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オーストラリアワニ

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オーストラリアワニ
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オーストラリアワニ(濠太剌利鰐、Crocodylus johnstoni)はクロコダイル属に分類されるワニの一種。別名ジョンストンワニゴウシュウワニ[6]。危険を感じると走って(ギャロップで)逃げ去ることで有名である[7]オーストラリア北部に分布し、はるかに大型のイリエワニとは異なり、性質はおとなしいが、防衛のために噛みつくことがある。

概要 オーストラリアワニ, 保全状況評価 ...
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分類

1873年にジェラード・クレフト英語版によって記載され[8]、本種の標本を送ったロバート・アーサー・ジョンストン英語版への献名として命名した[5][9]。しかしクレフトは綴りを誤り、本種の学名は長年 C. johnsoni とされていた。その後名前の正しい綴りが判明し、種小名が更新されたが、未だに両方の学名が存在している。国際動物命名規約によれば、johnstoni が正式な学名である[4][10][11]

進化と系統

クロコダイル属はおそらくアフリカを起源とし、東南アジアアメリカ大陸へと広がったが[12]オーストラリアアジアを起源とする説もある[13]。クロコダイル属は近縁種である絶滅したマダガスカルのヴォアイ英語版から、約2500万年前の漸新世中新世の境界付近で分岐した[12]

以下は2018年の年代測定に基づく系統樹である。形態学的、分子学的、地層学的データが同時に使用されている[14]。また2021年のヴォアイのDNAを使用したゲノム研究も参考とした[12]

クロコダイル亜科英語版

ヴォアイ英語版

クロコダイル属

Crocodylus anthropophagus

Crocodylus thorbjarnarsoni

Crocodylus palaeindicus

Crocodylus Tirari Desert†

アジア‑オーストラリア系統

オーストラリアワニ

ニューギニアワニ

フィリピンワニ

イリエワニ

シャムワニ

ヌマワニ

アフリカ‑新大陸系統

Crocodylus checchiai

Crocodylus falconensis

ニシアフリカワニ

ナイルワニ

新大陸系統

グアテマラワニ

キューバワニ

オリノコワニ

アメリカワニ

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形態

Thumb
頭部

比較的小型のクロコダイルで、雄は全長2.3-3.0mに達し、アーガイル湖英語版キャサリン渓谷などの地域では、全長4mの個体も確認されている[6]。雌は全長2.1mに達する[4]。地域によっては小型で、雄は全長170cm、雌は全長70cmで性成熟する場合もあり、餌などが原因と考えられている[6]。雄の体重は通常70kg前後で、大型個体は100kgを超える。雌の体重は40kg程度である[15]。口吻は細長く基部の2-3倍で、コブや皮膚の隆起はない。歯は比較的小さい。体色は明るい茶色で、体と尾には暗い縞模様が入る。縞模様は首の付近で途切れる。個体によっては鼻先にもはっきりとした縞模様や斑点がある。幼体は黄褐色で、黒褐色の斑点が散らばる[6]。体の鱗は比較的大きく、背中の鱗板は幅広く密集している。後頭部に並ぶ鱗(後頭鱗板)、頚部に並ぶ鱗(頸鱗板)は共に4枚ずつある。脇腹と脚の外側は、丸みを帯びた小石のような鱗に覆われている[4]。前肢には水掻きがないが、後肢では水掻きが発達している。

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分布と生息地

西オーストラリア州北東部、クイーンズランド州北西部、ノーザンテリトリー北部に分布する。淡水湿地、三日月湖河川、湖沼に生息する[6]。イリエワニが生息しない場所でも見られ、カカドゥ国立公園の断崖や、キャサリン渓谷などの乾燥した岩の多い場所からも知られている。海水への耐性もあり[16]、低地の三日月湖など、汽水域に進出してイリエワニと共存することもあるが、基本的には避けている[6]

