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羊肉(ようにく)は、羊の肉である。英語表現としては子羊肉をラム(lamb)、成羊の雌または去勢雄の羊肉をマトン(mutton)、雄羊をラム(lamb)、雌羊をユー(ewe)と区別する。生後およそ12か月以下の子羊の肉はラム、それよりも年をとった羊の肉はマトンと呼ばれる。ただし、この区別は国によってことなる(後述)。
日本では、羊の飼育そのものが近代に入るまで普及しなかった為、羊肉の利用も牛肉、豚肉や鶏肉に比べると少ないが、明治時代に養羊が奨励された北海道では常食となっており、関東でも常食化してきている。
世界では地中海料理、アフリカ料理、中東料理、南アジア料理、そして中華料理において、大きな特徴となっている。日本では主にジンギスカン、しゃぶしゃぶ、カレー、ロースト、ステーキといった食べ方が好まれる。また漢方では体を温める作用があるとされており、北海道、中国北部、モンゴルといった寒さの厳しい地域で好まれているが、暖かい台湾や香港でも羊専門料理店がある。
肉質について、ラムはマトンよりも柔らかく、マトンはラムよりも獣臭が強いと言われる。マトンは魚肉ソーセージのコク出し用の加工用原料としても利用されている。独特の臭いがあるため、苦手とする人もいる。マトンの独特の匂いに大きな役割を果たしているのは4-メチルオクタン酸、4-メチルノナン酸、4-エチルオクタン酸の3種の分岐鎖脂肪酸である[1]。
脂肪は融点が高く(約44~45度)、調理してからすぐ食べたほうが良いとされる[2]。また、冷たい飲料と共に大量に摂取すると脂肪が腸内で凝固する危険性があるので注意が必要である[3]。
日本国内で食されている羊肉で、日本産のものは1パーセント弱と言われる[4]。オーストラリア、ニュージーランドからの輸入がほとんどで、年間に約5300トンを日本は輸入している[4]。2018年時点では輸入量は2パーセントほどだが、アイルランド産の羊の輸入も増加傾向にある[4]。フランス産の羊は2001年から輸入禁止措置が取られており、2017年に輸入再開となった[4]。
江戸時代末期に、肥前で長崎奉行が羊の飼育を試みたり、江戸の小石川御薬園(現・東京大学大学院理学系研究科附属植物園)で羊を飼育したのが、記録に残っている日本初の羊飼育となる[5]。
日本で産業として羊の飼育が本格化したのは明治時代になってからである[4]。1914年の第一次世界大戦勃発に伴い、日本では軍服需要のため国内産ウールの増産が必至となり、1918年には「めん羊100万頭計画」が国策として発表された[4]。しかしながら、1945年になっても、日本国内の羊は18万頭に留まっていた[4]。
第二次世界大戦後は衣料不足からウールの需要も急増し、一時は94万頭を超えるくらいまで伸びたが、羊肉や羊毛の輸入自由化と共に再び減少に転じた[4]。昭和50年代になって、肉用にサフォーク種の羊が導入されるようになると一時的に増加し、2018年時点では微増傾向にある[4]。
2017年の畜産技術協会の統計では、都道府県別の羊頭数では北海道の8630頭を筆頭に、以下、長野県の1014頭、栃木県の651頭と続き、日本全国合計では17513頭である[4]。
2019年の経済協力開発機構の統計で年間1人あたりの羊肉の消費量を国別に比較すると1位はカザフスタンの8.2キログラム、2位はオーストラリアの6.2キログラム、3位はノルウェーの4.5キログラムとなっており、以下、サウジアラビア、トルコ、イランと続く[6]。
カザフスタン料理は羊肉のみならず、肉料理のメニューが豊富であり、牛肉の消費量も世界第6位であるが、イスラム教圏であるため豚肉の消費量は少ない[6]。
オーストラリアは羊の飼養頭数でも世界第2位であり、輸出量では世界1位である[6]。
サウジアラビア、トルコ、イランはいずれもイスラム教圏であり豚肉食を教義で禁じられているため、羊肉や鶏肉の消費量が多い[6]。イスラム教圏の国々は羊肉の生産国としても上位を占めている[6]。
キリスト教圏においても、イエス・キリストを「神の子羊」と呼ぶことから、仔羊肉(ラム)は伝統的で特別な食物ととらえられている[7]。イギリスではイースターの日曜日にラムを焼いて食べる伝統的な習慣がある[7]。なお、イギリスの1人あたりの羊肉年間消費量はイランに次ぐ第7位である[6]。
インド、パキスタン、バングラデシュなどの多くの南アジアの国々ではマトンという英単語は通常は羊ではなく、ヤギの肉を指す。インド料理のマトン料理は、家庭では山羊の肉を使用している。ちなみに英語で山羊の肉はシェヴォン(chevon)という。[要出典]
カシュルートによれば、ユダヤ教では羊肉は食べてよいとされる。しかし牛と同様に決められた方法(シェヒーター)で屠畜せねばならず、後半身の特定の種類の脂肪や坐骨神経は食べてはいけない。イスラム教にもハラールと呼ばれる、同じような決まりが存在する。[要出典]
日本、イギリス、フランスなど各国で羊肉の部位の分け方は異なる[8]。
伝統的なイギリスの部位の分け方は以下のとおりである[9]。
フランスにおける部位の分け方は以下のとおりである[8]。
食品表示基準において、以下の様に定められているが、商慣習上の名称や地域特性によって使用されている名称でも表示可能とされている[10]。また、日本への輸入羊肉にあたっては業者間で相互に確認ができていれば、他の名称を使っても良いとされる[10]。
ラム、マトン、ホゲットを分ける定義は国によって異なる。国によっては、ホゲットの分類が無く、ラムとマトンの2種類の区別しかないこともある[12]。
良く知られる区別の方法として「歯の本数」と「年齢」とがあり、以下に例示する[12]。
区別の方法 | ラム | ホゲット | マトン |
---|---|---|---|
歯の本数 | 永久歯が0本で乳歯のみ | 永久歯が1本 | 永久歯が2本以上 |
年齢 | 生後1年未満 | 生後1年から2年未満 | 生後2年以上 |
ホゲットは、「幻の羊」として採り上げられること[13]があるが、以下のような理由が考えられる[12]。
上述のようにラムとして出荷されない羊を育てていけば、ホゲットになり、マトンとなるため「幻」と呼ぶのは過剰ではないかという意見もある[12]。
オーストラリアでの定義は以下のとおりである[14]。
補助分類として以下のものがある[14]。
ニュージーランドにおける定義は以下のとおりである[15]。
この他に、「めん羊」、「羊」、「羊肉」の表示が認められている。
日本のジンギスカン料理店などで一般的に見られる円状の肉。マトンを円筒状に冷凍にした肉塊をスライスしてある。ラムを使えば、ロールラムとなる。
作り方は、あん肝ロールの要領で一度捌いた肉をまとめてロール状にするというもの。最初から円筒状に切りだしているわけではない。食肉業界側としては、日本では羊肉を細かい部位ごとに切り分けても需要が少ないこと、外食産業側では冷凍することで扱いが簡単になること、消費者側では手頃な大きさにほぐれて食べやすくなることから普及した。
さまざまな部位の肉をプレスして製造されるため、年間を通じて比較的に安価に流通している[17]。
日本では、ジンギスカンが代表的な日本の羊料理とされる[7]。
また、各国の羊料理のうち、以下のような料理が代表的な料理として日本では紹介されることがある。
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