自身も、1988年(昭和63年)にVHSの併売に踏み切り、ベータ方式は事実上の市場撤退となった[2][注 3]。こうしてVHS規格のビデオデッキは世界的に普及することとなり最盛期の全世界での普及台数は9億台以上に達したといわれており家庭用ビデオ規格の代名詞となった[2]。
ソニーは、市場でのVHS普及後もベータ方式の開発・販売を続けていたが、2002年(平成14年)8月27日に、同年12月31日でベータデッキの生産終了を発表、市場からの完全撤退となった。
VHS勝利で幕を閉じた理由として、以下が挙げられる。
規格争いに勝利したVHSも、2000年代から映像記録媒体が光ディスクであるDVDおよびBlu-ray Discに移行したことで、2010年代に終末期を迎えた。パナソニックは2012年(平成24年)に入って「VHSデッキの日本国内向け生産を2011年(平成23年)限りで完全終了した」旨を公式発表。これにより、大手メーカーでのビデオデッキ生産は終了した。その後、ドウシシャ(「SANSUI」ブランド)が再生専用プレーヤーの生産を終了し、最終的に船井電機(DXアンテナ)1社がDVDレコーダーとの複合機を製造していたが、2016年(平成28年)7月31日をもって生産を終了した[5][6]。
また多くの国でアナログテレビ放送が終了し、デジタルテレビ放送へと完全移行しており、録画ができるビデオ規格としては、完全に過去のものとなった。VHSにはデジタル放送が録画できる派生規格であるD-VHSがあるが、2000年代後半に製造が終了した。
なおVHSは2006年に電気・電子・情報技術などの歴史的偉業を称えるIEEEマイルストーンに認定された[2]。日本では八木アンテナ、富士山レーダー、東海道新幹線、クオーツ時計、シャープの電卓に次ぐ快挙となった。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.