2013年5月、通常の分布域から数百キロ南にあるバーズビル英語版付近の河川で目撃された。洪水により南に流されたか、捨てられた可能性があるという[17]タウンズビルを流れるロス川では、数十年にわたって本種の群れが繰り返し目撃されている[18]。洪水によって多くの個体がロス川流域に流されたという見解が有力である。実際に2019年1月、タウンズビル水害に襲われた際には、冠水に乗じてオーストラリアワニが市街地へ侵入する可能性が危惧された[19]

生態と行動

Thumb
日光浴

移動

ワニの中では俊敏で、体を持ち上げて短距離であれば飛び跳ねるようにして走る。その速度は最高で時速16km程度にもなり、丸太のような障害物も軽々と飛び越えてしまう[7]。こうしたギャロップ走法には、身体の柔軟性が関係しているようで、バウンド時の力を利用して歩幅が大きくなったりしている[20]。これはオコジョチーターのような敏捷な哺乳類の一部と共通しており、今は絶滅した陸棲ワニ類(セベクスなど)の身体能力を探る手がかりでもある。

食性と天敵

食性は動物食で、主に魚類、その他にも小型哺乳類昆虫類甲殻類等を捕食する[6]。成長の度合いによって食餌は変化し、全長60cm以下の幼体の頃は無脊椎動物カエルなどを積極的に狙う一方で、大きくなるとそれらよりも魚、カメヘビなどに狙いを切り替える。鳥類や中-大型哺乳類のような大型動物は、イリエワニなどによって消費されてしまうため、小型動物を主食にしている[21]。また身体が大きくなるにつれて、陸上よりも水辺の動物を餌にする割合が高くなる[22]。同様の変化は他のワニ類(例えば南米の種)でも知られている[23]。浅瀬で待ち伏せを行い、魚や昆虫が近距離に来るのを待ち、横向きに攻撃して捕える。ワラビーや水鳥などの大型の獲物は、イリエワニと同様に忍び寄って捕らえることもある[6]

天敵としてはイリエワニや卵を捕食するオオトカゲが挙げられる。またオリーブニシキヘビ英語版によって丸呑みにされた例も報告されている[24][25]

繁殖と成長

巣は水辺に掘られた深さ12-20cmほどの穴で、雌は7-9月に4-20個の卵を産む。基本的に母親は巣を守るが、巣を離れて孵化の時期に戻る場合もある[6]。11-12月に孵化し、孵化の1-5日前には卵の中の幼体が鳴き始める。これにより兄弟の孵化を誘発し、親は鳴き声を聞いて巣を掘り起こす。またこの際に母親以外の雌が孵化を手伝うこともある。幼体が巣から出てくると、親は口で幼体を拾い上げ、水辺に運ぶ。また親は口の中で卵を噛んだり動かしたりして孵化を助けることもある[26]。10-15年で性成熟し、野生化での寿命は50年以上と推定される[6]

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人間との関係

人間を獲物として襲うことはないが、噛みつくことはある。おそらく人間を獲物と誤認したものと思われる[27][28]。本種に触れたり、近づきすぎたりしたときに、防御のために攻撃された事例もある[29]。本種による死亡事故は発生していない[29]。一緒に泳いでいるときに噛まれた事例、研究中に噛まれた事例が数件報告されている。カカドゥ国立公園のバラマンディ渓谷でも襲撃が記録され、被害者の男性は水中でワニの真上を通り過ぎており、泳いで逃げたが軽傷を負った。一般的に本種と一緒に泳ぐことは、怒らせない限り安全であると考えられている[30]。アーガイル湖でも襲撃が発生している[31]。1970年代までは革製品に利用されていた[2]

脅威と保全

最近までオーストラリア北部の特にイリエワニがいない乾燥した内陸部や標高の高い地域などでは一般的であった。しかし外来種オオヒキガエルを誤って捕食し、耐性がないために死亡する事例が多く発生している[32][33]ダーウィンなどの地域では、住血吸虫科Griphobilharzia amoena寄生されている[34]

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脚注

参考文献

関連項目

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