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土地収用(とちしゅうよう)とは、日本国憲法第29条第3項「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」に基づき、公共の利益となる事業の用に供するため、土地の所有権その他の権利を、収用委員会(委員は都道府県議会の同意を経て任命された収用委員により構成される行政委員会)での審理や裁決など、一連の手続きを経てその権利者の意思にかかわらず、国又は地方公共団体等に強制的に取得させる行為をいう。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
土地の収用は、公共の利益となる事業において、民法上の手段だけではその事業の目的を達成するのが困難な場合に、私人の財産権を強制的に取得するためのものであることから、土地収用法第3条、第5条、第6条及び第7条により土地収用が可能な事業を定めている。
以上の一に掲げるものに関する事業のために欠くことができない通路、橋、鉄道、軌道、索道、電線路、水路、池井、土石の捨場、材料の置場、職務上常駐を必要とする職員の詰所又は宿舎その他の施設
上記の事業の用に供するため、その土地にある次の権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合において、これらの権利を収用し、又は使用することができる(同法第5条第1項)。
土地収用法第3条各号の事業の用に供することが、必要且つ相当である場合において、その土地の上にある立木、建物その他その土地に定着する物件を、収用し、又は使用することができる。
土地収用法第3条各号の事業の用に供することが、必要且つ相当である場合において、その土地に属する土石砂れきを、収用することができる。
政府が基本測量を実施するため又は公共団体等の測量計画機関が公共測量を実施するために必要がある場合において、土地、建物、樹木又は工作物を収用し、又は使用することができ、収用又は使用に当たっては、土地収用法を適用することとしている(測量法第19条、第39条)。
日本国憲法第29条第3項において、私有財産権を公共のために用いることが正当な補償の下に行われなければならないこととなっており、これを受けて土地収用法第6章において、損失の補償に関する規定が設けられている。
土地収用の手続きは、大きく事業認定庁(国土交通省又は都道府県知事)が行う「事業認定手続」と、収用委員会が行う「収用裁決手続」に分けられる。
起業者は、事業のために土地を収用し、又は使用しようとするときは、事業認定庁の事業認定を受けなければならず、認定を受ける前に、国土交通省令で定める説明会等で事業の内容を利害関係を有するものに説明しなければならない(土地収用法第15条の14、第16条)。また事業の内容によって、国土交通省が事業認定庁となるものと、都道府県知事が事業認定庁となるものに分けられる(法第17条)。
ただし、都市計画法に定める都市計画事業については土地収用の事業の認定は不要であり(都市計画法第69条)、都市計画事業の認可又は承認をもって事業認定に代えるものとされる(都市計画法第70条)。
事業認定に当たっては、以下の要件をすべて満たさなければならない(法第20条)。
利害関係人は、意見書を提出したり、公聴会開催請求をすることができる(法第23条、第25条)。
国土交通大臣(又は地方整備局長、北海道開発局長若しくは沖縄総合事務局長)が事業の認定に関する処分を行おうとするときは、行おうとする処分と反対の意見書が提出された場合は,社会資本整備審議会の意見を聴取しなければならず、都道府県知事が事業の認定に関する処分を行おうとするときは、都道府県が設けた審議会等の意見を聴取しなければならず、その意見を尊重して処分をしなければならない(法第25条の2)。
事業認定庁は、事業の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を起業者に文書で通知するとともに、起業者の名称、事業の種類、起業地、事業の認定をした理由、土地の図面の縦覧場所を、官報や都道府県が定める方法によって告示しなければならない(法第26条1項)。事業の認定の告示の日から、効力が発生する(法第26条4項)。起業者は、事業の認定の告示後に、土地調書及び物件調書を作成しなければならない(法第36条)。
起業者は、起業地の全部又は一部について、事業の認定後の収用又は使用の手続を保留することができる(法第31条)。
公共用地の取得に関する特別措置法第2条に基づき、公共の利害に特に重大な関係があり、かつ、緊急に施行することを要する事業として行われる特定公共事業(高速道路や国道、新幹線、成田国際空港など国家的に重要な事業が指定されている)について、国土交通大臣による特定公共事業の認定を受けることができ(公共用地の取得に関する特別措置法第7条)、その場合で、起業者の申請に基づき、収用委員会に対し補償の額について審理が終了していない場合でも、仮補償金の払渡しまたは供託を条件として権利取得裁決及び明渡裁決をすることができる(公共用地の取得に関する特別措置法第20条第1項)。この場合、申立ての日から2月以内に裁決をしなければならない(公共用地の取得に関する特別措置法第20条第4項)。尚も審理を要すると認める事項については継続し、差額等については補償裁決をする(公共用地の取得に関する特別措置法第21条)。
収用委員会が緊急裁決を行わない場合は、起業者からの異議申立てに応じ、国土交通大臣が裁決の代行を行う(公共用地の取得に関する特別措置法第38条の3)。
この制度は、近年は用いられていないが、主な適用事例として1971年に成田国際空港(当時の名称は新東京国際空港)の建設の際の土地収用に使用された事例がある。
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(駐留軍用地特措法)により、駐留軍(在日米軍)の用に供するため土地等を必要とする場合に使用または収用する場合は地方防衛局長の申請に基づき、防衛大臣が土地等の使用又は収用の認定を行い、裁決については土地収用法の規定が適用される。
なお、前述した公共用地の取得に関する特別措置法に準ずる緊急裁決の制度や使用について従前から駐留軍の使用に供されていた土地について使用を継続するに当たり期限まで裁決の審理が終わらないときの認定土地等の暫定使用の制度が定められている。
その他、土地収用や使用について自衛隊法や消防法などの規定に基づき、補償規定が設けられている。 また、税制では収用等により土地建物を売ったときの特例として、対価補償金等で他の土地建物に買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例や譲渡所得から最高 5,000万円までの特別控除を差し引く特例が用意されている[2]。
アメリカ合衆国憲法においては、土地収用は、修正第5条「(前略)何人も、(中略)法の適正な手続きによらずに、生命、自由または財産を奪われることはない。何人も、正当な補償なしに、私有財産を公共の用のために徴収(収用)されることはない。」、および修正条項第14条「(前略)如何なる州も法の適正な手続き無しに個人の生命、自由あるいは財産を奪ってはならない。」に基づく。
なお、英語では収用を Eminent domain あるいは Taking という。
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