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アヌスヴァーラ
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アヌスヴァーラまたはアヌスワーラ(anusvāra)とは、インドの伝統的な音声学の用語で、後続の子音と同器官的な鼻音、またはそのような鼻音を表す記号のことをいう。正確な音価は言語により、文字体系により異なる。
アヌスヴァーラは辞書の順序では母音の直後、ヴィサルガの前に置かれる。
パーリ語ではニッガヒータ(niggahīta)と呼ばれる。
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音声
サンスクリットにおいて、アヌスヴァーラが音節末の鼻音的な音であることはまちがいないが、本来どのような音であったかは必ずしも明かではない。伝統的には閉鎖を作らずに発する鼻音のことであるというが[1][2]、鼻母音とは区別されているようでもある[3]。
アヌスヴァーラとは別にアヌナーシカ(anunāsika)という語もあり、これは鼻音または鼻母音を意味する。どのような場合にアヌスヴァーラが現れ、どのような場合にアヌナーシカが現れるかは伝統的な説はかならずしも一致しない[1]。
辻直四郎の説明によると、鼻音に後続する子音が閉鎖音・破擦音・鼻音の場合、ṅ, ñ, ṇ, n, m を使用するのが普通であるが、それらの代用としてアヌスヴァーラの記号が書かれることもある(代用アヌスヴァーラ)。摩擦音(ś, ṣ, s, h)の前では、代用でない真正のアヌスヴァーラが現れる[2]。ほかに連音の結果、語末にもアヌスヴァーラが出現することがある。アヌナーシカはサンスクリットでは連音の結果(n+l, m+y,l,v) としてのみ出現する[4]。しかし、アレンによると古典サンスクリットでは y や v の前でもアヌスヴァーラが出現し、アヌナーシカは l の前に限られる[5]。
サンスクリットでは音節末の鼻音または鼻母音の音韻的対立は存在しないので、単純に後続の子音と同器官的な鼻音と考えてもさしつかえない。
ヒンディー語などでは同器官的鼻音(アヌスヴァーラ)と鼻母音(アヌナーシカ)の両方が常用され、音韻的にも区別がある。
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デーヴァナーガリー
デーヴァナーガリーでは、अं のように文字の上にビンドゥ(bindu、点)を置くことでアヌスヴァーラがあることを示す。ビンドゥはアヌナーシカを表すこともあるが、この場合は単なるビンドゥのかわりにチャンドラビンドゥ (candrabindu、三日月点)を使うことが多い。しかし文字の上に母音記号がついている場合には鼻母音も単なるビンドゥで表されるため、両者は区別できない。ヒンディー語のように鼻音と鼻母音を音韻的に区別する場合、そのどちらであるか単語ごとに暗記しなければならない。
歴史的にはビンドゥとチャンドラビンドゥの間には区別がなく、徐々に区別されるようになってきたものである[6]。
伝統的な悉曇学ではビンドゥを「空点」ないし「菩提点」と呼ぶ。これに三日月(仰月点ないし荘厳点)を加えても音は変わらない。詳細は梵字を参照。
翻字
ラテン文字でアヌスヴァーラを翻字するにはいくつかの異なる方式がある。
他の方式も上記のいずれかであることが多い。京都・ハーバード方式では M と書く。
他の文字体系
デーヴァナーガリー以外でも、さまざまなインド系文字にアヌスヴァーラの記号が存在するが、その形状や使われ方はかならずしも同じではない。
- グジャラーティー文字では同器官的鼻音・鼻母音の両方を同じ記号で表す[7]。
- グルムキー文字では前に来る母音によって2種類の記号を使いわける[8]。
- ベンガル文字[9]、オリヤー文字[10]ではアヌナーシカを表すのに三日月点を使用し、アヌスヴァーラとは区別される。
- カンナダ文字・テルグ文字ではアヌスヴァーラは記号でなく独立した文字のように書かれる[11]。マラヤーラム文字でも独立した文字として書かれ、音節末の -m を表す[12]。シンハラ文字でも独立した文字として書かれ、[ŋ] を表す[13]。
- チベット文字ではインドからの借用語にのみ現れる。
- ビルマ文字では音節末の -m を表す場合に使われることがある(ただしビルマ語は綴りと発音が大きく異なっており、実際には鼻母音として発音される)。
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Unicode
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出典
参考文献
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