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すがしま型掃海艇

日本の海上自衛隊の中型掃海艇の艦級 ウィキペディアから

すがしま型掃海艇
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すがしま型掃海艇(すがしまがたそうかいてい、英語: Sugashima-class minesweepers)は、海上自衛隊の中型掃海艇Mine Sweeper Coastal, MSC)の艦級[1]ネームシップの建造単価は146億円であった[2]

概要 すがしま型掃海艇, 基本情報 ...

自衛隊ペルシャ湾派遣の経験にもとづき、ヨーロッパから輸入した対機雷戦システムを搭載し、機雷掃討(従来からの掃海は「面」で無力化を行うが、掃討はハイテク機雷に対し「点」で無力化を行うもの)を主眼として設計開発され、03中期防08中期防13中期防にかけて計12隻が建造された[1]

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来歴

要約
視点

海上自衛隊掃海隊群では、その前身組織の時代より、太平洋戦争中に日米双方が日本近海に敷設した機雷の掃海作業というかたちで実任務を遂行してきた。そして保安庁警備隊時代より、そのノウハウを反映した掃海艦艇を国産しており、その実力は世界の主要海軍のなかもトップレベルにあるとされていた。しかし一方で、1990年代に至るまで時代を画するような新装備の導入もドラスチックな組織的変化もなく、地道で着実な整備が指向されていた[3]

そして1991年自衛隊ペルシャ湾派遣での経験が、この状況に一石を投じることとなった。湾岸戦争中にイラク軍が使用した機雷のなかにはMANTA機雷のような新型のステルス機雷が含まれていたが、これに対し、派遣部隊を構成していたはつしま型や、当時新鋭の中深度対応掃海艇であるうわじま型(63MSC)でも、探知・処分は極めて困難であることが判明した。また同作戦に参加した欧米諸国軍と比して、艇の安全性や処分作業の自動化・省力化において大きな立ち遅れがあると判断された[4]

海上幕僚監部では、1992年9月に「63MSC中深度機雷排除システム改善技術検討委員会」、同年11月には「MCM-V近代化検討委員会」が設置され、平成6年度計画で建造する掃海艇(06MSC)における対機雷戦システムの研究が着手された[4]。MCM-Vプロジェクトチーム(海幕装備体系課 艦船体系班長(香田洋二1等海佐)および武器・技術担当者、計3名)は、1993年3月13日から22日にかけて渡英し、当時の欧米諸国掃海艇のなかでは最新であったイギリス海軍サンダウン級機雷掃討艇インバネス」への乗艦研修を含む現地調査を行った[4][5]

これらの研究結果を総合して、06MSCは、同級搭載の対機雷戦システムを導入した550トン型掃海艇として計画された[5]。しかし対機雷戦システムを輸入に頼ったこともあって、建造価格の当初見積もりは200億円超となった[5]。船価低減のための見直しによって約180億円まで抑制されたものの、当初設定の予算額の約150億円は超過し[4]、また63MSCの約80億円、やえやま型掃海艦(01MSO)の約160億円も上回る結果となった[5]。防衛庁内局での審査は通過し、概算要求に盛り込まれたものの、大蔵省での説明においては、このコスト高騰について厳しい指摘を受けた[5]。平成6年度予算の編成作業が行われていた1993年は、7月の第40回衆議院議員総選挙自由民主党が過半数割れ、日本社会党も惨敗して55年体制が崩壊、新党ブームに後押しされた細川内閣が成立した年でもあった[5]。この影響で、予算の政府案の決定は従来の12月末から大幅にずれ込んでいたこともあり、海幕は1月まで大蔵省との折衝を継続したものの、結局、査定落ちとなった[5]

海幕は、平成7年(1995年)度予算でもほぼ同一スペックのMSCを要求することとしたが、捲土重来を期して、更なるコスト低減が図られることとなった[5]。造船会社等の協力を得て設計を改訂し、掃海具も見直された結果、船型は510トン型に圧縮され、建造価格は約150億円に抑制された[5]。同年度予算では、他の艦船の予算額が抑えられていたこともあり、今度は順調に経過して、計画通り07MSCとして予算成立した[4][6]

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船体

船体設計はおおむね63MSCのものが踏襲され、使用樹種も下記の通りで同一である[7]

  • ベイマツ - キール・スケグ、船底縦通材、チャイン材、フレーム、外板・甲板
  • ケヤキ - キール摩材
  • タモ - 合板

ただし、従来の掃海艇では掃海具の展張のために広い船尾甲板が要求されていたのに対し、本型ではサンダウン級と同様に掃討重視の艇とされたことからその必要は薄れた一方、居住性の向上や機雷処分具の格納庫を設ける必要があったことから、船首楼はかなり延長されている[8]。これは、原型のサンダウン級をおおきく上回る排水量であってはならないという制約によるものでもあった[7]

船首楼後端の左舷側にはPAP-104 Mk.5機雷処分具2機分の格納庫が設けられており、レールにのせて後方に引き出すことができる。その後方の船尾甲板には、左舷側には機雷処分具の揚降用の掃討用クレーンが、右舷側には普通掃海具の揚降などに用いられる掃海用ダビットが設けられている[8]。また艦橋からの後方視界向上を意図し、掃海艇では初めて2本並列配置となったが、運用の結果、艦橋左右後方の視界を妨げることから、続くひらしま型(16MSC)では従来通りの1本煙突に戻されている[7]

なお、2020年から順次にロービジ(「ロービジビリティ」Low-visibilityの略[注 1])塗装へ塗装変更が進んでいる。その内容としては、煙突頂部の汚れを目立たなくするための黒帯の廃止、艇番号及び艇名の灰色化かつ無影化である[9]

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機関

推進方式としては、従来のディーゼルエンジンによる機械駆動とともに、低速時用の補助推進装置として電動推進方式を併用している。これは、特に機雷掃討時には低速で長時間航走する必要があり、また放射雑音およびキャビテーションノイズ低減が求められたためである。主機関は63MSCと同じ6NMU-TA(B)Iが採用された[10]。これは輸送艇1号型などに搭載された三菱重工業のSU系列ディーゼル(S6U)を非磁性化して技術研究本部が開発した4サイクル6気筒ディーゼルエンジンであり、同系列の機種ははつしま型後期型(60MSC)より踏襲されてきている[11]。また省力化のため、機関制御は全て艦橋からの遠隔操作であり、機械室に当直員は配置されない[8]

なお水中放射雑音低減のため、主発電機4基は、各原動機とともに水線より上、船首楼内の第1甲板に配置されている[4]。磁気掃海具が永久磁石式とされたこともあり、掃海発電機は搭載されていない[12]

機雷掃海時には航路保持が求められるのに対し、機雷掃討時には定点保持(Hoverring Positioning)が求められることから、GPSと連動した自動船位保持装置も本級より新たに導入された。機雷掃討の際の運動性能向上、ホバリング性能向上のため、可変ピッチプロペラ、バウ・スラスター、シリング舵を採用し、これと連動する自動操艦装置の装備などで運用性の向上が図られている[4]

装備

要約
視点

本型においては、英サンダウン級で搭載された情報処理装置・機雷探知機・機雷処分具の3点セットが導入されている。また係維掃海具としては63MSCと同じものが搭載されたが、感応掃海具の自艇搭載は断念された。

C4ISTAR

本型の対機雷戦システムの大きな特徴が、情報処理装置を中核としたシステム構築がなされている点である。その機種としては、英GECマルコーニ社製情報処理装置(NAUTIS-M; ししじま、くろしまは改良型のNAUTIS-M-1)が採用された。これはサンダウン級用に開発されたもので、機雷戦艦艇で求められる対衝撃性(30G)、非磁性などの要求を達成している。3台のコンソールからなっており、レーダーや機雷探知機などと連接されて、航海情報管理、また対機雷戦計画・評価支援機能を備えている[13]

機雷探知機としては、可変深度式のTYPE-2093ソナーが搭載された。これは上部構造物前端の甲板室内に設置されており[8]、ウィンチによって300メートルの深度まで吊下することができる。機雷探知用としては80キロヘルツ、類別用としては350キロヘルツの周波数を使用しており、最大1,200メートルという長距離探知と0.3度の分解能を両立している。最大使用速力は12ノットである[14]

機雷掃討

機雷処分具としては、初の海外機として、フランス製のPAP-104 Mk.5をライセンス生産により搭載している。従来海自掃海艇が搭載してきた国産機が電源ケーブルによる外部給電を使用していたのに対し、電池を内蔵して、ケーブルは光ファイバーのみとすることで、活動可能時間が短縮したかわりに優れた機動性を備えている。英サンダウン級以外にも、仏・蘭・白共同開発のトリパルタイト型機雷掃討艇でも採用された傑作機であり、13か国の海軍に400機以上が納入されている[15][16]

機雷掃海

原型となった英サンダウン級は機雷掃海能力を持たない掃討専用艇であったが、日本近海には機雷掃討に不適な泥質の海底も多いことから、本型では機雷掃海能力も付与されている。

係維掃海具
係維掃海具については、コスト低減のため掃海艇7号型(MSB)と同じ浅海域用のものに変更することも検討されたものの[5]、結局、63MSCと同じく53式普通掃海具(O型)改6が搭載された[7]。これは28MSC以来の53式普通掃海具(O型)をもとに、対艇掃海によって中深度域の掃海に対応したものである。オロペサ型係維掃海具(O型掃海具)は、展開器と呼ばれる水中凧によって掃海索を左右数百メートルに展開するとともに沈降器によって一定深度に沈下させて曳航し、機雷の係維索を引っ掛けて、掃海索の数カ所に装備した切断器によってこれを切断していくものである[17]
感応掃海具
原計画では63MSCと同等の掃海具の搭載が予定されていたが、平成6年度予算編成での査定落ちを受けたコスト低減策の一環として、オーストラリアADI社製のDYAD(ダイヤード)を必要に応じて搭載する方式とされた[5]。これは永久磁石式の磁気掃海具と水流を利用した音響発生装置(パイプノイズメーカ, PNM)による、設備電力を必要としない複合掃海具で、艦船の磁気分布を模倣できる。ただし感応掃海具を使用する際には母艦などからDYADを受け取る必要があるため、運用上の制約が大きく、続くひらしま型(16MSC)では自艇搭載が設計上の要求事項とされることになった[18][19]

また掃海具のほか、浮流機雷や、係維掃海により浮揚した機雷処分のため、JM61-M 20mm機関砲を艇首甲板に1基備える。

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同型艦

さらに見る 計画年度, 艦番号 ...
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ギャラリー

脚注

参考文献

外部リンク

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